お誘いとボクと君


「やっぱり夏と言ったら海だろう!」

『・・・・・・は?』


     ☆


夏の日差しが眩しく自分達を照りつける。
その日――シェゾ=ウィグィィは「今日はあちぃから魔導書でも読んでれば良いか」と不健全・・・いや、まぁ、ともかくそういう考えをしていたのだが。

「シェーゾッ!海行くよ、海っ!」

その考えは5分で終わりを告げた。
何故かドアが焦げているのには、もう彼は突っ込まない。もう慣れてるからだ。

そのドアを焦がした張本人―アルル=ナジャは、シェゾの居座るソファーの隣に、どさっ、と大きく座り込んで、「海、海、海だよ海いこー」とはやし立てる。

「・・・はぁ?」

手にしていた魔導書床に落として、アルルと向き合う。

「ちゃんと説明しろ」という彼なりの合図だ。

「だーから、海行くって言ったんじゃないか!さ、行こう!」

だが、アルルはこのサインに一度も従った事が無い。ニブいとはあえて言わないでおこう。


「いや、何でいきなりなんだよ?」


「サタンが海に行こう、って。ちなみにボクが「行こうよ」って提案したんじゃないからね!」

きっぱり。
擬音が付くほどの勢いで言うアルル。何気に真実を明かしてたりというのは内緒。

「・・・・・・あー、サタンがお前らの水着姿見たいのか。あぁそーかそーか。勝手に水着姿でも何でもさらして来い」

「うっわ、ひどーい!それって、彼氏の言う事じゃないよ!」

「いつから彼氏になった、いつから」

「うっ。・・・・・・まぁいいじゃないか!行こうよ〜サタンはきっと、ルルーが独り占めしてくれると思うからさぁ」

アルルが腕を組みながら、子供のように説得を開始する。
シェゾはその言葉に、まぁ確かに。と心の中で納得する。
―――あの筋肉女と牛魔王の事。きっと二人でイチャイチャしてるんだろう。甘ったるい奴等だからな。

「ねっ?」

そんな真意を悟ってか何なのか、にっこりとアルルは微笑む。
全てを見透かされてる、と思ってシェゾは真っ赤になってしまった。

「・・・・・・こうやって!」

と。
シェゾがアルルを、ソファーに引き倒す。

「ふぇぇっ!?」

何かヤバイフインキ!?と、アルルは一瞬脳裏に浮かべてしまう。が、

「ん。こうやって昼寝でもすれば、良いだろ」
「をい。ボクの空想を返せ、空想を」

あえて妄想とは言わないアルル。
だが、ドキドキしながら相手の次の行動を待った。
・・・・・・が。

「―――すぅ・・・」

「ね、寝たっ!?早っ!!」

思わず飛び起きてしまいそうになる―――だが。

がしっ。


その腕に、しっかりと、掴まれて。



アルルとシェゾは海へ行くのを欠席したらしい。


     ☆


余談。
そして、後日「海、どうだった?」とウィッチの店でアルルが問うと、
「え〜?・・・・・・何でもありませんわよっっ、本気でっっっ!!」
と、ウィッチは反抗したそうで。

そして道端で会ったルルーに聞くと、
「あーもう最高だったわぁ。キラキラと輝く水面の中、サタン様の泳ぐ姿が(中略)」
と、夢見心地だったそうで。

そしてディーアの家へ行ってディーアに聞くと、
「ノ、ノーコメント!ノープログレムッッッ!あんな事思い出させないで〜っ!!」
と、真っ赤に先程のウィッチの様に、赤くなったそうで。


まぁ、ともかく、オレがいえるのは。

「まだまだ夏は、始まったばかりだな・・・」

一体これから、どれだけアルルに付き合わされるのだろうか。という事だ。


     ☆


まだ夏は、始まったばかり。
白銀
2009年08月21日(金) 21時01分07秒 公開
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■作者からのメッセージ
お久しぶりですっ!白銀です。うぅ、夏の初まりとか嘘つくなっ!もう終わるぞっ!

最近どうしても小説が書けなくて、どうしようも無くて・・・
そんな時、このお題を見つけたんです。「これなら出来るかな・・・」と。
少し作風を変えて書いてみました。どうでしたか、楽しんでいただけたでしょうか?
楽しんでいただける事を望みます。
それでは。
また、私の空想にお付き合い願えたらと思います。

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