今、何時だろうか

今、俺は生きてるんだろうか

今、心は何処へ?

 

今、キミは何をしてるんだろうか?

 

 

                                            生

 

 

 何日間もあいつに会わないなんて、自分でも驚くくらいだ。

探せばいいのに、探しに行けばいいのに。家の玄関のとってに触れるたびにやめた。

光の向こうにお前がいないのをしってるから、開けるのをやめた。

 あいつの居ない世界なんて、いらないからやめた……。

 

 そう、イラナイから……。

 

 

 人を殺して生きるのが俺の歴史だった。そうまでして、生きていたかった。

死にたくなかった。消えたくなかった。

 だけど、温かい『血』の感触が手を伝うたびに、悲しかった。

 忘れたくて、何度も何度も塗りつぶしたけど、忘れちゃいけないと何処かで心が。

 

 お前の生きてきた道は、それだから。

   だから、忘れることは許されない。

  お前をかたどるものは、『血』と、『命』。

   だから、生きろ。……シェゾ・ウィグィィ。闇の魔導使になりきれなかったもの…。

 

 

 闇の中に一人で。ただ一人で生きてきた。

命を延ばすために人を殺し、心の痛みから逃げたくて感情を忘れた。

 何十年前の出来事だった。

 

 

だけど、今は違う。

あいつが居るから。

だから、変わったはず。

 

 でも

 

 もう何日間もあって無い。嘘みたいだった。

認めたくない感情と、それでも叫ぶ心……『寂しい』と。

 アルル・ナジャ。お前が愛しいだなんて、想う俺はおかしいんだろうか?

 

 

 

 だから、あえて嬉しかったのは本当。

 帰ってきてくれて、心が安心したのも本当。

 

「久しぶりだね!!シェゾ!!」

 

「こんなに長い間会ってないなんて、初めてかも知れないね!!」

 

「……君に会えなくて、寂しかったよ……。

 逢いたかったよ、シェゾ……。」

 

 俺の家から離れたところ、森のはずれで、久々にあった。

 アルルは、ダンジョンにでも潜ってたんだろう。偉く酷い格好でいつもと同じように笑っていた。

川が近くにある所。探してたわけじゃない人に遭うのは、何処か温かかった。

 

 くだらない話。「逢えて良かった」と、アルルは泣いた。

嬉しくても泣けるんだと、幸せように言った。 純粋に、嬉しかった。

 今まで、会った人は俺を見て、嫌み嫌って。聞いたのは言われたくもない言葉。

 

 

 ……愛しい。なんて、とっくに忘れたと想ってた。

  そのまま、口に出したら

 

「キミだって、人間なんだよシェゾ?」

 

 遠く昔に言われた言葉。もう、誰もそんなこといってくれないって思ってた。

ずっとずっと、闇の魔導使と呼ばれた。『人間』だなんて、言葉、初めて言われた気がした。

 

だけどな、アルル。お前に言えないコトだって、沢山してきた……。

 

  ぽつりと口から出た言葉。具体例を挙げるのは、とても辛くて。

それを聞いたら、お前はどうする? いつもみたいに、笑ってくれるだろうか?

 俺の傍にいてくれるだろうか。  また、一人になるんじゃないか。

不安で、胸が締め付けられるなんてガラにもないのに。

 

「知ってるよ。」

 

「人を殺して、生きてきたんでしょう?」

 

 こんな想いをしてまで、隠した言葉。バッサリと、口に出して。

正直、焦った。 アルルの口から、「殺した」だなんて言葉到底出るとは思わなかったから。

 

「でも、それがキミの生きてきた道でしょ?」

 

 なんで、何もなかったかのように口に出せるのか。うっかり気を許したら、弱音ばかり。

もう二度と手放したくなかった。この少女を。

 抱き締めたら、抱きかえしてくれるこの優しい腕も、光の元で笑うこの眼も。

 

「こんな事、言っちゃダメって分かってるけど、」

 

「ボクは、キミがこうしてまで『生きて』くれたことが」

 

「嬉しい。」

 

 俺の罪を、『嬉しい』だなんて、何を言い出すんだと言いかけてやめた。

あまりにも、真っ直ぐな眼をしていたから。 今、それを言うのはいけないとわかったから。

 それよりも、嬉しかった。

俺のが生きていることを喜んでくれる人がいることが。

 俺の死を望む人なら、もう見たくないほど見てきた。俺が殺した奴は死に際に、俺の死を望んで死んでいった。決して、「死ぬ」だなんて考えもしなかったけれど。

 

 俺は、お前に会うために生きてきたのかもな……。

 

 本当に、そう思った。

 俺の意志が何処かでお前に会うことを望んで、人を殺していたんだとしたら。

もしも、そうなら。

 信じてもいいんだろか、俺が生きていることを。

 

 

「キミの過去ね、風化させてしまおうよ。」

 

「ねぇ、もう手放してあげなよ。」

 

「キミの罪は僕に任せて、」

 

「幸せになってよ。」

 

 俺のこの血に塗りつぶされた罪を、この道をアルルに任すだなんてそんなことはしたくなかった。そこまで、卑劣なことはしたくない。

 だけど。 もしも、それを、本当に『過去』へとしてしまえるなら。

 本当に、それが許されるとしたら……

 

 だけど、この血塗られた手でお前を抱くことができるのか……?

 

 してしまったことは、もう無かったことには出来ない。

こんな手じゃ、お前を抱くことすら許されないかも知れないのに。

 

 俺に、幸せになる権利なんて無い。

 

 手放すことなんて、できやしない。

そうする資格なんて、もう俺には残ってない。

 

「権利なんて、必要ないよ。」

 

「幸せになることに、権利なんてイラナイ。」

 

「キミは、充分に傷付いて、償ってきたじゃないか…。」

 

「だから、今だってこうやって傷付いてる。」

 

「そして、」

 

 

「キミに抱き締めて欲しいのはボクなんだから。」

 

 

 今までこうして生きて、この道を歩いてきた。

今、初めて生きていて良かったと、感じた気がした。

 

 お前が、生まれてきてくれて良かった。

  アルルに、逢えて良かった。

 

 ずっと、他人など関係ないと思っていたのに。

でも、今初めて感じた。人に会えた幸せ。探し求めた人が生まれてきてくれた喜び。

 アルルは、いとも簡単に言葉にしてくれた。

何故、こんな俺に優しくできるんだ。 

くだらない質問を繰り返すたびに、同じ笑顔で。いつも、言ってくれた。

 

「ボクは、キミが好き。」

 

 もう二度と与えて貰えないと想っていた愛と、笑顔。

 

 

「…ボクは、迷子だよ。」

 

「もうずっとずっと前から。」

 

「もう、探してくれる人なんて、居ないんだ。」

 

 初めて、弱音を聞いた訳じゃないのに。いま、極端にアルルの弱さを見たような気がした。

 

「父さんは、何処に行っちゃったのかな…?」

 

「もう、ボクの傍にいてくれる人はいないんだよ。」

 

 忘れかけてた。こいつの父親のこと。

いつも、太陽みたいに笑ってるから。アルルの明るさに消えてしまいかけてた。

 

 じゃぁ、俺が探してやる。

   捕まえて、もう二度と見失ったりなんてしないから。

 

 俺の心を見つけて、届けてくれたお前を、こんどは俺が探しに行って

もう二度と、離さないから。

 

 

だから、俺の傍にいてくれ。

 

 

 俺だって、もう一人はイヤだから。

だけど、分かってる。お前が俺より先に、消えてしまうこと。

 でもその日が来ても、もう何年経っても俺はお前を忘れないと誓おう。

お前のことを、ずっと想い続けると誓おう。

 

「シェゾ、」

 

「ありがとう。」

 

 小さな声で、呟いたアルルの顔に小さな笑みがこぼれた。つられて、微笑んだ。

  『幸せ』だと、思った。

 

 

 

 信じてみてもいいだろうか、『幸せ』になれると。

  信じてみようか、『今』を。

『生きて』みようか。

 

 

 

 アルルと、    一緒に……

 

 

 

                      end……?

 

 

 

 

アトガキという イイワケ。

 

お久しぶりッス。空でゴザイマスー。

この話は、シノサマと一緒にちゃっと&なりちゃしていて、思いつきました!!

ありがとう、シノー!!!

アルルの、言葉から、希望を見つけ出すせぞさんを……  表現できてたらいいな♪(殴

 

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