闇の中で
冷やりとした淀んだ空気は不快なほどに身体に纏わり付き、辺りを覆う漆黒の闇はときとし
て方向感覚を失わせる。魔法の光により時折ぼんやりと浮かび上がる岩肌は全てを捕らえ、閉
ざし逃がさぬ様に聳え立ち、時折訪れる爆音により全体を震わせる。それはこの洞窟全体がま
るで生きているかのような錯覚さえ感じさせた。
「ファイヤー!!」
前方に突き出された両の手から放たれた炎は勢い良く飛び立った後に標的を求めて彷徨い、
岩肌に激突し爆発音と供に四散する。一瞬辺りの景色が浮かび出されるがすぐさま元の闇へ
と溶け込み「敵」の姿は一向に見えぬままだった。
「!? ハズレっ!」
叫ぶのと同時に背後に気配を感じ右に飛び退ると今までアルルが踏み締めていた筈の地面
が弾け、黒い「何か」が風を纏い跳ね上がる。寸前で身を翻しそれをかわすも、杖を構えた
右腕に訪れた痛み、そして自分のわずか数センチを横切った獣の臭いと血の臭いが負傷を知
らせた。
「〜〜っ!?」
地に降り立った瞬間方膝をつき、右腕を押さえたまま闇の向こうに浮かび上がる深紅の
双眸を睨みつける。
『グルルルルル…』
聞こえてきた唸り声はまるで死神が奏でるレクイエムの様でアルルの身体を戦慄が走る。
震える身体を心の中で叱咤し奮い立たせ、震える足を踏み締めて杖を構え次の攻撃に備えた。
何故こんな事になってしまったのかと考えながら…。
アルルはその日いつもの様に遺跡探索をしていた。そこは街からも割りと近く、難易度もそ
こそこ高めで腕試しするなら絶好のスポットだった。夏休みという事もあり少し遠くの遺跡へ
行っても良かったのだが、カーバンクルのお陰で食費の方がピンチな為近くの遺跡で我慢する
事になったのである。ある程度探索を済ませて帰るつもりだったのだが、いざ探索を始めると
それに没頭してしまい気が付けば辺りは数メートル先さえ見るのも困難な闇。帰り道さえ見失
い闇の中をライトの光だけを頼りに彷徨っていた彼女達がたどり着いたのは、金銀財宝の間で
も妖精の国でもなく、今目の前で唸り声を上げている真っ黒な獣が巣食うこの場所だったとい
うわけだ。
「つまり…こうなっちゃったのもボクの不注意…なんだよね…」
今にも全身を鷲づかみにしてしまいそうな恐怖を払いのけるかのようにアルルは呟く。目の
前の魔物は彼女の出方を伺っているのかそれともどう料理してやろうかと思案しているのか動
く気配を見せない。それを好機と見た彼女は素早く呪文を唱える。
「アイスストーム!!」
彼女の掌から飛び出した魔力は氷の嵐となり魔物に迫る。だが魔物はそれを避けるどころか
地を蹴り魔法の嵐に体当たりをしたのだ。幾千もの氷の粒が魔物を捕らえる…筈だった。
「!!?」
―――パキィィン…!
しかし何かが割れるような澄んだ音と供に魔法は相手にその影響を及ぼすことなく四散して
しまったのである。呆気に取られる暇もなくそのまま突進してくる魔物を杖で受け止めたアル
ルの靴は数メートル地を滑り、魔物が後方に跳んで間合いを量るのと同時に停止する。
「よわったなぁ…これもダメか…」
「ぐぅ…」
杖を構えたままの格好でそう呟くアルルにとてとてと寄って来たカーバンクルが同意の様に
鳴く。さっきから彼女は魔法を繰り出しては同じような光景を何度も見てきたのだ。どうやら
この魔物には魔法障壁の能力が備わっているらしくアルルが唱えた魔法は全てその眼前で砕け
散ってしまった。様々な魔法を唱え試行錯誤していたのだがどの魔法も成果を上げることが出
来なかった。
「もう!どうすればいいのさぁ!」
「ぐっぐぅ〜!」
ここまでくるともうそう叫ばずには居られない。一体何時間この魔物と戦っているのか、い
い加減疲れもすればお腹も減るし第一此処まで暗いところに何時間も居れば気が狂いそうにな
ってくる。しかも相手にダメージを与えることも逃げることも出来ないという状況なのだから
尚更。カーバンクルが「落ち着いて!」と言うように鳴くのも聞かずアルルは魔法を紡ぎ出す。
「もう自棄だっ!るいぱんこっ!!」
アルルが唱えたのは効果不明の博打呪文。何が起こるか解らない分危険を伴なうので普段は
あまり使わないのだが、こういう時は別である。それに何が起こるか解らない分新たな発見が
あるかもしれない。出来ればこの魔物に効果絶大な「何か」を召喚できれば有り難いのだが…。
―――リィィィン…
魔力が一点に集中する時に出る高い音と供にそこから眩いばかりの光が溢れ出す。その間魔
物が再び攻撃を仕掛けてこようとしたのだが光に驚いたのか今迄と違う気配に警戒したのか、
寸前で後方に飛び退きこちらを伺っているようだった。光の中に影が現れ召喚の効果が現れた
事を知らせる。召喚の成功にほっと胸を撫で下ろすアルルだったが…。
「またてめぇかっ!?アルルっ!」
「げっ!シェゾ!?」
怒号と供に姿を現した青年を見てアルルは驚愕の声を漏らし明らかに嫌そうな顔をする。な
んと召喚されたのは紛れも無く変態魔導師シェゾ・ウィグィィだったのだ。
「何で君が来るのさ!?」
「それはこっちの科白だっ!何故俺を呼ぶ!?」
「んなこと知るわけ無いじゃないかっ!るいぱんこは何が起こるかわかならないの!」
「そんなもん使うんじゃねぇっ!毎回呼び出されるこっちの身にもなりやがれっ!昼飯食い損
ねただろ!3日ぶりだったんだぞ!?」
「君の貧乏食生活とかどうでも良いのっ!今ボクがピンチ……シェゾ!?」
「!!?」
アルルの叫びに振り返るとそこには黒い魔物が迫っていた。咄嗟にアルルを突き飛ばし自ら
も後方に跳んでそれを避ける。顔から数ミリ離れた所で風が走り、頬に鋭い痛みが走った。
魔物はさっき居た所の対極線上に降り立ち二人を振り返り警戒の唸り声を上げている。
「なんだ?お前戦闘中だったのかよ…」
「じゃなきゃ呼び出すわけないでしょ…君ってバカ?」
「てめぇな…」
「ぐっぐ〜っ!」
魔物に目を向け血が滲む頬を拭いながらいうシェゾに何とか転倒を免れたアルルが呆れたよ
うに言い放つ。なにやら言い合いを始めそうになった二人をカーバンクルが鳴き声で制し、そ
の声にシェゾは溜息を吐き再び魔物に向き直る。
「…ヘルハウンドか…」
「知ってるの?」
「まぁな…だが魔導書か何かで見たことあるだけで実物を見るのは初めてだ。とっくの昔に絶
滅したと思ってたが…こんな所で生き長らえていたとはな…」
絶滅した魔物…。どうりでと思う。攻撃パターン、魔法に対する耐性…その全てが今迄戦っ
て来たどの魔物とも異なりどう戦えば良いのか全く掴めなかったのだ。姿形が森などで見かけ
るバウンドウルフに似ていた為、油断したというのも有るのだが。
しかしそれを聴いて少し安堵する。相手が全く未知の生物というわけではない事が解ったか
らだ。それを目の前の青年が証明してくれた。少しでも相手の知識があれば勝機は見えてくる
筈だ。いつも変態扱いしているこの青年の横顔が少しだけ逞しくアルルは感じた。
が…
「まぁいい…こんな魔物の一匹や二匹…オレの魔法で…」
「え?でもシェゾ?あの魔物…魔法が…」
「お前がここまで苦戦してるのも珍しいしな…」
「…お〜い…?」
「今日こそオレとお前の力の差ってのを見せ付けてやるぜ!」
「…ボクの話聴いて…ないね…」
「アレイアード!!」
シェゾが放った闇の魔法は周りの闇を吸収するように膨れ上がり目の前の獣を呑み込もうと
襲い掛かるがその寸前でアルルの魔法同様砕け散ってしまう。
「何ぃ!!?」
「…だからぁ…他人の話は最後まで訊きなよ!あの魔物魔法が効かないんだって!!」
驚いているシェゾの胸倉をがしっと掴みアルルは今にも食いつきそうな勢いでまくし立てる。
「………は?」
「だから…効かないんだって魔法…」
「………」
「…シェゾ?」
「そういう事は早く言え!!」
「君が言わせてくれなかったんでしょうが!!全く君に期待したボクが馬鹿だったよ…」
「んだと!?」
つまり彼も目の前の相手に対しては全くの無知という訳で状況は以前変わらずなのだ。二人
がまたもや言い合いを始めるかと思われたがそれは魔物の遠吠えにより不発に終わる。見ると
魔物の黒かった身体は次第に金色を帯び始めその回りではパリッパリッという静電気が弾ける
音が鳴る。そして次の瞬間何かが弾けるような音供に雷光が迸った。
「きゃぁっ!?」
「アルル!!」
「ぐぐぅ!」
避けきれず雷撃を受けたアルルにシェゾとカーバンクルが叫ぶ。アルルの身体は一瞬宙に浮
き地面に叩きつけられそのまま2メートル程滑って停止する。シェゾはアルルに駆け寄りその
身体を抱き上げた。
「お、おい!大丈夫か!?」
「い…いたたた…し、しびれたぁ…」
先ほどとは打って変わってい弱々しい声。身体をぴくりとも動かさない所を見るとモロに電
撃を喰らったその身体は麻痺状態を起こしていることがわかった。
「…動けるか?」
「…っ!う、うん…なんとか…」
シェゾの言葉に頷きアルルは彼の手を借りながらもまだ痺れる身体を持ち上げ今にも襲って
来そうな魔物を見て呟いた。
「…あいつ…雷系の技も使えるんだ…」
「…も?」
アルルの言葉を不思議に思いシェゾは問う。アルルは視線を魔物からシェゾに移し言う。
「うん、戦ってると色んな技使ってくるんだ。口から火吐いたり、身体からカマイタチ出した
り…さっきは爪で引っかくと凍る技使ってきたよ…避けたけど…」
「…マジかよ…」
「全く…攻撃できないし、色々攻撃しかけてくるし…どうすれば良いのさ!」
「お、俺に訊くな!」
「君戦闘のぷろふぇっしょなるでしょ!?折角呼び出してあげたんだから少しは役に立ちなよ
!」
「…んだと…?てめぇが勝手に呼び出したんだろうが!人が下手に出てりゃいい気になりやがっ
て!俺は呼び出して欲しくて呼び出された訳じゃねぇっ!寧ろ良い迷惑だ!」
勝機の見えない戦いに不安を抱いての事だという事は解っていたのだが、売り言葉に買い言
葉でついそんな事を言ってしまい、シェゾはアルルの表情を見て言いすぎたと後悔した。
アルルは大きな金が掛かった茶色い瞳に涙を溜めキッとシェゾを睨みつける。その両手には
次第に魔力が集まっていく。
「…もう…君なんか…君なんかっ!」
「お、おい…ちょっとマテ!」
その魔力には憶えがあり、シェゾは冷や汗を掻く。彼が幾度となく喰らい、幾度となく生死
の境を彷徨わされた無属性の爆発呪文…。慌ててそれを制そうとするが、強大な魔力は極限ま
で膨れ上がり今にもはちきれんばかりだ。
「ジュゲム!!」
「うわっ!?」
『ギャウンッ!!』
「「…へ?」」
アルルの放った魔法はシェゾの数センチ横を擦り抜け、今まさに彼に襲いかかろうと躍り上が
っていたヘルハウンドを吹き飛ばし二人は素っ頓狂な声を上げる。
「……おい…アルル…」
「…な、なに…?シェゾ…」
「…効いてんじゃねぇか?魔法…」
「うん…効いた…ね…」
呆然と立ち尽くしなんともマヌケな会話を繰り広げる二人。目の前ではよろよろと立ち上が
った魔物が怒りに燃えた深紅の瞳を二人に向けている。
「…もしかして属性に反応する障壁を纏ってるだけで、無属性の魔法や物理攻撃は通用するん
じゃねぇか?」
「え?そ、そうなのかなぁ?」
考え込むアルルに向き直り背後を警戒しながらもシェゾは問う。
「そうなのかなぁって…お前、ジュゲムはさっきのが初めてか?」
「うん」
「…通常攻撃は?」
「やるわけないじゃない。あんなすばしっこいのにそんな捨て身攻撃…」
「……なんでジュゲム使わなかったんだよ?」
「だって魔力勿体無いじゃない」
「………バカか?お前」
「なっ!?バ…っ!?」
ジト目で睨むシェゾ。その足元ではカーバンクルがヘルハウンドに向け警戒のポーズと「グ
ーグー」という鳴き声を上げている。
「あのな…どう戦えば良いか解らない相手に対して魔力ケチってどうする。どういう攻撃が通
じるのか解らない相手には捨て身の攻撃も必要だろうが…。そこから勝機が見えてくることも
ある。それくらいお前だって解ってるだろ」
「だ、だってぇ…魔法通じないからジュゲムも通じないと思って…」
アルルの言い訳にシェゾは大きく溜息を吐き項垂れた。むぅっと頬を膨らませる彼女を彼は
見据える。
「お前…今までの戦いで何学んできたんだよ…」
「う”…い、良いじゃないっ!勝機が見えてきたんだからっ!ってな訳でシェゾ宜しくっ!」
「はぁ!?ちょ、ちょっと待てコラ!」
先程の今にも泣き出しそうな顔は何処へやら。にっこりと笑いぽんっと肩を叩くアルルにシ
ェゾは嫌な予感を感じる。
「だってボク今までずっと戦ってたんだもん…疲れちゃったの。君、体力有り余ってるでしょ?
だから…」
「おい…勝手に呼び出しといてパシリ扱いか?」
「その為に呼び出したんじゃない」
「…てめぇなぁ…」
「何よ?ジュゲム喰らいたいわけ?」
「う”…」
ジト目で睨むシェゾを魔力を見せ付けながら睨み返すアルル。たじたじと一歩退くシェゾに
にっこりと天使の様な微笑みを投げかける彼女を彼は心の中で「悪魔だ…」と罵った。
「帰ったらカレーぐらいおごってあげるから〜」
「……カレーだけか?」
「んじゃ、サラダも付けるよ」
「…はぁ…俺の三日ぶりの飯……」
「う、う〜ん…わ、わかったよ〜じゃぁ、コンソメスープとぷよまんも付ける!これでどう?」
「……まぁ良しとするか」
交渉成立と言わんばかりにシェゾはアルルに背を向け、ヘルハウンドに向き直る。結局食べ
物に釣られる辺り彼女に手名付けられている気がしないでもないのだがこの際そんな事を気に
している場合では無い。兎に角食費がピンチな彼はなんとしてでも食料を調達しなければなら
ないのだ。
「…つ〜わけでお前には悪いが、くたばって貰うぜ!」
言い放ち闇の剣を構える。足元でカーバンクルが「ぐぅ〜!」と鳴くのを一瞥すると再び目
の前の獣を見据える。しかし、そこに魔物は居ず、シェゾは神経を集中させ気配を探る。後ろ
ではアルルが警戒を強めているようで、緊張しているのか喉をごくりと鳴らすのが微かに聞こ
えた。
「…っ!?シェゾ!」
「…っ!?」
アルルの叫びと同時にシェゾは振り返り、咄嗟に顔の前で剣を構える。直ぐ目の前で風が奔り
金属同士がぶつかり合う様な音と供に火花が飛び散り、一瞬血を思わせる深紅が浮かび上がる。
腕に鈍い痺れを感じながらも無理矢理剣を引き相手に切りつける。
『ギャンっ!?』
悲鳴と供に銅の色彩が舞い、シェゾの頬を濡らす。
「どうやら…物理攻撃は通用するようだな」
嘲りと安堵を込めてにやりと笑う。正直言ってジュゲムが効いたからと言って剣が通用する
保障は何処にも無かった。魔法が効いたとしても物理的攻撃は全く通じないということもある。
しかし、彼の剣は確実に相手を捕らえ、肉を引き裂き鮮血をぶちまけたのだ。
『グルルル…』
前足と腹部に傷を負った黒い獣はもう立つ事すらままならないようで、少し間合いを取った
場所に蹲り、唸り声を上げている。それにシェゾはゆっくりと近づく。
「これで終わりだな」
「…シェゾ…」
不敵に笑い剣を振りかざす。それを見たアルルは自分が頼んだ事とは言え、彼に“頼むんじ
ゃなかった”っと後悔した。抵抗を失った相手でも容赦しない…それが闇の魔導師なのだと。
剣を振り下ろす。その瞬間、小さな黒い影が岩陰から飛び出してきた。
「!!?」
「シェゾ!ダメ!ジュゲム!!」
「ぐぅ〜〜っ!」
「ぐはっ!?」
軌道を逸らした剣は魔物を傷つけることなく地を切り裂き、アルルのジュゲムとカーバンクル
のビームをモロに喰らったシェゾは見事に地に突っ伏した。
「……避けた…だろうが…」
「あ…ご、ごめん…」
ぼろぼろのシェゾを助け起こし、ヘルハウンドに目を向ける。そこには…。
『きゅぅ〜ん』
『くぅ〜ん』
「か、可愛い〜!」
何も知らず、母親にじゃれ付いて遊んでいる数匹の小さな黒い獣達を目の前にアルルは目を
キラキラと輝かせた。目を子犬たちに釘付けにしながらアルルはシェゾの服をくぃくぃと引っ
張る。
「…あ?」
「ねぇ、あのこが襲ってきたのって子供達を護るためだったのかな?」
「…だろうな」
「…そっか」
「お、おい…?」
呟いたアルルはシェゾの傍を離れ、ゆっくりとヘルハウンドに近づく。異変に気付いた子犬
達が、動けない母親を庇うように小さいながらも勇敢に警戒の唸り声を上げている。
それを気にする様子も無くアルルは、尚低く唸り睨みつける母親の前にしゃがみこみ、
「ごめんね」
一言呟き手を翳す。その瞬間母親の身体は淡い光に包まれ次第に傷口を閉ざしていった。それ
を見届けたアルルはにこっと微笑んで立ち上がり踵を返す。母親はもう唸り声を上げる事無く
紅い瞳でアルルを見つめていた。
「…お人好し」
再び自分の隣に戻ってきたアルルをシェゾは呆れを含んだ瞳で見据える。それを見たアルル
はにっこり微笑んで言う。
「それはお互い様でしょ?君だって子供達の存在に気付いた途端攻撃止めたじゃない」
「………」
「あはは、やっぱりシェゾは優しいね」
「んなっ!?」
ぼんっという効果音が似合いそうな程赤くなったシェゾの腕に自らの腕を絡ませアルルは笑う。
嬉しそうに。
「お、おい…なんだ?この腕は」
「ん?帰るんでしょ?早く行こ、君の家にさ」
「なんで俺の家なんだよ」
「カレー食べないの?」
「………」
暫し沈黙。
「…俺に作れと?」
「当たり前でしょ?他に誰が作るのさ?」
「おごるんじゃなかったのか?」
「おごるよ〜…材料費は」
「……おい…」
「あれ?今月ピンチなんじゃないの?じゃぁおごる必要ないね」
ジト目で睨むシェゾ。アルルは横目でシェゾを見、ふふんっと勝ち誇ったように笑う。それを
見たシェゾは「やっぱり悪魔だ…」と心の中で呟いた。それを知ってか知らずか、アルルはにっこ
り笑って絡ませた腕を引っ張り、待ちきれないというように急かす。
「早く行こうよ〜、ボクお腹空いちゃった」
「俺はお前の専属料理人か?」
「うん」
その答えにがっくりと肩を落とす。頭の上ではいつの間によじ登ったのやら…カーバンクルが
くるくると踊っている。
「ほら、カー君も喜んでるし」
「あぁ…そうだな…」
腕に纏わりつきながら楽しそうに微笑むアルル。シェゾは諦めたように呪文を紡ぐ。魔物の親子
達が岩陰に姿を消すのを確認するのと同時に二人と一匹の体は黒い風に包まれその姿を眩ます。
辺りは静寂が支配する深い闇へと還って行った。
***あとがき***
華 車「や、やっと書き終わった…(汗
シェゾ「一体何日かかってるんだ?これ…
アルル「ざっと一ヶ月?
シェゾ「いや、それ以上だろ
華 車「戦闘物なんて初めて書いたんだもん…それにいろいろやることあったし…
シェゾ「また遊んでたんじゃねぇのか?
華 車「失礼な…CGIの勉強してたんだよ。どうしても使いたいものがあったから…
アルル「それを遊んでたって言うんじゃ…(汗
華 車「私には遊んだって意識はゴザイマセン(マテ
シェゾ「あぁ…そうかよ…(汗 それにしても…戦闘モンねぇ…
アルル「全然戦闘してない気が…
華 車「それは気のせいよvアルルさんw(コラ
アルル「そうかなぁ〜?でもお題に沿ってないのは確実だよねぇ〜…
華 車「う”…そ、それは…(焦 だって思いつかなかったんだも〜んv
シェゾ「…お前想像力なさすぎ…(汗
華 車「わ、悪かったわね…(汗
アルル「まぁ何はともあれ書けたらしいから送りつけちゃうそうです
シェゾ「つまらんもんだが貰ってやってくれ(苦笑 おら、お前もファリに謝れ(げしっ
華 車「狽ヘぅっ!?け、蹴る事ないでしょ〜(涙
うぅ…待たせちゃった上にへタレでごめんなさいです…迷惑でなければ是非貰ってやってくだされ(哀願
アルル「お題に逸れてないけど、こんなので良ければのし付けてあげるよ(苦笑
シェゾ「のし付ける程の物でも無いがな…
華 車「ふっ…相変わらず言いたい放題…(遠い目
二 人「「だったらもっと洗練しろ!!