星の定め

 それは私が愛しのサタン様に、私手作りのカレーを食べていただきたくてサタン様のお城に足を運んだときのことだったわ。
 それは数日にわたって雨が降り続け、ようやく晴れた夜の出来事だったわ。

「サタン様〜、貴方のルルーが参りましたわ〜」
 その日私はいつもどうりに扉を開け、サタン様がサタン様のお城に何処にいても分かるように大きな声でサタン様を呼んだんだわ。
「お出かけなのかしら?」
 私は台所にカレーの入った鍋を置き、サタン様を探したわ、だって、もしいらしたら入れ違いになったら嫌じゃない。
 それに、もしサタン様が寝ていらっしゃったら、サタン様の寝顔も見れるものね。
 …最初に言っておくけど、サタン様の寝顔を見ていいのは私だけよ、ええっ、誰が何をいようともね。

 そして、私がサタン様を見つけたのはテラスでだったわ。そのときサタン様はお一人で紅茶を飲んでいらしたわ。
 私はすぐにサタン様にお声をかけようとしたけど、それはできなかったわ。
 なぜかって?そんなの決まっているじゃない、私がサタン様のお姿に見ほれてしまったからよ。
 後は、サタン様がどこか愁いを帯びた目をしていらっしゃったから、とても出もないけど、お声をかけることはできなかったわ。
「んっ、ルルーか、いつからそこにいたんだ?」
 サタン様が紅茶の入ったカップをテーブルに置かれながら私に話しかけてくださったわ。いつもの私ならば、喜び勇んでしまうのだけど、今の私は先ほどまでのサタン様のお姿が気になってとてもじゃないけど、そんな気にならなかったわ。
「サタン様、御苦しいことがあったのですか?」
「何故そう思う?」
「失礼ながら、先ほどサタン様が悩んでいるお姿をお見かけしましたので…」
 私がそういうと、サタン様は苦笑しながら「見られてしまったか」と御呟きになられたわ。
「微弱ながら、このルルーサタン様の」
「ルルー、少しの間だけ私の話を聞いてくれないか?」
 私が全てを言い終える前にサタン様が私の言葉をさえぎってお話になられたわ。もちろん私に敬愛するサタン様の経ってのお願いであれば喜んでお聞きしたわ。
 私が静かに頷くと、サタン様は静かに目を瞑ってそれをお話になられましたわ。
「星霜という言葉もあるとおり、星の輝きは永遠だと誰かが言っていたな」
 私はサタン様が何をおっしゃりたいのかその意図が分からなかったので、頭に疑問符を浮かべて静かにサタン様の一句一語全てを聞き逃すに、聞いたわ。
「しかし、星の輝きも永遠ではない。私が知っている限りでも星の輝きは昔と違って大きく変わってしまっている。新しき星の輝きがあったと思えば、昨日まであった星の輝きが消えてしまっているということもあった」
 サタン様の口調はまるで昔を懐かしんでおられるようなものだったわ。
「星の輝きというものはまっこと、人の命と似ているな」
 その一言でサタン様が何を考えておられるのかが少しだけ分かったわ、だけどサタン様が何を言いたいのは私には分からなかったわ。私にはそれがただ歯がゆかったわ…
「それでも…」
「んっ」
 考えるよりに先に私の口は言葉を言っていたわ。
「それでも、私のサタン様への愛は変わることはありませんわ」
「ルルー」
 私のその一言にサタン様はやや面食らった表情をされていたわ。
「星の輝きが永遠でないとしても、私のサタン様への思いは永遠に変わることはありませんわ」
「ルルー…」
「だから、私は…」
 私がそこまで言い終わると、サタン様は突然大きな声で笑い出したのだった。
「サタン様?」
 私にはサタン様が何で笑い出されたのかがまったく分からなかったわ。私が鳩が豆鉄砲食らった顔をしていると、サタン様はゆっくり椅子から立ち上がってこうおっしゃられたわ。
「ルルーよ、腹が減ったぞ、お前のカレーを食べさせてくれないか?」
 サタン様にこういわれては私が言うべきことは決まっているわ。
「はいっ、たっぷりとご賞味くださいサタン様」
 そして、私はサタン様の左腕に抱きついたわ。サタン様は少しだけ驚いた顔をしたけど、右手で私の頭をくしゃくしゃと撫でてくださったわ。そして、私はサタン様に私が作ったカレーを食べていただいたわ。
 その日は夜遅かったためにサタン様にお城に止めていただいたわ。サタン様優しいわ。
 そして、寝ようとしてふとカーテンを閉めようと窓を見ると、そこには大きな月が出ていたわ。
「サタン様、人の命が星と同じでも、私のこの思いはこの優しい月のように、変わることはありませんわ」
 そして、私はそのまま夢に落ちたわ。愛しのサタン様との夢を見るために。
 おやすみなさい…
story by 千里 
あとがき
どうも、小説を書くのは久しぶりの千里です。
最初ギャグで行こうかと思っていたら、何をどうやったのかまたこんな話になってしまいました。
それはともかく、皆さんなりにサタン様の言葉を解釈してみてください。
そして、ルルーの言葉と思いを受け止めてください。

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