I×4
「それでさぁ〜、プラウダったら自分からそうなるように仕向けといてさぁ〜……」
森を分断するかのように敷かれた道を歩いていた。
少し自分の前を行く、少女のような炎の神―――この次元、そしてその外の世界すら超越したその少女の名はフレア。
「そんでもって、そうなった二人を密かに眺めるなんてまぁ悪趣味もいいとこだよなぁ〜……」
そんな彼女のグチを黙って聞かざるをえない状態にいるこの俺こそ、勇者と呼ばれている「ラグナス・ビシャシ」である。
まあ、偉そうに言っても仕方がないが。
「でさ、プラウダ曰く…………」
「?どうしたんですか、フレアさ―――」
がさ!
突然言葉を切らしたフレアさんを不振に思ったその瞬間、茂みから二つの影が飛び出した。
「きゃん!きゃううん!!」
「きゅーん!きゅーん!」
それは、まだ幼いスキュラだった。
「スキュラの子供か……違うな」
「何が、ですか?」
「きゃう、きゃうーん!!」
「きゅうう、きゅうぅん」
「…………おい、ラグナス」
「は、はい」
フレアさんからは、ただならぬ気配が放たれていた。
「ここから先、勝っても負けても地獄だぞ」
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「IIIII………」
ただひたすらIのみを連呼するフレーズを歌い終えたプラウダはゆっくりと空を仰いだ。
「I悼………出I………I憎………そして、Iは藍より出でて藍より蒼し………」
それが何を意味するか、それは誰にもわからない。
わかることはただ一つ、彼にとってその意味は無意に等しいことであるということ。
「……もはや汝に咎人の烙印はおさずにおこう、汝は汝をまっとうしたのだ。たとえ『神殺し』が、本来世界崩壊と己の魂の永劫地獄へ誘う究極の大罪だとしても……」
そして彼は、ゆっくりとその場―――アルル・ナジャの墓標―――から去った。
「それによって、本来神が殺すはずの幻獣が、世に溢れてしまってもな……」
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「どういうことですか…………フレアさん……!!」
「言っただろう、ここから先、勝っても負けても地獄だと」
二人の目の前には、異形としか言えない生物の死体があった。
二匹の子スキュラは、その死体にしがみついて泣いていた。
「なんで……なんでこれが…………この二匹の母親だってわかるんですか!?」
「アタイは人じゃねぇ。もちろん人ならざるものの声も聞こえる。そして分かったたんだ。ケルベロスやマンティコアとは別格の幻獣、「スキュラ」が、この世界のスキュラを浸蝕し始めているってことがな」
フレアはこう説明した。
いくつかの上級幻獣は、その世界で独自に進化した幻獣の子孫を無理矢理自分と同じ種族として取り込もうとするのだと。その結果、このようなことになってしまうと。
「自我は無い。幻獣の遺伝子が入り込んだ瞬間、己は破壊され、幻獣の僕となる」
「戻す……方法は……?」
「ない」
そうきっぱりと言った。
「だから言っただろう。ここから先は、地獄だと。勝っても負けても、な」
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「咎められし者が悪とは限らないのだ」
プラウダは言った。
「咎人であっても、失われれば哀しむ。その者にも出逢いがあろう。愛しさも憎しみも同じ所にある。藍から出藍が、藍よりも蒼いように、憎しみから生まれる愛もあるのでは無いのだろうか?」
だから彼は、自分以外を裁かない。
己こそ咎人だと信じているから。
「だから生きろ、我の魂を汚してでも構わん。それは汝の名であり、生き様なのだから」
その場に居ぬ者への問いかけほど、無意味なものは無い―――そう狂信しつつ、それをするのであった。
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『オーホッホッホッホッホッホッホッホッホッホッホッホ!!!』
十二本の足を持ち、五つの魔犬の顎を持ち、その顎の上に女性の上半身がくっついた怪物。
それが『幻獣』スキュラだった。
「アタイがスキをつくる。迷わず頭を砕け。いいな」
返事も聞かず、フレアさんは飛び出した。
かつては平和であっただろうスキュラの集落は、今や血の匂いでむせ返る戦場と化していた。
その血のほとんどは、奇形化したスキュラと、そのスキュラが殺した子スキュラのものである。
『オーホッホッホッホッホッホッホッホッホッホ!!』
「五月蝿いわ!三下ぁ!!」
『……だれが三下ですってぇ!この○○(←作者規制)!!』
「黙れこの○○○○!!」
自分の無力さが、身に染みた。
勇者と呼ばれながら、こんな時は酷く役立たずな自分がいた。
シェゾもこんな気持ちだったのだろうか?
守れないことは、守る決意を固めた者にとって、最も重い鎖。
―――だが、それでも!!―――
「ブレイズ!!」
フレアさんの放った蒼炎は、スキュラの下半身を消滅させた。
『…………な!!!』
「それでも俺は!!先に進む!進まなければならないんだぁぁぁぁ!!」
俺の剣から、究極の一撃が放たれた。
『やめろ…………わらわは……わらわは………』
ズゴォォォォォ!!
『死に………―――――』
ドン!!
「…………迷うな、臆するな。生きる心、進む誓いは、何より強き力となる」
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「ボロボロになっても、這い蹲ってでも、生き抜く美しさこそが、人の美徳なのだ……のう、×××××よ」
終
あ、どうも戯際フリです……ちがった、お久しぶりでぅす、朔月でぅす。
今回は時間も無く、以前から練っていた内容とは全く違ったものとなりました。
本来は、プラウダ、ラグナス&フレア、シェゾ、ラストにアルル&クロノスと、それぞれのその後をちょこちょこっと触れていく作品だったのでぅすが………ま、いいか。
ちなみにこの題名は、本当にただひたすらIを連呼するフレーズのある曲があって、それ聞いてて思いつきました。
では、そろそろ次の作品に取り掛かるので。
ではでは。
次の作品?そりゃもちろん、ヒが三つでヒ・ミ・ツ♪