第十一話 その目的とは…?

 

「ル・・・ルルー!カー君!!」
ボクは急いで二人の下に駆け寄った。
カー君には怪我はないようなんだけど問題はルルーのほう・・・。
あちこちに深い切り痕があった。
「ヒーリング!!」
何回かヒーリングを唱えて、どうにかルルーは意識を取り戻した。
「どうしたの!?誰にこんな・・・!」
ルルーはうつむいた。明らかになにか隠しているみたい。
「アルル・・・。落ち着いて聞いて頂戴。これはみんな・・・シェゾがやっちゃったの・・・。どうやらDアルルの魔力を吸い取っちゃったみたいですごい威力を発揮していたわ。私ではとても太刀打ちできないぐらいに・・・。」
「な・・・!?」
手遅れだったの?じゃあ・・・じゃあDアルルはまさか消えた・・・。
「Dアルルはこの先にある洞窟の水晶の中に閉じ込められてるみたい。サタン様がこの異常な魔力を感じ取って、今はたったお一人で行っているみたいで・・・。カーバンクルは水晶をこわすために必要なものだと言っていたわ。」
ボクの気持ちを察したのかそうルルーは付け加えた。
「で・・・シェゾは?」
おそるおそる聞くと、どうやらボクを探しているみたい。
それまでにDアルルを助けないといけないんだけど、ルルーをこのままにしとけば・・・。
「でも・・・。」
「私は大丈夫よ。おかげで助かったんだもの。一人で帰れるわ。だからお願い。シェゾを止めてあげなさい。Dアルルを助けてあげなさい。」
そういってカー君を渡してくれた。
「・・・わかった。ボク、行ってくる!でも、無茶はしないようにね!」
「それはこっちのセリフよ。」
そう別れを告げて、ボクはカー君と一緒に洞窟を求めて歩き出した。

 

第十二話 焦りの理由


――Sside
――ピチョン・・・

水滴が落ちる音が静かに響いた。辺りは薄暗くひやりとした湿っぽい空気が流れる。ごつごつとした鍾乳石が突き出ているが、その場所だけはまるで削り取られたかのように開けていて、何かの遺跡だった物のようにも見える。どこかに川が有るらしく水の流れる音が聞こえるが、それも今の彼に取っては耳障りな物なのだろう・・・。

「・・・・・・」

そんな中彼は一人佇んでいた。一人の少女を閉じ込めた水晶に背を向けて。

―――・・・何をそんなに焦っている・・・?
「・・・・・・」
―――・・・君が欲しいのは本当に魔力・・・?
「・・・・・・」
―――・・・本当は気付いているんじゃない・・・?
「・・・黙れ」
―――・・・君は可愛そうな人・・・過去の幻影に囚われて本当の自分を認める事が出来ない・・・君はまるで・・・
「黙れ!!」

叫び剣を地面に突き刺し肩で息をする。乱暴に扱われたにも関わらず、闇の剣は珍しく静かだった。
彼は先ほど一人の少女を黙らせる為に魔力を奪い水晶に封じ込めた。魔力を奪うのは容易い物だった。
彼女は抵抗一つしなかった。唯一心に彼を見つめていた。その瞳に宿るのは・・・哀れみ・・・。
その瞳の色が彼を捉えて離さず、彼女の吐いた言葉を幾度も脳裏に響かせる。・・・まるで呪詛のように・・・。

――――ガシャン!
「!?」

不意に後方で鋭い音が鳴る。はっとして振り返るとそこには自分と同じ姿をした一人の男・・・。
片手に自身の「欠片」で作り上げた剣を。もう片腕には先ほどまで水晶に封じられていた筈の少女が抱かかえられていた。
その側には粉々に砕かれた水晶の破片が散らばっている。

「・・・何故貴様が此処に居る・・・ドッペルゲンガー・・・」
「・・・別に・・・探し物の気配を辿って空間転移したら此処にたどり着いただけだ・・・」
「・・・探し物・・・だと・・・?」
「・・・・・・」

驚いたような・・・そして忌々しげなシェゾの言葉にドッペルゲンガー・・・Dシェゾは振り返り片手に抱かかえられたアルルのドッペルゲンガーを見下ろす。
Dアルルは少し呻いた後ゆっくりと瞳を開き焦点の定まらない瞳で彼を見つめる。

「・・・D・・・シェゾ・・・?」
「・・・おはようさん・・・ったく・・・何故抵抗しなかった?・・・お前の能力ならそれぐらい簡単だろうが・・・」
「・・・・・・」

何も言わないDアルル。大方、アルルを案じての事だろうと思い呆れたように溜息を吐く。

「・・・お前はオリジナルに甘過ぎるんだよ・・・まぁ良い・・・後で魔力分けてやるから・・・それまで寝てろ・・・」
「・・・ん・・・有難う・・・ごめんね・・・」

そう言ってDアルルは瞳を閉じ、やがて小さな寝息をたて始めた。Dシェゾはそれを見送り額に優しく口付けを落とすと驚いたような顔で佇むシェゾを冷ややかな深紅の瞳で見据えた。

「・・・意外か・・・?俺達が知り合いだったのが・・・」
「・・・・・・」
「・・・探し物は見つかったから良しとして・・・随分大胆な行為に出た物だな・・・何をそんなに焦っている・・・?」
「・・・・・・っ!?」

Dアルルと同じ事を問われシェゾは少し苛立ちを感じながらも答える事はできない。

「・・・最近になって・・・微かだが闇の気配が強くなっている・・・それと何か関係が有るのか・・・?」
「・・・・・・」
「・・・ルーンロード・・・」
「!!?」

Dシェゾの口からその名が紡がれた瞬間、シェゾの肩がぴくりと震える。それを見たDシェゾは「・・・やはりな」と言う様に冷ややかに笑う。
シェゾはそんな彼を睨み付けるが、Dシェゾは動じず言葉を続ける。

「・・・しつこいヤツだな・・・今度は完全に肉体を手に入れるつもりらしい・・・まぁ・・・俺にもヤツの居場所は把握できんがな・・・だが・・・お前のイライラはそれだけではなかろう・・・?」
「・・・・・・」
「・・・ふん・・・図星か・・・?まぁそれもお前がこいつを殺さなかった事で証明済みか・・・もっともこいつに危害を加えていたら俺がお前をぶっ殺しているところだがな・・・」

尚もなにも言おうとしないシェゾを呆れたように見据えあざ笑う様に言葉を紡ぐ。

「・・・過去の幻影ばかりに縛られ・・・前に進む事が出来んか・・・お前はルーンロードと同類か・・・?」
「!?・・・気様・・・っ!貴様に何が解る・・・!?」
「・・・知らんな・・・俺はお前とは違う・・・俺は既に過去を断ち切っている・・・こいつを見つけてからな・・・」

Dシェゾは未だ彼の腕の中で寝息を立てているDアルルを見下ろす。
シェゾは怒りの篭った瞳で彼を見つめ、地面に突き刺さったままの剣を引き抜いた。

「・・・俺はこいつが戻って来ればそれでいい・・・後は興味ない・・・が・・・お前がその気なら受けてたつぜ・・・?」

剣を抜き構えるシェゾに溜息を吐き冷ややかに見据えながら、DシェゾはDアルルをその場に下ろし、同じように自らの分身である剣を構えた。


―――L&Wside
風が吹く。夕暮れの日差しを受け金色の髪は赤味をおび、彼女を幻想的に見せる。少女―ウィッチは額に流れる汗を服の袖で拭い空を振り仰ぐ。
見ると太陽は既に山の向こうへ姿を眩まそうとしていた。それを見て薬草を摘んでいた手を止める。

「あら、もうこんな時間ですの?」
「夜は危ないから・・・今日はこのくらいにしておこうか」

近くで同じように薬草を摘んでいた黄金の鎧に身を包んだ少年…ラグナスは苦笑しながらそう言う。ウィッチは少し不満げにだがラグナスの言葉に応じ立ち上がる。

「本当はもっと欲しいくらいなんですけれど・・・」
「仕方ないよ、最近魔物が強くなってるって聴くし・・・」
「それにしても今日は折角お仕事の依頼が無い日ですのに・・・」
「いや、いいさ。どうせ暇だったしね」

不安げに言うウィッチに微笑み立ち上がりながらラグナスは言う。それを聞いたウィッチは安堵したように微笑んだ。

――――ドォォォン!!!
「きゃぁ!?」
「ウィッチ!?」

不意に大地が揺れる。バランスを崩したウィッチを慌ててラグナスが受け止める。足を踏み締めなんとか横転は免れた。

「だ、大丈夫かい!?」
「え、えぇ・・・で、でも・・・今のは一体・・・」
「・・・解らない・・・でも・・・とてつもない魔力の波動を感じたよ・・・」
「ラグナスさんも・・・ですの・・・?何だか・・・二つの巨大な魔力がぶつかったような・・・」
「・・・・・・こっちだ!」

少し考えた後、はっとした様にラグナスは駆け出す。何が何だか解らないままウィッチもそれに続いた。

 

第十三話 見つけた!…って、あれ?


ハァハァ・・・パシャパシャ
ボクの、息と、水しぶきの音がどうくつじゅうに響き渡る。
早くしないとドッペルが・・・
「・・・意外か・・・?俺達が知り合いだったのが・・・」
「・・・・・・」
「・・・何をそんなに焦っている・・・?」
「・・・・・・っ!?
誰かが話してる。誰か…いるのかな。
「・・・最近になって・・・微かだが闇の気配が強くなっている・・・それと何か関係が有るのか…?」
「・・・・・・」
「・・・ルーンロード・・・」
ルーンロード?またルーンロードが何か関係してるの?
って言うかDシェゾとDアルルって知り合い!?
一体どういうこと!?
ボクは頭の中でいろいろかんがえながら、2人にちかずいた。
「シェゾ!!やっと見つけたよ!」
ボクは二人の前に立った。
どうやら今、深刻な話をしていたみたい。
「何だ・・・アルルか。オレに魔力を吸われに来たか・・・?」
「そんな分けないでしょ!!よくもDアルルを・・・」
ぐいっ
何かがボクのえりを引っ張った。
「逃げるぞ!今のあいつに俺達じゃ勝てそうにもない・・・Dアルルが元気ならともかく・・・」
Dシェゾが、僕を連れて走った。
「ねぇ、キミ達って知り合いだったの?今回の事件もルーンロードがかかわってるの?」
ボクは走りながらさっきの疑問をDシェゾに聞いた。
「・・・Dアルルの事を聞いといて、お前に教えないのはずるいかもな。」
そういうとDシェゾは2人のこと、そして今回の事件のことをことこまかく教えてくれた・・・

 

第十四話 大事な物を。


良い所でのアルルの乱入に、二人のシェゾは刃を交える事にはならなかった。
しかし大事な物を。忘れていた。

洞窟の窪みに溜まった水溜りにひた、と足を付ける。その足元に置き去りにされたDアルルを見下ろしながら。
「”戻ってくれば良い”なんぞ抜かしておいて置いて行くか?普通…。」
もうこの世の何もかもが可笑しいと言うおこがましいまでの笑いを一頻りシェゾは洞窟内に木霊させた。
「アイツがコイツを想うのもその程度か。」
再び一度したように気絶したDアルルを抱える。深い水溜りの中に浸すと何かの呪文を唱え、詠唱が終る頃にはまた先程の様Dアルルの体はに水晶に閉じ込められていた。
「この水が特殊で助かった…。」
一人呟いてその水溜りを見下ろす。世では”聖水”とでも言われるのだろうか、魔力の篭った水であった。もちろん本当に”聖水”ならシェゾが扱えるかどうか疑問だが、ここに閉じ込められている限り術者の器に力が戻るペースも速いだろうし、何より命の危険は遠ざける事が出来る。
そして先ほどのドッペル二人のやりとりに、ふいにシェゾは呟いた。
「どいつもこいつもそんなに人様が大事なものか。俺はもう悪の華を咲かせる為に人に感情を寄せる必要など無い!」

カツ―ン…

作りの良い靴が音を鳴らした。
一頻り煽り立てたシェゾは不機嫌そうに音のした方へ振り向く。そこには流れるエメラルド色の長髪に赤く鋭い目つき、頭から立派に生える二本のツノを持った、魔界の貴公子が立っていた。
「カーバンクルちゃんがいないではないか。」
どうやら、一度砕けた水晶の破片を見て思った事らしい。





ラグナスに手を引かれるままウィッチは後に付いて行った。暫く走るとルルーとアルルがシェゾを探す為二手に分かれた所へ着く。
「どうしたんですの?一体何をそんなに焦って…。」
「……。」
暫くラグナスは無反応だった。
「…。ウィッチは戻って。」
「?」
必要最低限過ぎる用件を伝えられウィッチは首をかしげる。
「とにかく、戻るんだよ!!」
言うが早いがそのまま、ラグナスはアルルの進んだ道へ走って行ってしまった。走り出したあと後に、『予想以上に危険になりそうだったから。』と呟いて…。

 

第十五話 見落とした罠

「ねっねぇ!」
ボクは一つ、Dシェゾに対してまた一つの疑問が出来た。
「あのさ、Dアルルは!?Dアルルはどうなるの!?」
ボクが走りながら叫んでもDシェゾは焦りすら見せない。
「大丈夫だ。あいつにはさっき魔力を与えてきた。もうじきテレポートでココに来るだろう。」
「もし閉じ込められてたら!?」
「あいつの実力なら、あれを破ることくらい簡単さ。」
「でもどうしてそんな面倒なことしたの?」
「あいつを背負って走ってたらまず、奴に追いつかれるだろう。それにDアルルを閉じ込めさせることによって奴に魔力を使わせておくんだ。」
Dシェゾの先のことまで考えた戦略にボクは感心するほかなかった。
シュン
ボクたちの前で、何か風の渦みたいなのができて、そこから出来たのは
やあ。さっきは助けに来てくれてありがとう
『Dアルル!!』
ボクたちは声を合わせて、名前を読んだ。
無事で良かった。と思うのと同時に、安心したのかボクの目から大量の涙が出てきた。
「ほほんとにぶっ無事でよかった
本当に無事で良かった。っていおうとしたけど、もう言葉になっていない。ボクはそれからしばらく泣き続けていた。

「なっDアルルが消えた?」
まさかと思いつつ、Dシェゾが考えたであろう戦略が頭の中を横切っていく。
「まさかそんな手にだまされるとはなオレもバカにされたものだ。もう、本気を出させてもらうぜ!」
それだけ言うとシェゾは今いた場所を離れた

ココに、ボ〜っとしている金髪の少女、ウィッチが家の中でなにか考え事をしていた。
「やっぱり私もお手伝いしなくては!」
今まで世話になっておいて、何もしない。というのはどうも気が乗らない。
「でも今の私の力ではどうにもそうですわ!ウィッシュおばあさまに相談すれば何か解決法が
と思ったが、今はウィッシュも留守でいることを思い出した。
「いいえ、いつまでも人に頼ってちゃ進歩も何もないですわ!今回は一人で出来るこをとベストを尽くしますわ!!」
ウィッチはそういうと、魔法の本を取り出していろいろな薬を作り出した

「で、できましたわ・・・」
どのくらい時間が経過しただろう?ウィッチの手には淡い緑色をした液体が入ったフラスコが握られていた。
妖しく笑うウィッチ。その真意は・・・。
「ふふふ・・・これは新開発のドレインの薬・・・これでラグナスさんを長時間子供の姿に・・・って何を考えてるんですの!?私は!?」
どうやらいつもの癖でラグナスに悪戯を仕掛ける薬を作ってしまったようだ。
頑張れウィッチ。
「あぅ〜ん・・・またやり直しですわぁ・・・」

――――
一方
「・・・という訳なんだ・・・」
ボクはボクのドッペルゲンガー・・・つまりDアルルから全てを聞いた。
その間カー君は・・・横で踊ってた。
ここはまだ洞窟の中だけど、Dシェゾがボク達の周りに張ってくれた結界のお陰でモンスターに襲われる心配はないみたい。
話によると二人が出会ったのは結構前の事で、今は一緒に暮らしている仲らしい・・・つまり同棲?(うわぁ〜なんか恥ずかしい・・・////
でも、最近になってDシェゾが闇の気配が強くなってるのに気付いて、シェゾが関係してるんじゃないかって心配になったDアルルはシェゾを問い詰めに行ったらいきなり勝負を仕掛けられたって・・・。
やっぱりDアルルはボク達の事心配してくれるんだね。そう思っていたら、Dアルルが最初に冷たく当たっていたのは、ボクを殺そうとした後ろめたさからであって決してボクを嫌っていたからではないとDシェゾがこっそりと教えてくれた。
それを聞いてボクはとても嬉しかった。と同時にこの人はボクよりもDアルルの事を理解してるんだなぁって思って少しだけ羨ましかった。
でも・・・
「・・・所で君達・・・その格好は・・・なに?」
思わず訊いてしまった。ボクらは今、緊急会議(?)を開くために地べたに座ってるんだけど・・・ボクの目の前にはDシェゾが座っていて、その膝の上にはDアルルが・・・(しかもお姫様抱っこの要領で!)
「・・・あ?やらんぞ?(ぎゅっ)」
・・・いらん!(きっぱり)」
抱きしめられながら、Dアルルが苦笑して「こうしてないと嫌なんだって・・・」と教えてくれたけど・・・いくらなんでもやりすぎだよ〜〜!!
見てるこっちが恥ずかしい!(涙) だって、ボクとシェゾがそうしてるのを想像しちゃ・・・って何考えてるんだボクは!?
「・・・お前、何一人百面相してるんだ?怪しいぞ?」
混乱してるボクに向かって平然とDシェゾが言う。君の所為だ!君の!!
この時ボクの頭の中に「ばかっぷる」という単語が頭をよぎったのは内緒。
混乱がある程度冷め、落ち着いてきたボクは誰かが近づいてくる気配を察知した。それにボクよりも早く気付いたDシェゾがDアルルを解放し、いつでも剣を抜けるよう構えを取る。辺りに緊張が走る。かと思われたけど足元でカー君が寝てるから雰囲気台無しだった。カー君・・・(涙
「あれ?アルル?」
「ラグナス!?」
ボクを呼ぶ声が聞こえ、後ろを振り返るとそこにいたのはラグナスだった。ほっとして右手でDシェゾの行動を制し、ラグナスに向き直って・・・
絶句した。何故なら彼の黄金の鎧には・・・。
「・・・ラグナス?どうしたの?それ・・・」
「あ、これかい?いや〜単なる自然洞窟じゃなかったんだね、ここ。モンスターに夢中になってたら穴に落ちるわ、矢が飛んでくるわ、槍が降ってくるわで大変だったよ。はははは」
はははじゃないよ!何この爽やか少年は!?槍とか矢とかおもいっきし突き刺さってるし!ってかその槍の中にハニービーの槍も入ってるし!
君、本当に勇者!?
「・・・大丈夫か?こんなのが勇者で・・・いや、心配してはならないのだろうな・・・こういう場合・・・」
斜め後ろではDアルルが絶句し、横ではDシェゾがぶつぶつ言っている。・・・大丈夫、今ボクもそう思ってたところだから。
「そういえば、さっきこの近くで凄い魔力の波動を感じたんだけど・・・何か知らないかい?」
ラグナスの言葉にボクはきょとんとした。凄い魔力の波動?ボクにはそんなの感じられなかったよ?後ろを振り返るとDシェゾやDアルルも怪訝そうな顔をしている。
「・・・俺にも心当たりは無いな・・・戦いは邪魔されたしな・・・」
D
シェゾが考え込むように顎に手を当てる。ってか邪魔ってボクの事??(汗)
「そうか・・・闇の波動に似てたから君たちが喧嘩でもしてるのかと思ってたけど・・・って、そう言えば君と直接話すのは初めてだったよね?俺、ラグナスって言います。宜しく。」
「あ、あぁ・・・」
にっこり笑うラグナスに焦った様に答えるDシェゾ。そう言えばラグナスはシェゾとDシェゾが仲が悪いの知ってるんだっけ(ボクが前に話したから)
それにしてもラグナスってもしかして天然?だからウィッチに良い様に遊ばれてるんだね・・・(汗)
「・・・所でこれからどうする?」
今まで黙ってたDアルルが口を開く。そうだね、これからの事を決めなきゃ。まだ何が起こってるのかとかわからないし、お先真っ暗って感じだけど・・・。
「兎に角、今の状況を説明してくれないかい?俺には何が起こってるのかさっぱりだし・・・何故君たちがここにいるのかも出来れば話してほしい。俺が感じた魔力の事も気になるしね」
ラグナスが真剣な顔で言う(矢とか槍とか刺さったままだけど・・・(汗 )。その言葉にボクらはこくりと頷く。
こうしてラグナスと言う新たなメンバーを加えボクらは今までの経緯とこれからの事を話し合うべく会議を再開する事になった。
ん?でもそう言えば誰か忘れてるような気がするなぁ・・・(汗

 

第十六話 キミとは戦えない

 

ヒタヒタ何かの足音が聞こえる
モンスター?・・・・それとも・・・それは、姿を現しただが、誰一人として気づいていなかった結界が切れたことにも
「闇の剣よ切り裂け!」
 一瞬の静寂Dシェゾの腕から力が抜ける
「D・・・シェ・・ゾ?」
Dアルルの声にDシェゾは、応えるはずもない
「ハハハハハ」
シェゾの狂ったような笑い声アルルも黙っていられない
「シェゾ!なんてことするんだよ・・・」
「お、お前には、関係ない黙れ!」
Dシェゾの服が、バンダナと同じ深紅に染まっていく・・・それを泣きながら見つめることしかできないDアルル
「シェゾ!一体何考えてんだ!」
ラグナスが叫ぶ(いろんなのが刺さったまま)
そこにまた、別の声
「ラグナスさーん、アルルさーん」
(ウィッ・・・チ?)
「いましたわ。ラグナスさんこれを・・・」
と、その瞬間血まみれのDシェゾを目にし
「キャァァァァァァァ」
だが、やがて落ち着きを払い
「い、今すぐ傷薬を・・・でも材料が・・・」
「ウィッチ!材料だったらボクが集めてくるよ!」
Dアルルが名乗り出る
「ぼくも一緒に行くよ」
とラグナス
こうして、ウィッチ、Dアルル、ラグナスは、薬の材料を探しに行った
 そして、Dシェゾ、シェゾ、アルルが残った。
「ねぇシェゾ、なんでこんなことしたの?」
「そ、それは・・・」
「ねぇ応えてよ!」
問い詰めるいくらシェゾでも許せない
だって、実際に一人の人(?)が死んじゃいそうなんだよ?
「早く答えてよ何か理由があるんでしょ?」
「理由なぞ無い」
シェゾの一言
「じゃあ、じゃあもうボク、キミのこと許せないよ・・・もう・・・」
「ああ、戦うなら受けて立つぞ」
 アルル、崩れるように倒れる。もう戦うこともできない最後に一言だけつぶやいた
「キミとは、戦えないよ・・・」

 

十七話 すれ違う思い

 

・・・・・・しばらく沈黙が続く。
聞こえるのは風の音とDシェゾの息の音
「ガハッ
Dシェゾがイキナリ血を吐き出した。
「Dシェゾ!」
Dシェゾの顔がどんどん青くなっていく。
「ヒーリング」
ボクはDシェゾにヒーリングをかけてから、シェゾをにらんで、
「本当にボクは君と戦うことはできないんだでも、幾らなんでもひどすぎる!!キミだからといって許すわけには行かない!でもキミとは戦えない
「はんっなに甘いこと言ってるんだ。」
シェゾは言いながら、どこか寂しい目をしていた。
「どうしてこんなことしたの?どうして隠すの?僕にも言えないことなの?」
ボクは出てくる涙を抑えながら、シェゾに問いかける。でも、シェゾのこたえは
「とにかくっ貴様らには関係ないんだ!これ以上首を突っ込むな!」
シェゾの言葉は洞窟中に響き渡る。
そうボクにもいえないことなんだ。じゃあ、ボクも戦う!シェゾが本当のことを言ってくれるまで!」
そういうと、シェゾはふっと笑って剣を構えた
arle side―
「やっと見つけた!!いそぐよ!」
Dアルルは薬草を見つけるとすぐに走って行った。
「アルルとシェゾが戦う前に早く!」
「どうしてそんなに焦るんだ!?」
ラグナスが走りながらDアルルに問いかける。
「多分、シェゾはルーンロードに何か言われてアルルを守るためにボクを襲ったんだと思うだから、アルルがシェゾと戦う前に止めなきゃ
Dアルルはそう言って速度を上げて走っていった。
「まってください〜!」
その後をウィッチが追いかけていった
―Rules side―
はぁはぁ、
ルルーが少し回復し、よろよろと歩き出した。
「何かやな予感がするわ!とにかくサタン様に知らせなきゃ!」
ルルーはそういって少しずつ前へ進んでいった

 

第十八話 力を得た意味

 

わからないよ・・・。なにも・・・。
キミとは戦いたくないと思ってたのに、キミは戦おうとするんだね。

「アレイアード・スペシャル!!」
ボクはそれをギリギリのところでかわそうとしたはずなのに、魔力はおろか、スピードや体力までシェゾのほうが上回っていた。
やっぱしDアルルの魔力を取っちゃったから・・・!?
「ジュゲム!!」
え・・・?
なんとシェゾはボクの最大の魔法、ジュゲムもかわされてしまった。
「ふ・・・。お前の攻撃なんざ、こんなものか?」
冷ややかに笑うシェゾ。
「・・・やめろ・・・。アルル・・・。」
後ろでDシェゾの声がした。
まだちゃんと回復してないせいで声を出すのにも辛そうだった。
「死に底ないが口を出すな!!」
一喝するシェゾの声。
一瞬ビクッと一歩下がってしまった。
「いいや。やめないね・・・。お前こそどうなんだ・・・?心の弱さのせいでムーンロードにいいようにされてるんだろう?・・・自分の心は保っているようだが、それはいつまで持つかな?」
・・・え?どういうこと?
シェゾは図星のように下に視線を向けて、Dシェゾはさらに一言付け加えた。
「好きな者を守るために手に入れた力を逆に殺そうとしているなんて・・・なんとも憐れなものだな。」
その時、シェゾは空間転移をしてその場からいなくなってしまった。
「くっ・・・。」
ヒーリングをかけてもあまりよくなったわけじゃないからまた傷口が痛み出したみたいだった。
シェゾのことがどういうことなんか聞きたいけど、今はそれどころじゃないよね。
「早く来て・・・!」
心の中で何度もDアルル、ウィッチ、ラグナスを呼び続けた。

 

第十九話 心配

 

「ウィッチー」
 ボクは、思わず叫んだ・・・
ふと、Dシェゾの方に目を向けた。そこには、Dシェゾは居なかった・・・そこにあったのは真っ二つになった時空の水晶・・・

「アルルー」
Dアルルの声、ボクはそっと胸をなでおろす・・・
振り向いたとき、安堵感はパニックに変わった。ウィッチが傷だらけなのだ・・・
「ウィッチ・・・?」
ボクが傷だらけのウィッチを見つけると、ラグナスが話し始めた。
「薬草を探してたときに・・・ウィッチが崖から落っこちて・・・」
するとDアルルも口を開く
「Dシェゾと同じ薬があれば治せるんだろうけど・・・Dシェゾは?」
Dアルル真っ二つになった時空の水晶・・・いや・・・Dシェゾを見つけた
「ボクがボクがシェゾ倒してやる・・・」
Dアルルが駆け出したとき、ボクはシェゾの心配をしていた・・・

――――――――
好きな者を守るために手に入れた力を逆に殺そうとしているなんて
 そうだ・・・アルルを守ろうと思って・・・何やってんだよオレ・・・

 

第二十話 自分にしか出来ない事

 

「シェゾ・・・。」
隣には弱りきったウィッチが眠っていた。
結局Dシェゾに使うはずの薬草はウィッチに使ってしまい、ラグナスはもう一度同じ薬草を取りに行った。
ボクはただただウィッチを見てるだけしか出来なかった・・・。
シェゾはどこに行ったんだろう・・・?
Dアルルを止めないといけないけれど、ウィッチの方も心配だから今出来る事をした。
「止めなければならないのに・・・。なんで・・・?」
一体どうしてこんなことが起こったんだろう?
ルーンロードがシェゾを惑わしている事はわかった。
だけど、そう簡単に言いなりになるシェゾじゃないのになぜこんなことになったんだろう?
そんなことを・・・何度も何度も考えていた。
「う・・・・。アル・・ルさん?」
「ウィッチ!目を覚ましたのっ?」
ウィッチはゆっくりと身体を起こした。
すごく効く薬草のおかげで短時間に回復できたのは幸いだった。
「みなさんは?」
でも、まだ完全じゃないから弱弱しい声。
「・・・・・・。」
ボクは、どこから話していいのか一瞬迷ったけれど、今までのことをすべて話した。
ウィッチはそれを黙って聞いてくれた。「そうなんですか・・・。」     
それからウィッチは静かに目を閉じ、集中していた。
「嫌な予感がします。星が・・・ざわめいていますわ。」
「え・・・?」
「よくはわからないんですけど、危険が迫っているのは確かです。もしかしたら・・・、シェゾさんがかかわっているのかも知れませんわ。」
シェゾ・・・?
まさか、Dアルルが!?
「私のことはいいですから、早く行ってあげないと!」
背中をポンッと押される。
優しい笑みで・・・。
「シェゾさんは確かに惑わされてるのかもしれません。けれど、それを解き放つのはあなたしかいませんわ。私はラグナスさんが来たらすぐに行きますので・・・!」
ボクはこっくりとうなずいた。
「わかった。行ってくるよ!」
シェゾを救えるのはボクしかいないんだ・・・!
そしてボクは強い気配を追って洞窟の奥へと進んでいった・・・。

 

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