隠れて光る 昼の星

     夜空の向こうに 願いをかけた

 

     いつか会えると、願いを飛ばした……

 

  月の大通り 2

 

 

 光の中は、とても温かくて気持ちが良かった。

 目の前に彼の腕があって、急いで手を伸ばして掴んだ。

 

「アルル?」

 

「シェゾ、置いていっちゃうなんて酷いよ!!」

 

 置いていかれるほど嫌なものはないのに、そう思って、思いっきりシェゾを睨む。

シェゾは困ったなって顔して、少し笑ってる。

 

「悪かったな、ほら、いくぞ。」

 

 シェゾは、ボクと手を繋いで泉へとどんどん向かっていく。

重なった温もりが、ボクの手をつたって伝わってくる。心臓がドキドキと高鳴った。

 

 急にシェゾは立ち止まった。ビックリしてぶつかりそうになった。

人が、こんにドキドキしてるってのに。

 

「アルル、気をつけろ……。」

 

声を潜ませて彼がボクにいった。

 

「何?……どうしたの?」

 

「気をつけろといったんだ。何か……居る。」

 

 あたりを見ましたけど、何も居ない。何も見えない。気配もない。

だけど、何かが変だった。無音の中。さっきとは違う意味で心臓が高鳴った。

 

『……警戒は……無用です…。』

 

 急に声がした。声を言うより、この光から音が鳴ったと言った方が良いんだろうか。

光の中、優しい声が響く。

 

「だれだ?姿を見せろ……!」

 

シェゾが、何も居ない光の中で叫ぶ。相変わらず気配もない。

 

『…私は、泉の精霊……。オーラリーです…。貴方達知っているでしょう…?』

 

 泉の精霊オーラリー。人間を恐れ、泉の中でただひっそりと暮らす美しい精霊。

子供だって知ってるくらい、有名な精霊。

 

「……オーラリーか…。一体こんなことをして、なんのマネだ?」

 

 シェゾは、警戒を解いていないみたいだ。

 でもボクもシェゾのことは言えない。いきなり光の中で声がする。

姿も見えず、気配もない。こんな状態で、警戒するなと言う方が難しいだろう。

 

「オイコラ、こたえやがれ!!」

 

「…一体どうしたの?何故、ここはこんなに明るいの?」

 

 シェゾに、話をさせてちゃどれだけまったって話は進まない。

臆病な精霊だったら、今のシェゾをみたら逃げ出すだろう。

 

『ごめんなさい……今日は…月の大通りが開くのです……』

 

 姿の見えないオーラリーは、光の中で声を震わせている。

 

「月の、大通り……?」

 

 何か言おうとするシェゾを宥めながら、ボクは聞き返した。

 

『そう……今日は月の大通りが開くとき……それで、貴方達を呼んだのです。』

 

 何か言いたいことでもあるのだろう。光の中には声しか聞こえないけど、充分それが伝わってくる。

 

「一体、月の大通りとやらが開くことと、俺らと、何が関係するんだ?」

 

 落ち着きを取り戻したシェゾが問う。姿が見えないだけあって、ハッキリ言って、かなりはなしにくい。

相手がどの方向にいるかも全く分からないのだ。

 

『実は……』

 

オーラリーは、悲しい悲しい話をボク達に教えてくれた。

 

  

 

 昔々、アルルが生まれるよりもずっと昔。この世界には精霊が満ちあふれて

幸せに暮らしていたのです。

 妖精達は、夏の満月の日は祭りだと決めて毎年毎年楽しみにしていたそうです。

そのお祭りのなかでも、一番盛大なお祭りがあって、そのお祭りは夏の満月の一番綺麗な時におこなわれていました。そして、その日は月が一年のうちでもっとも輝き、一番美しい、それはそれは幻想的な世界だったのです。

 その日は月が本当に眩しく、妖精達は朝から晩まで踊って遊んでいました。

そして、その日の真夜中には空間のゆがみが出来て、そこの中はとても美しく、月の光をそのままあびたような道が繋がっていたのです。

 いくらさがしても、そのゆがみは一年のうちで一番月が美しいと言われる日にしか発生しなく、いつの日からか、その日のことを『月の大通りが開くとき』と、呼ばれていたのです。

 今では妖精達は姿を隠し、滅多に見られなくなったのですが…。それでも今でも祭りは続いているのです。

 

そして、事件が起こったのは、丁度今から七年前。月の大通りが開いた夜でした。

 

七年前、オーラリーと、その友達、森の精霊メルはお祭りの日、二人して遊びに出ていました。

 

「オーラリー、今年は絶対に月の大通りを散歩しようね!」

 

 メルは、妖精のなかでもまだまだ若く、人間で言うなら六歳か七歳くらいの、女の子でした。ふわふわとしたアメジスト色の髪をもつ、優しいいこでした。

 

「そうね、今年は一緒に月の大通りまで出られるかな……。」

 

 オーラリーは少し考え込みながら言いました。メルはまだ一度も月の大通りを歩いたことはなく、大人の妖精達から話を聞いているだけで、いつか自分も行きたいと毎年だだをこねていました。

 そんなメルにとって、オーラリーのこの一言はとても嬉しいものだったのです。

 

「わぁい!じゃぁ、絶対に絶対だよ!約束ね!」

 

 そういってメルはオーラリーの指に自分の指を絡めて、にっこりと微笑みました。

 

「そうね、絶対ね。」

 

 オーラリーもにこにこと笑いながらメルに言いました。

 

 そして、待ちに待った月の大通りが開く真夜中。

 いつもはしんと静まりかえっている森の中が、この日だけはとても賑わいます。

 

 闇に浮かんだ満月だけが、ただ一人地上を見下ろしていました。

 

 「オーラリー、早く早く!こっちのほうに出るって聞いたんだよ!」

 

 メルは、オーラリーの手を引いてかけ出していきました。

 そんなに急がなくたって、まだまだ時間はあるのに…そういってオーラリーは笑いました。

 

 わぁっ!と、歓声が上がりました。メルトオーラリーもその中で飛び跳ねてはしゃいでいました。

 今年も無事に月の大通りへと続く道が開いたのです。

妖精達は口々にわらいあいながら、月の大通りへと足を踏み入れました。

 

「オーラリー、早く早く!早く行こうよ!朝になるぎりぎりまで、絶対に中にいようね!」

 

「メル、そんなに急がなくたって、月の大通りは逃げないわ?それにあんたみたいなちっちゃいこが今いったら踏みつぶされちゃうわよ?」

 

「むぅ……メル、そこまでちっちゃくないもん!」

 

 そうはいっても、メルは他の妖精達の半分くらいの背しかありません。

必死に背伸びをして大きく見せようとしているメルは、とってもかわいいものでした。

 

「ほら、少しすいてきた。行こう、メル!」

 

 オーラリーは人が少なくなったのを見計らってメルの手を引いて、空間のゆがみへ飛

び込みました。

 

 思わず目を瞑ってしまうほどの光が二人を包み込みました。

 

………続く………

 

 

くだらない後書き〜

 

はぁ〜、やっと話がすすんできたよ!メルのセリフかくのが楽しかったw

次はメルとオーラリーの月の大通りでの出来事を書きます!

シェゾとアルルの出番は……ないかも。(ぅわ)

 と、とりあえず、時間があったらまた読んでやって下さい!おねがいします〜(ペコリ

 

                            空

 

BACK  MENU  NEXT