風と大地と…
日差しが眩しい暖かな午後。
少し強めの風が吹き草木がざわざわとざわめく丘の上。
今ここには彼と彼女の二人だけ。
彼は一際大きい樹の下に佇み彼女を見守る。
彼女は箒を宙に浮かせその上に立つと両腕を広げバランスを取った。
暖かな風が吹き彼女の黒いローブをはためかせる。
「…風…みたいだね…」
「風…ですの?」
彼、ラグナスの呟きに彼女、ウィッチは首を少しだけ巡らせ意外そうに…そして不思議そうに
首を傾げる。
「…そんな事言われたのは始めてですわ。皆さん私のイメージは星だと言いますもの」
「うん…それも有ってるとは思うよ?だけど俺は風だと思う…」
苦笑し、少しだけ遠い目をしながらラグナスは言う。
ウィッチはラグナスの声を背に前を向いて静かに聞いていた。
「…風は…自由の象徴だし、何処にでも自由に飛んで行けそうに感じる…だけど…本当はそう
じゃないんだ…風も気圧だとか…そういう自然の法則に縛られてる…自由に見えて自由じゃ
ないんだ…」
そこまで言って、はっとしたように自分の口を片手で覆い、
「ごめん…」
と呟く。
「大魔女の孫」と云う肩書きを背負って生きている彼女にとって、この科白は辛い物だったかも
しれないから…。しかし、ウィッチは振り向かず静かに言った。
「…確かに…そうかもしれませんわね…でも、私が風なら…ラグナスさんは大地ですわ…」
「…大…地…?」
不思議そうに問いかけるラグナス。
彼にとってもその科白は始めての事だろう。
ウィッチは少しだけくすりと笑い振り返らずに言葉を続ける。
「えぇ…大地はこの星に囚われ、とても不自由に見えますわ。…でも本当はそうじゃないんですの。
…草や樹や…色んな生命を育てたり、 雨に流され川を下ったり…とても自由ですわ。
でもそれは不自由を乗り越えた上での自由…だから貴方は大地ですわ。
それに…」
ウィッチはくるりと振り返り、とんっと箒の柄を蹴る。
重力に任せ自由落下する彼女をラグナスは慌てて受け止めた。
一瞬バランスを崩すが直ぐに体勢をたてなおすとウィッチを地に降り立たせる。
「それに…大地はこうして優しく、風を受け止めてくださいますもの…
自然の法則に流されそうな風をこうしてここに留めてくださいますわ」
そう言ってウィッチは微笑む。
ラグナスはいつもよりももっと優しくウィッチを抱きしめた。
午後の日差し暖かな光
それを受けし風と大地 それを受け止め彼と彼女
異なる様で同じ物 同じ様で異なる物
それぞれ道は違えども 背負いし物は同じ物
だからこそ通じ合い だからこそ擦れ違う
しかしだからこそ共に歩める道もある
風と大地の二人に幸多からん事を…
***あとがき***
はい、梨菜さんに差し上げた品でラグウィのショートショートですv
しかも梨菜さんの挿絵付きv
あぁ…もう嬉しいっす!(>д<)b
もう可愛すぎ!やっぱりラグナスとウィッチはお似合いだなぁ〜と思ったりv
私のイメージとしては二人はこんな感じですv
正に風と大地なのです!(何
因みにこの小説にもアホなフリートークっぽいあとがきが書かれていました(笑
しかも私が誰も頼みもしないのにラグウィについてシツコイほど語っております(爆
こんな物を気に入ったと言ってくれた梨菜さんに感謝感謝v