悪夢

 

 

「…此処は…何処だ…?」

 

暗い…何も見えない…空間。俺は独り佇んで。

黒いどろりとした粘着質な“闇”が俺を捕らえ離そうとしない。

…気持ちが悪い…。

そう思うも、それを振り切る事さえ無意味に思え、どうでも良いかとぼんやり思い目を閉じる。

体が重い。もう何もしたくない…何も考えたくない…。このまま眠りに落ちてしまいたい…。

例えそれが、俺自身が消えることであったとしても…。

 

 

―――…… !!

 

 

声が聞こえた。俺を呼ぶ声?懐かしい…声…。

顔を上げるとそこには光。闇の中で輝くたった一つの…。

重い腕を伸ばし、ソレを掴む。

光が…満ちた…。

 

『ドスッ!!』

 

次第に視界が鮮明になり、感覚が戻ってくる。

飛び込んでくるのは鮮やかな紅と金無垢。

そして…手へと伝わる…重い…感触…。

濡れていた…。俺の腕も、服も…紅く…。

俺の物ではない。彼女の紅で……。

別れた時よりも大人びた少女の姿。微笑んでいた。紅く濡れた手で俺の頬に触れて…。

 

「……アル…ル…?」

 

喉の奥が熱い。口の中がカラカラに乾き、紡がれた声は嗄れ果てる。

俺が…アルルを…?何故…?

 

「…シェ…ゾ…よか…っ…」

 

紅い色が零れ落ちる唇から紡ぎ出された言葉。

ソレだけを言うとアルルの体は力を失う。

 

「――― …っ!!」

 

悲鳴のように名を呼び、無我夢中で腕を伸ばす。アルルの体を抱き締めようと。

その儚い命を繋ぎ止めようと…。

この腕は、この声はアルルに届いただろうか…?

その瞬間俺の視界は真っ暗になり、何も……解らなくなった…。

 

 

 

 

 

「!!?」

 

一瞬ビクリと体が震えるのを感じ、無理矢理引き上げられるように意識は急上昇した。

目の前には白い井。黒を基調とした物が多く存在する部屋。

隣には…俺が『殺した』少女がすやすやと安らかな寝息を立てている。

 

「…夢…か…?」

 

眩暈のようなものを感じた。

流れる鮮血の温かさ。アルルを貫く剣の重み。……痛み。

それらは夢にしてはあまりにもリアルで…。

もしかしたらこっちの方が夢なのか…?あの後俺は気を失って…それで夢を見ているのか…?

幸せだった…時間の夢を……。

 

 

 

 

ふと、手の中にある温かさに気付く。血の温かさではない。別の……。

繋がれた掌。確かな温もり。

ソファに身を預け眠り続けるアルルは傷など一つも無く、ただただ優しい温もりを俺に伝える。

あぁ…こっちの方が現実か…。

確信すると同時に溜息が漏れた。

アルルが傍に居るという安堵感。それと同時に訪れる不安。哀しいくらいに優しい想い。

嘗ての俺では感じなかったであろうモノ…。

繋がれた手を引き、アルルの体を引き寄せる。アルルを…もっと近くに感じられるように。

片時も離れたくないというように。あの夢を…浄化して欲しくて…。

 

目を閉じる。肩にアルルの重みを感じながら。

もう少しこのままで居よう。もう少し傍に居よう。

それは変える事の出来ない、逃れられない『運命』なのかも知れない…。

だが、せめてそれまで…。あの悪夢が現実へと姿を現すその時まで。

 

お前と二人…優しい夢を見ていよう…。

 

 

 

 

『悪夢』

 

それはあまりにも残酷で悲しき「未来(ゆめ)」。

 

だが…それでも…悪夢の中、俺は幸福(しあわせ)だったのかもしれない…。

 

お前が俺を救ってくれたから…。

 

 

最後に…お前に『出逢う』ことが出来たから…。

 

 

願わくば…あの悪夢の中、お前も幸福であるように……。

 

 

 

***あとがき***

はい、シェアルでSS…なんじゃこりゃ…って感じですね(汗

夢ネタですな。

一応、アルルとの戦いを夢に見るシェゾって感じで…(汗

あぁ…意味不明…(焦

取敢えず、これを苺様に贈与します。

シェゾ→アルルっぽい物を書く!って大口叩いた癖に何だこれは

って感じですが、受け取ってくださいませ(汗

アルルバージョン…書けたら書きたい…(書けたらかよ


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