メッセージ

安穏とした暗闇の中に、ポツンと、銀(しろがね)の月が浮かんでいた。

―――――――否、それは月ではなかった。それは輝く大鎌の刃だった。

その鎌の持ち主は、整った顔を微妙にしかめながら、目を閉じていた。

―――――不意に、蒼い髪が風に吹かれて揺れた(・・・)。

鎌の持ち主が、さらに顔をしかめ、ゆっくりと瞳を開いた。

目覚めた鎌男は、暗闇に溶け込む黒いローブを立ち上がりやすいようにはらい、ゆっくりと立ち上がった。

「…………………ここは『止まりし(死)者達の始まり』。安穏なる永遠の『終わり』の世界だ。汝が何者かは、大体予想がついている」

その男が闇にそう言い放ってから、どれほどの時間がたっただろうか。

それでも男は、絶対の確信を持って、どこが何処だか判らない闇の、ただ一点を見つめていた。

「…………………………………………………………………………………………」

―――――――――――すう、っと、見つめていた一点の闇から、黄金の光が漏れ出した。

「…………………………………………………………………………………………」

そのまま光は強くなり、その光を放つものを、ゆっくりと出現させた。

それは巨大で、どこか違和感の残る、黄金の蝶だった――――――――

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「ようこそ旅のお方がた！リアの村へよくぞお越しいただき、まことにありがとうございます！！」

なんだかよくわからないまま、この「リアの村」を訪れたラグナスとキノとエルメスは、ほろ酔い気分の村長に快く迎えられた。

よく考えたら、世間はクリスマスだ。当然村はお祭り騒ぎで、少し日が傾き始めたというのに、村はどこもかしこも明るかった。

もともと村と呼ぶには大きすぎ、町と呼ぶには小さい所だ。都市ほどではないが、活気はそこそこある。

「キノ、こういう所で買った物は、元の世界で高く売れるんじゃない？」

「そうだね、エルメス。でも、ボクはこの世界のお金をもっていないから、買いたくとも買えないよ」

「だったら、この世界にきた記念になにか買ってあげよう。今日はクリスマスだしね」

そんなとりとめのないことを話しながら、二人（と、一台）は、村の中心の広場に来ていた。

「よぉよぉお姉ちゃんよぉー！何処に目ぇ付けてんだよぉー！」

見ると、チャイナ服を着た少女が、数名の男達に絡まれていた。

「あいつら、最近この辺りに出てきた山賊どもだよ。かわいそうに、あの少女は身ぐるみはがされて、どこぞにでも売られてしまうだろう…………」

近くにいたおばあさんが、聞いてもいないのに教えてくれる。

キノは他人事なので、ただ傍観していたが、こういう事態を放ってはおけないラグナスは、その集団に近づいていった。

少女がそう、ぼそっと言い放った瞬間、胸倉を掴んでいた男を、自分の後ろに放(・)り(・)投(・)げ(・)た(・)。

辺りの人全員が呆ける中、少女は一人冷めた目で、投げ飛ばした男を見ていた。

他の山賊の一人が剣を抜こうと柄に手をかけ、もう一人が魔法を使うために杖を構えようとしたその瞬間、少女はすでに相手を制していた。

少女は背中に背負っていた巨大な剣のさらしを解いて、剣を抜こうとした男の首筋に突きつけた。剣を持つ手とは反対の左手は、すでに発動準備を終えて、淡く赤い魔法光を放っており、魔導師らしき男に向けられていた。

少女は不機嫌そうにそう呟いて、剣にさらしを巻きなおしていた。

まず、服は真っ赤なチャイナ服だった。スリットなど一切なく、そちらかといえば、戦いやすいように仕立てあげられていた。両肩に赤いショルダーガードがついている。

そして、髪もまた、紅一色だった。それこそ炎のような色だ。

そして、もうひとつ。特筆すべきかどうかは困るが、特徴がある。

「ん？ああ、あんたらね、『異界よりの尋ね人』ってのは」

ラグナスが話しかけるよりもはやく、少女がラグナスに話しかけた。

「そう。『紅の待ち人』にして名づけられし『炎』。アタイをあらわすならば、最も正しかる名は『フレア』だ。『紅蓮のフレア』。これがアタイの名だ」

その少女は、その姿に似合わないほどの威厳を感じさせながら、己の真実の名を述べた。

王者の風格―――いや、それをも超える気配が、その少女から放たれていた。

「ま、話は明日にして、今日はもう宿とるぞ。逆らったらあんたらの願いは却下」

有無を言わさずどころか、何も言う暇もなく、そう決定させた。

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次の日。キノは夜明けとともに起きて、朝の日課をいつものようにした。

ラグナスも遅れて起きてきたが、それでも充分はやかった。

普通の人並に起きてきたのはフレアで、起きるなりかなりの量のアルコールを摂取した。ラグナスたちにも勧めたが、もちろん断られた。

余談だが、ラグナスは宿をとる時、初めてキノが女性であることをしった。

「あのなぁ………朝からずぅぅっっと追跡してんのはもうバレてんだから、とっとと姿だしてくんねーか？」

「あ、いや明らかに動揺されても困るから。後ろの二人も気がついてるし」

しばらくの沈黙の後、道の向こうから十数人の男たちが、一行目掛けて歩いてきた。

ラグナスたちの目の前で止まったその集団のうち、男たちの先頭にいた大男が口をひらいた。

「だいたいあんな人ごみの中でぶつかるなっていうほうが無理だってーの。まあ、たしかにボーっとしてたけど」

「そんなこたぁ、どうでもいい。それより、子分が世話になったお礼に、ちょっとしたプレゼントをやろうと思ったんだよ………地獄行きの片道切符をなぁ！！」

フレアはやれやれと呟き、自ら男たちの集団の中に入ると、その集団の中心で火柱を起こした。当然炎は飛び移り、男たちのほぼ全員に火がつく。

そこから逃げ出そうとした男は、真っ先にラグナスに殴り飛ばされ、気絶した。気絶したとたん、炎は消えうせるので、ラグナスはその後も気にせず男たちを気絶させた。

キノも、すぐさまハンド・パースエイダー（※パースエイダーは銃器。ここでは拳銃のこと）を抜き、足目掛けて構わず撃った。パースエイダーを知らない男たちは、突然の足の痛みになす術もなく倒れていく。もちろん倒れると同時に火は消えた。

ここで初めて背負っていた剣を手に取ったフレアが、不敵な笑みを浮かべる。

勝負は一瞬だった。金棒を難なくかわしたフレアは、そのまま相手の脳天を叩いた。

ゴン！と、大きな音はしたが、剣の刃では叩いていないので、大男は気絶するだけにとどまった。

山賊一味は全滅した。が、フレアは何を思ったのか、剣のさらしを解き、再び構えた。

戸惑うラグナスたちを尻目に、フレアは横の林を剣でなぎ払った。

そして林の中から、フレアの一撃をうけた「何か」が飛び出した。しかしそれはフレアの斬撃によって打ち出されたらしく、3、4ｍほど前方へと投げ出され、地面に叩きつけられた。

のっそりと身をおこしたそ(・)れ(・)は、ラグナスが今まで見たこともない生物だった。

体は獅子のようだが獅子よりも大きく、顔は人のもので、しかし牙はやはり獣のものだった。そして、尾にはさそりまんのものよりも大きい蠍の尾がついていた。

「この世界に存在しないはずの生物、『幻獣』マンティコアだ。気をつけろ。やつの体は猛毒だ。牙にも爪にも尾にも毒がある」

「その話は後だ。それよりキノちゃん、あんたは今のうちに逃げときな。こいつ相手じゃ下手にパースエイダーは使わんほうがいい」

キノは一瞬だけフレアのほうを見たあと、すぐさまエルメスにまたがって、今来た道を戻った。

それを見たマンティコアがすぐさまキノに飛び掛ろうとしたが、フレアは巨大な剣でそれを止めた。

お久しぶりの投稿となりました。後書じゃなくてナカガキでぅす。

さて……本当は最後まで書いて投稿したかったのでぅすが、書いてたら本当に長くなっちゃいました。てへ♪

その他もろもろの理由で、ここまでの投稿となりました。

しかし、今おもえば、私がアルルたちと出会ったのは、まだまだ記憶も曖昧な年頃で、そんなゲームのキャラクターにここまで愛情を注いでしまうとはおもってもいませんでした。

それをこんな風に作品化するのも、夢にも思っていませんでした。

どうか、面白かったら笑ってください。

どうぞ、面白くなかったら笑ってやってください。