――というわけで、二人とも単独行動厳禁。絶対離れちゃだめよ? 解ったわね。
――ちょっと待て。離れるなって、四六時中こいつを見張ってなきゃならんのか?
――ったりまえでしょ−! アンタ、護衛ってのがどういうことか解ってるわよね? 闇の魔導師さん?
(とは言ったもののなぁ……)
アルルの隣を歩きながらシェゾは物思いにふけっていた。
ちらりと隣を盗み見れば、いつもより口数少なく黙々と歩く少女。
(見張るにも限界ってもんがあるだろう)
自分は男で彼女は女なのだ。流石にどこまでも付いていくわけにはいかない。
悶々と考えていたら何故か顔が熱くなり頭を振る。
溜息を吐きかけて空を見上げると、
「ねえ、」
話しかけられて目をやればアルルがこちらを見上げていた。
「シェゾ、うちに来る? それともボクがシェゾの家に行った方が良いのかな?」
まるで誘い文句。
「俺の家来るのか? お前……」
「だってずっと一緒にいなきゃならないんだから、どっちかがどっちかの家に泊まるわけでしょ?」
一瞬絶句して声を絞り出すとそんな答え。
無邪気に首を傾げるアルルに、自分は何を考えているのかと情けなくなる。
「今更だが、お前不安とかないのか? これから俺と数日間は昼夜を共にしなければいけないわけだが」
言いながら余計に情けなくなってきた。これでは自分が信用に置けない人間だと言っているようなものではないか。
無性に虚しくなり、言ってしまった言葉を後悔する。
が、
「ううん。全然。だってシェゾはボクのこと護ってくれるんでしょ?」
にっこりと微笑まれる。
信じきって、頼りきった笑顔。溜息が出るほど清んだ金無垢。
「ああ、そうだな」
つい微笑を返してしまう。
安堵半分、罪悪感半分。
「確かに、どっちの家に『帰る』かは決めておく必要はあるか」
何はともあれ、アルルから離れることはできないのだ。
気を取り直して考える。
「さて……」
<2011/7/4(月) 12:32 華車 荵>
「……はぁ…。くそ面倒くさいな…。」
シェゾはぼそっとつぶやいた。
「んー?何かいった?」
「あ、嫌…別に…。」
「そう?じゃあ早く決めていこうよ!」
「あぁ、じゃあそうだな…。俺の家にでもいいか?」
「うん!いいよー!」
「・・・・・・」
なんなんだ?この迷いのない返事…。本当にこいつは無垢だな…。それとも馬鹿なのか?
「ねー!早く行こうよ!」
俺が迷ってる間にアルルは今か今かと待っていた。
「わかったよ…。今行くから!」
シェゾはもう投げやりになりつつ自分の家に向かった。
〜数時間後〜 シェゾの家にて。
「じゃあっ!僕お風呂入るから見ないでね?」
「みたってちっとも楽しくねぇーよ。」
「うっるさい!シェゾの馬鹿ぁー!」
「早く行かないか!」
「はーい!」
〜30分後〜
「遅いな…。もう30分後たってるぞ…。」
「シェゾー!もう少しかかるから先に寝てていいよ〜。」
「あー。わかった。」
つまりは俺に風呂に入るなということか…?
「まぁ、いいや。とっとと寝るか…。」
といってシェゾはさっさと眠ってしまった。
<2011/9/6(火) 22:12 魔導ぷよ>
「ふー気持ち良かった。あれ?シェゾったらもう寝てるよ。」
…
「かっこいいな。寝てると…」
ガチャ
「!」
ドアのあく音がした。
アルルは戦闘体制をとった。
「女の子を1人にしておくとはどういう事考えてるのかしら。」
「えええええええ。ルルー!!」
「変態が仕事ているかきになって来て見たのよ。」
「なんだ。」
「アルル、あなたはもう寝なさい。」
「うん!」
〜10分後〜
「騙しやすいわね。」
と言ってルルーはニヤリと笑った。
<2011/9/13(火) 12:59 ふう>
ルルーはねていたシェゾに大声でこういった。
「ちょっと!!万年ヘンタイきのこ付き闇の魔導師シェゾ・ウイグィィ!おきなさい!!」
「・・・・・・・」
けっこう耳元で喋ったが、いっこうに起きる様子はない。
しかし大声を出すとアルルのほうが起きてしまう。
仕方なくルルーは構えをとった。
『ハァァァ・・・・』
ドゴン!!
ルルーのけりは見事にシェゾにヒットした。
「!?」
『ようやくおきたのね。警護が聞いてあきれるわ。』
「な!?」
『大声を出さない!アルルが起きちゃうでしょ!』
『・・・・』
まだ眠そうなシェゾ。もう一発けりを入れようかとルルーがおもったとき。
カ、カン。
カカカン。
奇妙な音がルルーの耳にはいった―。
<2011/12/30(金) 16:40 アルナ>
「…何事っっっ!」
音がした辺りにルルーが駆け込む。
「わわっっ!ルルーさんっっっっ!!?」
「……ウィッチ?いったいここで何を?」
彼女の頭上には無数の蝋燭、その手には金槌……
状況証拠で彼女の行っていたことは明らかである。
「……見たらわかるでしょ、て感じね…。」
「むう…」
「…誰を呪ってたの?」
「……誰、というか……ラグナスさんが誘拐されましたのっ!」
「ええ?!」
「襲いかかったらなんとか髪の毛は手に入れて、
仕返しに呪うと同時に犯人を特定できないかと……」
「…今怖い発言がなかった?」
その直後、…転移魔法独特の風が響く。
「ぎょえぇぇっ!?」
一瞬遅れてウィッチの体が後ろによろめく。
「ああもう!これが原因かぁ…」
ウィッチのすぐ前に、腰の辺りまで蒼色の髪を伸ばした女が現れた。
その女は左腕に何かを抱えながら、
半分ほど突き刺さった五寸釘を強引に抜き取った。
「…痛うぅぅ…あなたなんですかぁ!?コレ…」
「ああっ!こいつですわ、ラグナスさんはどこよっ!」
二人の声は絶妙に重なって、ウィッチとルルーに女の声は聞き取れなかった。
ただ彼女はウィッチの声を聞きとれていたようで、
左腕に抱えていたものをゆっくりと地面におろす。
「……あなたがこの子の保護者?
毒に侵されてたみたいだから解毒しときましたが」
ラグナスの意識ははっきりとしているが、口をぱくぱくさせている。
「すみません、あまりにうるさかったので」
女が指を鳴らすと、キーキーとした彼の声が戻る。
「あー、あー、よしと、まずは…ウィッチィィ!!!!
さっき何飲ましたんだよカオスな覚えしかねーよ!!!!!」
「………てあんたあぁ!!あの薬の調合半年はかかったのにぃっ!!!」
「……まぁこっちの用は済んだのでこれで…」
「………待ちなさい、あなたの名前は?」
激しい三人のやりとりに、ルルーが口を挟む。
「……私の名前?」
一瞬の間の後、彼女が答える。
「…フィルナと言います…もしかしてあなた…」
一瞬、間が開く。
「ライト」
辺りが明るくなり、光とともに沈黙が辺りを包みこんだ―――
<2013/1/24(木) 20:30 スズラン>