第一話 いつもの放課後…の筈が…


キーンコーンカーンコーン

「はぅぅ・・・やっと終わったよぉ〜・・・」

ここは魔導学校のとある教室。いましがた午後の授業が終わったこの教室では
大勢の生徒が帰り支度のためざわついている。
そんな中、さも「疲れました」と言うように机に突っ伏している少女が一人・・・
魔導師の卵、アルル・ナジャだ。

「全く・・・だらしないわねぇ〜」

ぐでぇ〜っと机に突っ伏したままのアルルを見下ろすようにルルーが言う。
彼女はすっかり帰り支度を済ませてしまったらしく、
未だに机から動こうとしないアルルを見て呆れているようだった。

「だってぇ〜・・・」
「だってじゃないわよ・・・全く・・・所で・・・どうだった?」

どうだった?と言うのはおそらく今日行われた抜き打ちテストの事だろう。
抜き打ちなのだから当然前もって予告がされてる訳は無い。
ルルーの表情からしてもあまり自信はないらしい。

「全然だめぇ〜・・・」
「あぁ…やっぱりね。でも、終わったんだからいいじゃないwこれでしばらくは安泰ねv」
「えぇ〜?でも抜き打ちだよ〜?またいつ有るか…」
「平気よ。一回終わってしまえばしばらくはやらないわよ」
「あはは・・・だといいなぁ・・・」

何の根拠も無しに言い放つルルーに半ば心強さを覚えながらアルルは苦笑する。
重い身体を持ち上げ、椅子に座ったまま、ん〜っと伸びをする。

「所であんた、これからどうするの?」
「う〜ん・・・図書館にでも寄って行こうかなぁ〜?」
「へぇ〜・・・」
「? なに??」

にやりと笑うルルーにアルルは問いかける。「別に何でもないわよ」とルルーは答えるが、
明らかに何でもない顔ではない。しかし、問い詰めた所で無駄なのは承知。
アルルはとりあえず気にしない事にした。

「ルルーはやっぱりこれからサタンの所?」
「と〜ぜんでしょうvあぁ〜サタン様v早く逢いたい・・・v」
「あ、やっぱりか・・・」

夢見心地に言うルルーに苦笑しながらアルルは言う。
「じゃぁ、行くわね」と、いてもたっても居られないと言う様子のルルーに
「また明日ね〜」っと別れの挨拶をする。
教室から出て行くルルーの後姿を見送りながら、椅子から立ち上がり帰り支度をしていると、
ふと異変に気付いた。

「あ、あれ??カー君何処行ったんだろう??」

 

第二話 図書館には意外な人が・・・!? 


すると、机の上にルルーの文字で書かれた手紙が置かれていた。
『カーバンクルをちょっと借りるわよ。サタン様とのキューピット役になってもらうんだから!! ルルー』
「・・・えぇ〜!?」
一拍遅れて驚いた。
教室に残っていて人もびっくり!
アルルは「ははは・・・」と苦笑いしながら教室を出て、図書館へと足をはこんんだ。

「それにしても、ルルーがカー君の面倒みてくれるなんてどういう風の吹き回しだろぉ。」
図書館にある本を適当に一冊選び、ふぅとため息をういた。
「ま、たまにはいいよね。カー君と一緒じゃあまともに本が読めないし。」
そう言って本に目をやった。
「なに独り言言ってんだ?」
「うわっ!」
ガッターン!!
急に後ろから声がしたので、アルルはびっくりして椅子から落ちてしまった。
「あたたたた・・・。」
後ろを振り返るとなんとあの変態魔導師・シェゾ・ウィグィィだった。
「ったく、何やってんだよ?」
「あ・・・ありがと。」       シェゾの手を借りてなんとか立ち上がり、アルルは状況を把握した。
「って、なんでシェゾがいるの〜??」

 

第三話 別に…教えてくれたっていいじゃないか! 


「・・・なんだ?オレがココにいてはダメな理由でもあるのか?」
シェゾの質問に、ボクは答えることができない。
「べ・・・別にいてダメってわけでもないけど・・・イキナリ出てくるから驚いただけだよ!」
ボクが一応、思ったことを口に出す。
「・・・そうだ。アルル・・・・・・やっぱりいいや。」
シェゾが、途中まで言って言葉を止める。
これはきっとボクに何か聞こうとした態度だ。
「なに?隠さなくってもいいじゃない。教えてよ。」
ボクが言うとシェゾは少しうっとおしそうに
「うるさい!お前には関係ないっ!」
といって少し奥のほうに言ってしまった。
シェゾの態度から言って、きっと何かを探しているんだろう。きっと結構前から。
何を探してるのかな?別に教えてくれたっていいじゃないか!


第四話 Why?


「なんなんだよ・・・」

ボクは教室の時と同じように机に突っ伏していた。
さっきからずっと同じ姿勢のままだ。いい加減腰の辺りが痛くなってくる。
でも、起き上がる気持ちにはなれないし、本の内容も頭に入って来ない。
まぁ、大して読みたい本って訳でもなかったけど・・・。
シェゾのさっきの態度・・・凄く気になる・・・。
何を探してるのさ?
関係無いってどう言うこと?
ボクって頼りにされてないの?
そんな事が頭の中をグルグル回る。

「・・・・・・なんなんだよ・・・」

もう一度呟くとなんだか妙に悲しくなってきた。

「何そんな所で寝てるんですの?ここは保健室じゃありませんわよ?」
「ほぇ??」

そんな声が聞こえて顔を上げると、机の向かい側には見慣れた金色…ウィッチだ。

「あら、起きていらしたんですわね」
「別に寝てないよ・・・」
「あら、その割りには元気がないですわ。元気だけがとりえの貴方が…」
「・・・・・・・・・」

ウィッチの悪態に反論する気力もない。
ウィッチはだめだこりゃとでも言うように方をすくめ溜息をついた。

「それより・・・シェゾさんを見かけませんでした?本が借りられませんわ」
「ほぇ??なんで??」

素っ頓狂に訊くボクに呆れたようにウィッチは言う。

「・・・アルルさん・・・校長先生の話聴いてませんでしたわね?」
「な、何が?」
「今月から図書館の管理人はシェゾさんに任せると朝礼で言っていたじゃありませんの・・・」
「え?あ・・・そうだっけ??」

頭の上をハテナがいっぱい飛んでるボクにウィッチが説明する。
そういえばそんな事を言っていたような気がしないでもないけど・・・。マスクド先生の話は良く解らないギャグばかりだからあまり聴いていなかったりする。
だから聞き逃したんだね。うん。
これで一つの疑問は解決したけど・・・もう一つ・・・シェゾが何を探してるのか・・・何故さがしているのかは解らなかった(まぁ当たり前か)。
ウィッチの説教を適当に流し、ボクはもやもやした気持ちのなか家路につく事になった・・・。

第五話 でもやっぱり・・・ 


家に帰る途中も、ずっとシェゾの態度が気になって仕方がない。
・・・何をいつから・・・。考えてても見つからないことは分かっていても、気になるものは気になるんだから仕方がない。
「・・・」
でもやっぱりウィッチが言ってたとうり、こんなボクはボクらしくないかも。
「・・・よしっ!」
ぺちぺちと頬をたたき、今の考えを追い払う。
こんなに考えてても分からないものは分からないんだし、いいや!
それにこんなのボクらしくないよね!
・・・あれ?そういえば何か忘れてる気が・・・
「カーくん!!」
しまった!ルルーに渡したまんまだった!
どうしよう!でももう学校にはいないかも・・・
でもルルーならひどいことはしなさそうだし・・・大丈夫だよね!?


第六話 そうしよう!


「こんなにボクの部屋って広かったっけ・・・?」
部屋に入ったらガランとした雰囲気。
まるでボクの部屋じゃないみたい。
「カー君がいないだけでこんなに違うなんてね。」
ごろんとベッドに寝転んだ。
「・・・・・・・・。」
なんかつまらないよぉ。
シェゾ、まだなにか探しモノしてるのかなぁ?あれでも結構最後までしないと気がすまないってタイプだし。
それにしてもシェゾが図書館を管理してるなんて本当意外。めんどくさいことは嫌いそうなのにな〜。
って、なんでこんなにシェゾのことばっかし頭の中に浮んでくるんだろう??
今日のシェゾなんか変だったし、それが気になってるのかなぁ?
「・・・よしっ!」
がばっと起き上がって外へでる支度をした。
もしかしたらまだシェゾ、いるかもしれない!
なんかお手伝いすることがあれば手伝えるし、なんかはっきりしなくてモヤモヤするもん。
ボクはまっすぐとさっきの図書館に向かった。

それが最悪な選択だったとは知る由もなかった・・・。


第七話 探し物じゃなかった…?


「・・・・・・・・・!?」
急いで図書館へ向かった。息を切らせて。早くこの変な気持ちを何とかしたくて。急いで向かったそこには見慣れたシェゾともう一つ女の人の影があった。

「・・・ああ、アルルか・・・。」
「き、キミはドッペル・・・。もう一人のボク!!」
意外も心外も良い所。シェゾと一緒に居たのはなんとボクのドッペルだった。それも普通なんて物じゃない、シェゾがボクのドッペルに剣を向けてる!

「し・・・ぞ・・・・・・」

”シェゾ!”と思い切り名前を呼びたかったけどいきなりの事でそれは出来なかった。
助けに行く、とかそう言う判断の前に、ボクのドッペルが危険な目に遭ってると思うと居ても経っても居られなくて・・・。
だってボクのドッペルとは、最近やっと仲良くなれたところなんだもん!初めは冷たくされてたけど最近やっとお話してくれるようになったのに!
でもなんで、そんなボクのドッペルにシェゾは剣を向けてるの?

「貴様の魔力を頂く為の第一段階だ・・・。」
ボクの胸中を察したかのようにシェゾは言った。
「お前のドッペルなら少なくともお前の魔力の質と似ているはずだからな。」
ずっと驚いて座り込んでいたボクのドッペルの喉元で、闇の剣が鈍く光っている。
「放課後で人が少ないと見たが、失敗だったか・・・。」
それだけ言うとシェゾは闇の剣を引いてボクのドッペルの腕を無理矢理に掴み、空間転移でどこかへ消えてしまった。

このままじゃ、ボクのドッペルが危ない!!

第八話 許さない・・・!

 

「・・・・・。」
自分がとてもなさけない。
なんですぐにでも飛び出してDアルルを助けなかったんだろう・・・って。
シェゾも・・・なにも関係ないDアルルを狙うなんて。
首をブンブンとふり、シェゾ達のいそうな場所を考えた。
人がいないところを求めていたのなら、まず森の中かも知れない。
先にそこへ行って探してみることにした。

「あら?アルル。どうしたの?そんな血相変えて・・・。」
森へ向かう途中、ルルーにあった。
「シ・・・シェゾが・・・。Dアルルを・・・。」
声に出して言うというのができなかった。
そして、いつの間にかボクの目には涙がたまっていた。
いつものルルーなら「なにメソメソやってるのよ。」とか言うけれど、今日は違った。
一枚のハンカチををわたしてくれて、
「なにがあったの?」
と優しく聞いてくれた。
「シェゾ・・・がDアルルを連れていかれちゃった・・・。ボクのコピーだから魔力も似ているだろうって・・・Dアルルの魔力を第一段階にするって・・・。」
そのときのルルーの顔は涙でかすれて見えなかったけど、怒っているというのが声で感じ取れた。
「シェゾの場所がわからないんだったら一緒に探しましょう!絶対に・・・シェゾの奴は許さないんですからね!!」
その迫力と気合に押されてしまってルルーにもシェゾ達をさがすのを手伝ってもらい、二手に分かれて探す事にした。

 

第九話 そういえば

 

ルルーと一緒にシェゾを探しているときに、ふと、後でルルーに聞こうと思っていたことを思い出した。
こんなときに聞くのもなんだけど・・・
「ねぇ・・・ルルー?」
「何よ?」
少しいつもの調子に戻ってるルルーが、ボクのほうを振り返りながら聞く。
「あのさ、今思い出したんだけど、ボクのカーくんは?」
「!!」
ボクが聞いた瞬間、ルルーの動きがぴたりと止まった。
そしてやがて・・・
「あっ!ちょっと用事を思い出した!!アルル、悪いけど後は一人でシェゾを探してくれない?ゴメンね!!」
微妙に笑いながら、ルルーは走って行っちゃった・・・顔が引きつってたけど。
・・・
!それよりどうしよう!!やっぱり一人で探すしかないよね・・・

あれからどれくらい時間がたったのだろう・・・
ルルーどころか、シェゾも見つからない。
一体何処にいるんだろう。早くしないとドッペルが・・・
「オレが何だって?」
凄い聞きなれた声がしたから、振り返ると、そこにはシェゾ−じゃなくて、シェゾのどっぺるだった。
「え・・・何が?」
「お前さ、きずいてないだろうケド、思ってること口に出してるぞ。」
Dシェゾの言葉でボクははっとする。
どうやらさっき考えてたことを知らぬ間に声に出していたみたい。
んで多分、Dシェゾはドッペルが自分のことだと思ってるみたい・・・
「んで、オレがどうしたんだ?言ってみろよ。出ないとオレはここを動かないぜ?」
Dシェゾに勘違いさせてしまったんだから仕方がない。全て話そう。ボクは、最初から、全部Dシェゾに話した

 

第十話 やっぱりドッペル?

 

途中大袈裟すぎる身振り手振りを加えて必死に話してるボクを見て、Dシェゾは何だかボクが今まで見た事が無い様な反応を見せていた。
とにかく必死に、Dシェゾにどうして欲しいって言う事も無くてとにかく必死に、必死に伝えたらDシェゾは、
「アイツにしては中々大胆な事に走った物だな…。
…と言う事は、”ドッペル”は俺ではない、と言う事か?」
尋ねてくる言葉は普通だったけど、その表情は何となく訝しげだった。何か腑に落ちない所でもあったのかな?
「そう、”ドッペル”はボクのドッペル、つまりDアルルの事。
そのDアルルがシェゾに連れてかれちゃったんだ!ボクの魔力と似てるから、暫くそれで我慢しようとか良く分かんない事考えてるのかも知れない!」
「・・・・・・・・・。

・・・ふぅん・・・。」


紅い瞳が冷たくボクを見据えて、”相変わらずくだらない事に巻き込まれているな”と嘲笑するような視線が、Dシェゾの反応だった。
そう、『反応』は。
・・・”ふぅん”って、それだけ!?
キミと同じドッペルが危険な目にあってるって言うのに、助けようとしないの!?

―・・・って、思わず言いそうになったのを何とか堪えた。
「大変な事になったものだな。
・・・だが、俺には関係無い。」
一言だけ言ってDシェゾはボクに背を向けゆっくり歩き出した。
またボクは何も出来ずに、去っていくDシェゾの後姿を見る事しか出来なかった。
ボクの元来た道でもなく、森に入って行く訳でもなく、少し逸れたわき道の方へその姿を眩ませて・・・。


Dシェゾが居なくなった後暫く立ち尽くして、ぼうっと森を見ていたら草むらが大きく揺れた!
急いで駆け寄るとそこにはなんとルルーが倒れていた。意識が無いみたい。すぐに声をかけて状態を確認すると、カー君を庇って倒れる様にしてた。

 

 

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