求め続ける 永遠の光
叶わぬ願いは 闇の中
たった一つの思いをのせて……
月の大通り 3
やがて光が目の開けられるほどになったとき、メルとオーラリーは月の大通りにいました。
辺りは、闇と、銀の光。道があるかのように、銀の光は真っ直ぐと続いていました。まるで雪が積もっているような……。
「オーラリー!見て、見て!月があんなに近い!!」
メルは、大はしゃぎで月を指さし、飛び跳ねました。アメジストの髪が闇に揺れて、軽やかに踊りました。
オーラリーはメルの指さした方向を見ました。
「あぁ、本当に近いね…。ここは、綺麗なところだね。」
月は銀褐色。ただ闇に浮いて。手を伸ばせばさわれそうなくらい、近く。
「ねぇ、オーラリー。何故、他の妖精がいないの?」
「あぁ、あのねメル。きっと違うところに飛んだんだよ。一緒に入った人以外、同じ所には絶対につかないの。私も最初来たとき、ビックリしたわ。私はお父さんと来たんだけど、誰も居ないって言うのが怖くなってすぐ帰ったわ……。」
遠い記憶を呼び覚まして。オーラリーの父がまだいた頃、オーラリーもメルと同じくらい小さくて。懐かしいと、オーラリーは目を細めて話しました。
「ふぅん……もったいないねぇ。こんなに綺麗なのに!」
両手を広げて、メルは笑いました。
月の光で背中の羽がキラキラ光って、まるで例えるならば天使のようで……。
オーラリーは、自分もあんな風に光っているのだろうかとおもうと、少し恥ずかしく
なりました。
「本当に……。なんでこんなに綺麗なのが目に入らなかったんだろうね…?」
月の大通りは静かで、とても落ち着けるような世界で。
月が煌々と光っているにもかかわらず、闇は暗黒の色を変えない。
それは世界のどの闇よりも美しいと、胸を張って言えるくらい美しくて……。
「ねぇ、オーラリー。メル、もっとあっちまで行きたいの!」
銀の道を指差し、にこにこと笑いかけるメルに、オーラリーは微笑んで頷いて。
「時間はまだまだたくさんあるから、今日はずっと此処にいよう。ここにいれる限りはね?」
「当たり前だよ!たった年に一度だけしか、ここにはこれないんだから!」
そう、月の大通りは一年のうち一回だけしか開かない。
闇と月の真の姿は一年に一回だけ。一回しか見られない。
「そうだね。ほら、メル行こう!」
オーラリーはメルに手をさしのべて、メルはオーラリーの手を自然と取って。
二人は銀の道を歩き始めました。月の大通りという、銀の道を。
例えそれが幻であっても 誰かの夢だとしても…
光り輝く銀の月 限りなく続く銀の道
それが今だけだとしても それが無くなるものだとしても
永遠の約束交し 生きいづる御霊は
月と闇を 引き離せはしない……。
オーラリーは道を歩きながら、昔、父が教えてくれた詩を思い出していました。
オーラリーの父は優しい人で、小さな泉を守っていたのです。
まさに妖精が現れるような、しだに囲まれた綺麗なところでした…
しばらく、二人は手を繋いで月の大通りを散歩していました。
もうすぐ夜が明けてくるのでしょうか、月の大通りの光は、少しずつ薄く淡いものへと変わっていきました。
「オーラリー、随分歩いたけれど、端っこまではいけないのかなぁ?メル、端っこ見てみたい!」
「そうだねぇ…私も端っこ見たことないの。メル、また来年、必ずここに来こようね?」
オーラリーはメルに優しくそういいました。メルは、オーラリーの隣で何か不満そうにしていました。
オーラリーにとって一年とはすぐのことだったのですが、メルのような若い精霊にとって、一年はとても長いもののだったのです。
「ねぇ、オーラリー。メル達、一体どうやって帰るの?」
「朝が来れば、必ず帰れるの。」
「絶対……?ここに一人残されたりなんてしないよね?」
「ただ、手を繋いでいれば絶対にちゃんと帰れるよ。妖精達は絶対にひとりでここには入っていかなかったでしょう?一人だと、帰り道が分からなくなるけど、誰かと一緒だったら、絶対に帰れるわ。」
そう、あの空間のゆがみにはいるとき、誰一人としてひとりでは入っていかなかった。
ひとりで帰ろうと思えば、帰ることもできるのでうが、幼いメルにはきっと無理なことでした。
オーラリーみたいに何度もきていれば、一人月の大通りから帰るのも、たやすいことだったの
かもしれませんが…。
それを知らないメルは、心底安心したように笑いながらオーラリーにいいました。
「そうなんだ……。じゃぁ安心だね……。」
幻想的なこの世界の中で微笑むメルは、本当に綺麗でした。
そうして二人は、その場に座って月を眺めだしました。
「ねぇ、もうすぐ夜が明けるんだね。もう、空があんなに白い……」
メルが、闇を見つめながら言いました。
いつの間にか、あんなに黒かった闇は少し白くなっていて、まるで闇までも月と同
じように銀になってしまったかのようで。
「銀世界だね……。月の大通り、なんて綺麗…。」
オーラリーはメルのアメジストの髪を指にからめながら言いました。
少しの間そうして、メルとオーラリーは月を眺めていたのですが…。
「………ねぇ………何か聞こえる…。」
急に、メルがオーラリーの手を振りほどいて、立ち上がりました。
「……?メル?何も聞こえないよ?」
オーラリーの耳には何も聞こえていませんでした。
だけど、メルの耳には悲しい旋律が聞こえていました。
メルは目の前の闇を目を見開いて見つめました。その旋律は闇から流れてくるようで…
誰も気付かぬ 月の裏……
「ほら!!聞こえる!!」
「何も聞こえないよ?ほら、メル手を離してちゃぁかえれなくなるよ!?」
必死にオーラリーが叫んでも、メルは聞いていません。
闇夜の星に 願いをかけた
「メル!メル!!そっちへいっちゃ、いけない!」
メルは、月の大通りを外れ、闇の中へと足を踏み入れました。
届かぬ思いは 闇の中
「メル、ダメッ!……キャア!!」
オーラリーは、横の道の闇に足を取られました。今まで触れても、何も起きなかったのに…。
その間にもメルは、どんどんと闇へと進んでいって……
叶わぬ願いは 月の陰
「メルッ!メルッ!戻ってきて!早く……!!」
オーラリーの叫びは、虚しく闇の響くだけ。
願いは届かぬ 月の道……
「メル…………」
オーラリーの目に最後に移ったのは、
月の光をあびたアメジスト……
………続く………
後書きっぽいもの。
月の大通り 三、書けましたぁあ~~!はぁ~、とりあえず一段落。(コラ
でも次は、頑張って四をかかなきゃぁ!
ってか、シェゾとアルル、出てねぇ~……!次は……出るかも。(ぇ
次回作は長くなりそうです~……(汗
それでは! ここまで読んで頂いて、ありがとうございました!
空