Thing of being loved

「ねぇ、そっちあったー?」

「あったらとっくに言ってる。そっちももっと探せ。」

「なにをえらそうにー。っていうか、ホントにあるの?もう誰かに取られちゃったりとかしない?」

「さぁな。それを取るという物好きがいない限りあるだろうよ。」


そんなこと言ったってないじゃんー、という言葉を喉の奥で止めながら口よりも手を動かす。
ドアを開けて行ったり来たり。
隠し扉が無いかどうか床を見ながら右に行ったり左に行ったり。
怪しい壁がないかどうか壁に手をつき前へ行ったり後ろへ行ったり。
もう、そんなのばっかしで数時間。
「ふぅ・・・・・・。」
手ごろな椅子になる石(岩?)の上に座り、辺りを見回す。
白い壁や柱に今にも崩れ落ちてしまうくらいのヒビが入ってて、床は砂や埃で灰色っぽい。
外へ通じる窓はもう何十年も前から割れていたかのように黒くくすんでいて、そこから森の木がよく見える。
心地いい風が入ってくるのに埃で空気は澄んでいなく、どこか古い匂いを感じさせ、壁や柱、石は心から冷たくなってしまっている。
もうずっと使われていないような大きな部屋。ううん、全体から見たら何かを奉ってた神殿のよう。
こんなところをもう飽きちゃうよ、というほど探索し続けているなんて。
正直、コレがシェゾのことじゃなくボク個人のことならとっくに諦めていたと思う。

ボク―アルルと彼―シェゾは今。こんな場所を朝っぱらから半日かけてたどり着き、遺跡探索もとい神殿探索をしていた。
なぜこんなところを探索しているかって?
その言いだしっぺはシェゾなんだ。大事な実験材料を探してるんだって。
ボクはただ暇つぶしになるかなとシェゾに付いていったんだけど、まさかこんなことになるなんて。
何にも出てこない。目的の材料も見つからない。
同じところを何度も行き来してどこが楽しいんだか。
それでもシェゾは引き下がらないんだ。よほど大切な材料なのか、それとも神殿探索だから、なのか。
ボクは関係ないんだけど、シェゾみたいな闇属性だと居てるだけで心地悪いんだって。気分が悪くなる、みたいな?
だから、普段はこういうところは探索に向いてないんだって。他の人だって、まぁ、いくら人が住んでいないような古い場所でも、やっぱし神殿だしね。
そんなところを探索しようなんて考えるのなんてシェゾくらいしかいないと思う。
最近、この辺に立ち込める神聖な結界のようなものが薄れていったからチャンス、と探索に来たみたいだけれど。
やっぱし、ボクとしてはたとえ元でも神殿を荒らすようなマネは・・・ちょっと抑えたいかも。

「なにさぼってんだよ?付いてくるっていったのお前だろう?」

呆れた声がする。
部屋にいるのはボクだけのはず。ドアの方に目を向けると、やっぱし声と同じような呆れた顔をして立っているシェゾがいた。

「むぅ。神殿じゃなかったら遠慮したのにぃ。・・・そっちは探したの?」

神殿じゃなかったら。そして一緒に探索する人がシェゾじゃなかったら。
とっくに諦めて家に帰ってた。

「まぁな。しかし、風化してるとはいえここまでなにもないとはな。」

今からでも帰ればいいのに。
そんなことはシェゾは言わない。ボクの気持ちをちゃんとわかってるから。

「仕方ないよ。神殿と言っても教会と変わらないんだから。」

何かを守るために結界を張って管理する。
教会はそれをお祈りしたりするところ。
そこが少し違うだけ。そうボクは認識してる。

「キミの探してるものってどんなものなの?」

粉のようなものなんだって。ケド、そんな粉を探せって言われても正直困るよね。
どうやって探せばいいの?って聞いたら魔力で探知出来るって言うけど。
さっぱりわからない。
魔力で探知っていっても、ボクまだそこまで上手く探せるほど魔法に関して得意じゃないし。粉だったらなおさら。

「星の砂という、魔力増幅の薬を作るのに必要な材料だ。色は、本では「白」と書かれている。」

・・・魔力増幅、ねぇ。シェゾらしいケド、色が「白」だと探しようがないじゃん。
床にある砂だって灰色混じった白だし。

「さて。たわむっている暇はない。さっさと探すぞ。」

「はぁ〜い。」

さっさと終わらせて帰って、夕飯でもごちそうしてもらおっと。
ここまで手伝わされてるんだもん。当たり前だよね。


それからさらに数時間。お昼をとって、もう夕刻くらいだろうな。
今は夏だからまだ暗くはないけど。空の色からもうそれくらい時間が経っていることを感じさせる。

「ふわぁ・・・。疲れたぁ・・・・・・。」

「・・・くそっ。これだけ探しても見つからんとは・・・。」

さすがにシェゾも諦めが見え始めていた。まぁ、今日は、ってところだろうけどね。ボクはシェゾの手を借り、一歩一歩神殿の廊下を歩く。
すると。

「・・・・・・はどうですか?サタン様ぁ。」

「・・・でもいいけれどな、ルルー。」

かすかにそんな声がした。
ボクとシェゾは顔を見合わせる。

「・・・あはは。空耳、かなぁ?」

「・・・・・・そう願うがな。」

まさかこんなところに2人がいるわけがない。
耳を疑いたくはないけれど、以心伝心ごとく出会いたくないと注意しながら入り口兼出口のほうへと向かう。
ボクはサタンに会いたくないし、シェゾはルルーに会いたくない。
別に嫌いってワケじゃない(シェゾの場合はわからない)けど、ややこしいことは避けたいし。
でも、その願いは空しく散った。

ゴスッ!!

急に変な音がすぐ隣でしたからだ。
そして、膝を床につけて倒れるシェゾ。

「ってー!!」

「あぁ〜ら、ごめん遊ばせ。つい手がうっかりーv」

すぐ後ろから高飛車な口調の女性の声。
やっぱり・・・と思いながらも振り向き、笑顔であいさつする。
ルルーは別に嫌じゃないからね。

「やっほ、ルルー。」

「こんな時間までこの変態に付き合ってるの?大変ねぇ〜。」

ころっと口調も変わり、いつものルルーとなる。
あ、いつもっていうか、ルルーったらボクと話すときとシェゾと話すときと全然違うんだ。
なんでだろー?っていつも思うんだけどね。

「おぉ!我が后ではないかっ!!」

ルルーの更に後ろから今度はまた別の声。
ボクは反射的に立ち上がるシェゾの後ろへと隠れ、服を掴む。
なんだ?とシェゾはこちらに目を向けるけど、その声の正体に納得するように手を後ろへと回してくれる。

「いい加減『我が后』っていうのはヤメロ。こっちが迷惑する。」

「サタン様、私というものがありながらまだこのアルルをお求めに?」

吐き捨てるように言うシェゾと、正反対に悲しそうに、でも強く問うように言うルルー。
同時にいい、そこだけは息があってるんだなとボクは少し関心する。

「『こっちが』じゃなくてそういう場合は『アルルが』でしょう?あんたなんか関係ないじゃない。即席なんだからさ。」

「即席ってなんだよ。」

「即席は即席よ。今だけの彼氏だって言ってるでしょう?
アルルはまだ純粋なんだから。こんな変態といたらなにされるかわかったものじゃあないわ。」

「変態って言うな!お前こそ関係ないことだろう?」

「関係?そんなものは必要ないわ。ただ、そう簡単にあんたにアルルを渡してしまうとことが気に入らないの。」

・・・・・・・・・あれぇ?どんどん違う方向に話が流れていっているような・・・。
そんな不安は軽く流され。
どんどん険悪な雰囲気に。ま、これが2人の出会ったときのオーラみたいなものだからあまり気にはしてないけど。
そして、勝手に勝負始めちゃった。しょうがないなぁ。

「まったく、2人はいつまでたってもかわらんな。」

ふいにすぐ隣でサタンの声。

「そう思うんだったら止めに入ったら?」

シェゾとルルーの勝負を見、声だけをかわす。

「止めに入ったらいくら私でもルルーが怒るからな。特にお前のこととなると・・・。」

「ほぇ?ボク?」

「あぁ。まだ認めてないのだろうな、ルルーの奴は。」

そういうサタンに、ボクはちらっと表情を見た。
サタンは優しそうにルルーを見ていて、ルルーは必死になってシェゾから一手を取ろうとがんばってる。

「・・・認めてないって?ボクとシェゾのこと?」

「口では好きなように言ってはいるが正確はアルルも知っているだろう?
素直じゃないだけでアルルのようだ。」

・・・・・・ふぅん。ボクのようだって言われたのは初めてだけど、どこか似てるねってこないだウィッチにも言われた。
姉と妹のようだって。すっごく嬉しかったし、ルルーもまんざらじゃあなさそうに笑ってた。
ボク、お姉さんがいないからルルーという存在はすごく力になった。助けてもらったし、相談にものってくれたりもするし。

「アルルを自分が信じられないような奴には捕られたくないと思う、姉心さ。

その言葉が、妙に心に響いた。

「そろそろ勝負を止めないとやばいな。」

そうサタンは言って2人を止めに入っていった。
シェゾもルルーもすっごく傷だらけで、もう気力だけで体を動かしてるってほどだったからサタンが止めに入るのと同時に2人とも膝に足をついてて疲れ果てていた。
・・・・・・そのとき、どうしてボクのためにココまでしてくれるのだろう?という疑問がよぎった。
その答えは、その気持ちを察したかのようにルルーにヒーリングをかけながらサタンが教えてくれた。

「愛されている、ということだな。もちろん、私もだがな。」

その言葉にシェゾもルルーも何も言わなかった。図星だったのか、話す気力がなかったのか。
ボクはそれから何も言わず、シェゾのほうにヒーリングをかけてあげた。


それから数十分後。サタンはルルーを支えてあげながらも1つの小瓶をくれた。
中には白い粉が入ったもの。かすかに、魔力が感じられた。
・・・・・・ってことは、コレが『星の砂』・・・?

「今日の餞別だ。」

そう言ってあっさりと渡してくれる。それにはシェゾが一番驚いたという顔をしていた。

「どこで見つけたんだよ?」

「これか?これは祭壇の裏にある地下の階段の下に下りたところにあったぞ?」

祭壇・・・?そんなのあったっけ?
それになにか思い出したようにシェゾが声をあげた。

「あー!!あのぼろっちい木の箱かよっ!?」

木の箱?

「風化しているせいでそう見えただけだろう?その祭壇の裏に隠し扉があったのだが。
まぁ、そんなことはどうでもいい。受け取れ。」

そういって消えちゃった。サタンもルルーも。テレポートを使ったのかな。
というか、なんでルルー達こんなトコに来てたんだろうねぇ。調査かな?
そんなことを考えつつも白い砂が入った小瓶を空へかかげ、紅く染め始めている太陽の光でさらしてみる。
見てからになんの変哲も無いような砂だけど、魔力がこもってるからただの砂じゃないということがわかる。
それを、シェゾに手渡した。

「はい。何はともあれ、見つかってよかったねv」

「・・・・・・まぁな。」

もらえればそれでいいとばかりに肩をすくめ、シェゾのほうもテレポートを唱える準備をする。

「ほら、掴まれ。」

「うんw」

その声に、いつもは服を掴んでるけど今日はぎゅーっと抱きついた。

「・・・なんだよ?」

ちょっと顔を赤くしてる。えへへ、と笑いながら、

「別にv」

とだけ答えると前がぐにゃりと変化し、空間転移魔法が発動した。


『愛されている』かぁ。今度、さりげなく「ボクも」って言ってみようかな。
何て言ってくれるかどうか、ちょっとだけ楽しみだった。

〜Fin〜
***感想***
私の誕生日祝いとしてasukaさんが書いてくれましたw
シェゾ×アルル←ルルー×サタンなどという訳の解らないリクエストに丁寧に答えてくださいましたvv
ラブラブなシェアルが素敵すぎ!!そしてサタン様…あなたカッコよすぎですよ!!もう!!
何気にルルーさんのことを高く評価してるところがまた…vv
ルルーさんも姉御肌大爆発で…(笑
愛されてるな〜あるるん…v(笑
素敵小説有難うございましたw

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