――ウィッチの塔にて。
「という事は、私が他の『究極の食材』を集めなければ、その食材にあった『至高のルー』ができない! というわけなのね?」
「そう……いくらわたしでも他の『究極の食材』がそろっていないと、ごく普通のカレーのルーしか作れませんわ!」
ウィッチのクイズを全て正解し、『究極のカレー』の材料である『至高のルー』を作ってもらう約束をしたルルー。
しかし何ということでしょう!ウィッチ特性のルーは、食材に合わせた絶妙なブレンドで作るため、他の食材が集まらなければ作れません。
ルルーは少し考えます。
「わかったわ。とにかく、この『ばいんばいん』を持って一度もももの所に帰ることにするわ。これを持って帰れば『究極の野菜』をもらえる事になってるし、『最強の肉』の仕入先も教えてくれる約束だし」
全ての食材を持って戻ってきた時、ちゃんとルーを調合してよね。そう言ってルルーは部屋を出て行きました。
「いってらっしゃいな〜♪」
笑顔で見送るウィッチ。
しかし彼女の姿が見えなくなった途端、その動きが完全に停止します。
そして暫し、
「……ところで」
彼女の青い瞳が斜めにキラリと光りました。
「そんな所で何してるんですの? 校長先生」
「ギクッ」
ばっと振り返った高天井、そこに張り付いた緑髪長髪仮面の男。
両手両足でへばり付いた姿は、まさに『黒い悪魔』と呼ばれるあの虫にそっくりです。
「いやいや、これでも可愛い生徒の事は心配なのでな。こっそり後をついて回っているのだよ。はっはっは」
世間ではそれをストーカーといいます。
「……さっき後ろでぶつぶつ聞こえましたが、ルルーさんのスリーサイズメモってませんでした? 先生」
世間ではそれをセクハラといいます。
「な、何の事かな? はっはっは」
「…………」
しゅたっと一回転して降り立った仮面男は、ふんぞり返って飽くまでしらばっくれました。
しかし棒読みで声が震えてるんだから怪しい事この上ありません。現実世界でならやけに小難しい罪名を付けられて逮捕されかねません。
次第に平たく冷たくなっていくウィッチの目線。
ダラダラと汗を流す彼の、見えない目元は泳ぎまくっているに違いないのです。
「ま、まぁ、何はともあれ、だ。私は忙しい。ルルー君も動いたようだし、ウィッチ君、キミの課題成果も期待しているぞ! そ、それでは、新学期にまた会おう! さらばだっ!!」
居心地の悪くなったらしい彼は、ウィッチの肩をバシバシ叩いてそれだけを言い、消えました。
後に残された魔女っ子は呆然と、
「……校長先生、行動がサタン様そっくりですわ」
マスクド校長の正体に気付き始めた生徒、一名。
どうする!?サタン!!?(どうもしない)
THE END
|