待ち合わせ。約束もしないけど、彼の家で待ち合わせ。

勝手に決めた。今日は一緒にいたいから。

 

 

special Christmas

 

 

 

 まだ空がくらい。空が遠く高くなってる。吐く息も白くなってる。

 今日は特別な日。年に一度だけの特別な特別な日。

 

「シェーゾッ☆」

 

 彼の家の洞窟前で、まだ朝日さえも昇ってない時間に、寒さを堪えて夜の中を走り抜けてきた。なんで、こんなに執着しちゃっのか。よりにもよってこんな厄介な人に。

 

「やっぱりね……。」

 

 暫く待っても誰も出てこなかった。こんな朝早くに、低血圧なキミが起きてこれるはずがないよね。全く、本当に手がかかるなぁ…。

 溜息を吐いた息もすぐに白くなる。寒すぎて、手の感覚なんかもう無くなっちゃった。

 寒さを堪えきれずに、結局家にはいるころにした。

 

「お邪魔しまーす…!」

 

 いつもみたいに、玄関を吹っ飛ばしても良かったんだけど、折角の特別の日。喧嘩なんかしたくないから、玄関を吹っ飛ばす前にドアノブに手を掛けてみた。

 ギイ…と、重い音がして、彼の匂いがボクを包み込んだ。

 

「って、アレ…?あいてる…?」

 

 てっきり閉まってると思ってた彼の家のドアは、おもいかけず開いていた。

 不必要なくらいの、結界。(ボクの前じゃ、無意味だけど。)それくらい、神経質な彼の家のドアがあいてるだなんて、考えも付かなかった。

 でも、ボクの考え方は、それならそれで良いか☆ということになって、結局いつも通り、遠慮もしないで普通に彼の家の中へと入っていった。

 

 

 

 

「……ねぇ、起きてるなら出てきてよ。」

 

「…めんどくせぇ…。」

 

 彼の部屋へと向かったら、平然とした様子で黒いソファに座って本を読んでた。

 …シェゾさん?何様のつもりかなぁ…?これはさすがのボクも怒るよ……?

 本当に、なんだか腹が立ってきたから一発ジュゲムでも当てようと思って、魔道力を集め出した。さぁ、吹っ飛んで貰おうかと思った瞬間。

 

 ドサッ……

 

「……なっ!?何するのさぁ!?」

 

「…煩い。じっとしてな。」

 

 折角、集めた魔力がどこかいっちゃった。

 手をあげた瞬間、その腕を引っ張られて、普通に彼の胸の上。オマケに彼の手はボクの背中に回っててしっかり抱きかかえられちゃってる。

 ……ハッキリ言って、ものすごく凄い状態になってるんじゃないかなぁ…。

 

「……シ、シェゾ…?」

 

 今の状態を想像してみたら、なんだかものすごく恥ずかしくなった。

 溜まらなくなって、彼の顔を見上げてみたけど、彼は本に夢中で僕の話なんて一つも聞いてない。

 こうなってしまったら、もう何を言っても無駄だと分かっているからボクは黙って流事にした。

 

 

「お前…。」

 

「へぁっ?何…?」

 

 一体いつまでこのままなのかなって思ってたら、急に声を掛けられた。

 だけど、彼の興味が本からボクに映ったのが少し嬉しかった。

 

「冷たすぎ。」

 

 ばさっと、上から毛布が降ってきた。……結局この体制を変えるってことは、頭にないんだね…。

 

「ん、そうかなぁ……?」

 

 折角、かけて貰ったことだし、ボクは大人しく毛布を自分と彼の身体の上に掛けた。

 実際、ボクはあんまり寒くなかったんだけど、その毛布の暖かさと、彼の身体の暖かさとで、自分の身体の力が徐々に抜けていくのがわかった。

 まぁ、確かにこの寒い中、朝っぱらからロクにマフラーも手袋もコートも着ずに走ってきたんだから、身体が冷え切ってるのは当然なんだけど。

 

「…全く、いくらお子様でもこの時間にその格好で、遠い俺の家まで来ればそうもなるか。」

 

「むぅ…いいじゃないかぁ!ねぇ、シェゾ〜…?」

 

「……なんだ?」

 

「今日ってね、特別な日なんだよ!」

 

 そう、特別なこんな日だから、一緒にいたかった。だから、わざわざキミの家まで来たんだ。それなのに。

 

「ふぅん……」

 

 その本人は、全く興味なしといった様子で本から目を離さない。

 彼がそっけないのは、前からのことだったけどさすがのボクでもショックだった。だって、16歳のオンナノコが、朝早く寒いのも我慢して自分の家まで来てくれたんだよ?もうチョット喜んでくれてもいいのに。

 

「……とりあえず、まずその冷え切った身体を何とかしろ。」

 

 ボクがずっと無言で睨んでやってたら、気付いたのか一瞬本から目をそらして、まるで子供を宥めるような眼でボクを見た。

 ずるいよ。そんな風に見られたらもう何も言えない。

 

 

「…ねぇ、シェゾー…。」

 

 返事を返して無いことなんて分かってたけど、ただボクは彼に喋り続けた。

 

「なんで、玄関の鍵あいてたの?なんで、結界這ってるのにボクは、はいれるのー?」

 

 ペラ…と、本のページをめくる音。

 

「…折角来てあげたのにさ、本ばっかり見てさ。ひどいよ。第一さ、ボクは湯たんぽじゃないんだよ。そんなに抱き締められたら潰れちゃうじゃんか。っていうか、キミみたいな人がこんな時間になんで起きてるの。」

 

 来た時、抱きかかえられてずっとそのまま。ボクの頭は彼の胸板にピッタリとくっつ

いてる。安定した彼の心臓の音。生きてる音。

 やっぱり、いつもよりずっと早起きしたからかな。眠気が、徐々に忍び寄るのがわかった。

 

「…シェゾぉ…、今日はねクリスマスイブなんだよ……。」

 

 一年に一回きりの、聖夜。そんな特別な日だったから、キミと一緒にいたかった。

だから、キミの家に来たんだよ。抱き締められて、寝に来た訳じゃないんだよ。

 

「……特別な日でしょ…?子供の夢が、叶う日なんだよー…?」

 

 そりを引いた、サンタさんが子供達にたくさんのプレゼントを持ってくるんだ。

 子供が夢を見れる、特別な日。 ボクだって、夢見たかったんだ。キミと、一緒にいれるって夢。だから、来たんだよ。

 

 ぱたんと、本が閉じる音。

 上を見れば、僅かに微笑む彼の顔。何度見ても綺麗。

 

「玄関の鍵は開いてたわけじゃない。お前の気配がしたから、あけただけだ。」

 

「そう…なの…?」

 

「結界が、お前をいれるのは俺がお前が入れるようにしたからだ。ついでに、俺はお前をよんだ覚えはないが…?」

 

 にやりと意地悪な笑み。ボクが膨れるのを見て、楽しそうに笑ってる蒼い目。

 

「じゃぁ、いれなきゃいいでしょー!」

 

 ポカポカと、胸を叩いたら更に笑われた。いつのまにか、完全に彼の目がこっちを向

いていて、それがすごく嬉しかった。

 

「…ついでに、確かに俺は朝に弱い。だけどな、今日は目が覚めた。」

 

 叩く手を止めた。…目が覚めた…?

 

「嘘だ!!!」

 

「なんでだよっ!!」

 

「だって、キミがこんな朝早く起きてるなんてあり得ないもん!!いんけんで、暗くて低血圧で変態のキミが!」

 

「余分なのが、思いっきり入ってると思うが…?そもそも、目が覚めたんだからしょうがねぇだろ。」

 

 彼が、微妙に怒ったのがわかったから、いそいで誤魔化した。     

 まだふてくされたような、そんな雰囲気が漂ってたけど。

 

 

「あ、」

 

 急に、シェゾは自分の服のポケットを探り出した。

 どうしたのか分からずに、首をかしげていると急に頭の後ろに手が回った。支えて貰

っていた手が急になくなって、ずり落ちそうになったから、彼の服の裾を掴んだ。

 

「ひゃっ……?」

 

 首に急に感じた冷たさ。いつの間にか、冷え切っていたボクの身体は彼の体温と、毛布

とで、温まっていた。

 何が、どうなったの変わらずに首に手を掛けたら、チャリと金属音がした。そっとそ

れを手に取ってみると、いかにも彼らしいシンプルなペンダント。

 

 銀の指輪に、蒼い宝石がはめ込まれたペンダントトップ。

 

「シェゾ……?」

 

「メリークリスマス、アルル。」

 

 一日早い、クリスマスのお祝いの言葉。

 微笑んだ彼の蒼い目も、さらりと流れる彼の銀髪も、少し低い声のトーンも、全てが嬉しかった。

 

「ありがとう…嬉しい……。」

 

 言葉にならないくらい、嬉しくて。ただ、顔が緩むのがわかった。

 身体はまだ少し冷えてたけど、心が凄くあったかくて。朝早く起きて、彼の家に来て良かったと心から思った。それから、こんな優しい彼を見れたことが、何よりも嬉しかった。

 

「…大事にする!!」

 

 自分から彼に抱きついて。シェゾは、そんなボクをしっかり抱き締めてくれた。

 瞳があった時、シェゾは微笑んでボクにそっとキスをした。こそぐったいような、小さなキス。

 ボクの首に掛かった銀の指輪のペンダント。彼らしいプレゼント。

 

 

 

「でもさ、シェゾー?」

 

 彼のかたに頭を預けて、窓の外を見た。もうすっかり、朝日が昇ってる。キラキラ輝く日の光が、線になって幾筋も窓から注いでる。

 

「なんだ…?」

 

 その光を眩しそうに見つめて、そっと目を閉じて答えたシェゾ。眠いのかなぁ…?

 

「クリスマスは、明日だよ…?まだ今日は、聖夜でしょぉ?」

 

「知ってる。」

 

 シェゾは驚きもせずに、大きな少し温かい手でボクの髪を撫でながら、ゆっくり答えた。

 

「じゃぁ、なんで今日プレゼントくれたの…?」

 

 本当なら明日もらうものだと思っていたのに。あ、でもボクは気にしないけどね。

 彼からのプレゼントは、なんでもない日に貰っても本当に嬉しいんだから。

 

「…明日は、どうせ何処かでかけるだろ…?そんで、その後はどうせあのどこぞロリコン変態魔王が、クリスマスパーティー開くだろ…?」

 

 指を折って、数えるシェゾの横顔を眺めながら、そこまで考えてたって事に少しビッ

クリした。

 

「そんで、今日は、どうせ聖夜だとか何とか言って、お前が家に来るだろうと思ってた…。

 …で。どうせ夜一緒にいようとか言うんだろうなと思ってな…。」

 

 ……なんだ、バレバレだったんだ。

 確かに、ボクは今日は特別な日だから一緒にいたかった。夜だって、折角だもん。キミ

と一緒に過ごしたかったんだ。でも、溜まらなくなって朝一番に家を飛び出した。

 

「で、まぁ起きてられるかは別問題として、どっちにしろ俺もお前も明日の朝は潰れるだろうしな…。普段、夜寝てるヤツが夜起きてたら、次の朝には殴っても起きないらしいし…。」

 

「ひっどーい!!ボク、ちゃんと起きるもん!」

 

「どうだかな……?」

 

 クスリと笑って言う彼。まさか、ここまで考えてるなんて思っても見なかった。

 

「それで、忙しくなってワタシそびれるのも、なんだしな。……第一、明日も今日も一緒にいるなら、いつわたしたって一緒じゃねぇか……?」

 

 …すこし、照れたような笑い顔。少しだけ、赤くなった彼。うすうす感じていたけど、

今日ハッキリとわかった。ボクは、シェゾが好き。

 

「シェゾ、ありがと…。大好きだよ!!」

 

 彼の腕に抱きついた。シェゾは、ビックリしたような、まるでお化けにあったみたい

な顔をして、それから少し優しく微笑んで。

 

「…俺もだ……。じゃなきゃ、家に入れたりしねぇよ…。」

 

 って、小声で言った。相当恥ずかしかったのかな。それから暫く、そっぽを向いてし

まったんだ。…相変わらず、なんだかカワイイ態度とるなぁ……。って、思った。同時に、

少し笑えた。

 

「メリークリスマス!!シェゾ!!」

 

 

 

 一日早いクリスマス。特別な特別な、クリスマス。

 来年も、きっときっと一緒に居れますように。そして、もっともっと彼に近づいてい

られますように!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 微笑みが溢れる部屋。主のあんな笑みなんて、あの少女しかひきだせないんであろう。我も安心した。

   それから、相変わらず、変な意地を張るもんだな、主は。あの少女に会いたくて、眠らずに待っていたというのに。まったく、厄介な人だ。あぁ、お前もそう思うか。

   …言ってはならんぞ…?主にばれたら、我が土に埋められてしまうから……。

   ……笑うな。つい最近埋められたところだ…まったく……。

…に、しても厄介だな。我も、お前も。いつか、いつでも逢えるといいんだが。

 …まぁ、いいか…。巡り逢えただけでも、良かったと思わねばな。

   というか、お前も良く来たな。こっそり隠れてきたんだろ…?アルルとか言う少女の目を誤魔化して。会いたかった…?………まぁ、我もそうだがな……

   なんだ、もう帰るのか…? まぁ、仕方ないか…。

…お前も、主人にばれないようにしろよ?ばれたら少々厄介だからな。まぁ、そう拗ねるな。どうせ、今晩あえる…。

    じゃぁ、また……夜、会おう……                  ――

 

 

 

 

 

 

 

 ――アトガキ

 

 ついに、念願の甘い小説がかけましたー!!!(甘いか? 

 シェアルで!!クリスマス小説ッス〜!!今回のアルルは、いつものアルルトはチョト違う〜♪シェゾも違う〜!(ォィ

 ……それよりも。一番最後、わかりましたか…?アルルトシェゾといったら、この二人も出したいなと思って出してしまいました!良かったんでしょうか……(ドキドキ

 それでは!!皆さんも、よいクリスマスを!!

 

                              空


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