恋の鼓動、高鳴る時2
彼は、ある少女に恋い焦がれていた。
・・・叶うはずもない、恋。

「アルル」
「?」
ラグナスは、目の前のキョトンとしているアルルに詰め寄る。
「あはは、どうし・・」
「好き」
「なにしてる、小僧。アルルはオレのだ」
スコーンといい音がする。ラグナスは、頭をおさえる。ヘンタイ発言をしたのは、銀髪の男、シェゾであった。
告白ぐらい、させてくれればいいのに。ラグナスは、心で、思う。
「ほれ、行くぞアルル」
「?うん」
そして、二人は、あっけなくラグナスの目の前からいなくなる。
ラグナスは、心の底から、告白の邪魔をしたヘンタイシェゾを恨む。

「・・フンフン」
どこからともなく、鼻歌が聞こえる。ラグナスは、少し離れたところに、歩いているウィッチを見る。彼女に聞いてもらおう。
そう思った時、彼女の体制がぐらりと揺れる。
「危ない、倒れる!」
ラグナスは、自分自身で出せる最大速度で、ウィッチの体を受け止める。
「ふ、ふう。危なかった・・・うわ、少し熱ある・・」
「・・・あら?ラグナスさん。私は、いつまでこの状況で?」
ラグナスは、ウィッチを自分がだいているコトを初めて知って、ウィッチを持ち上げる。
「ごめん、どくよ」
彼女を地におろして、続ける。
「・・・少し、具合悪そうだから、帰ってゆっくり休みな」
「え、ええ・・・」
いつもの彼女なら、「わかりました!」などと言って、去って行くだろうに。
きょうのウィッチは、そうはしなかった。いや、できない。
「じゃあね」
ドクン。
ラグナスは、アルルを見たときに覚えた鼓動の音を、忘れはしなかった。なぜ、急激にアルルから、ウィッチへと移る?恋など、そんなもろいモノではないだろう。
ウィッチが、見えなくなって、ポツリと漏らす。
「ああ、アルルに、恋など、していなかった、というのか?あり得ない。なら、あの時の決心は・・・シェゾの行動は・・・」
ラグナスの脳裏にこびりつくのは、ウィッチの無邪気な笑顔、嫌な思い出、・・・いい思い出のみだった。
脳裏からは、無駄な考えは失せ、頭の中は、ウィッチに対する思いだけだった。
アルルに対する熱は冷え、友達として対等に、ウィッチ対する熱は・・上がっていた。
「苦しい、恋など・・!不要・・・!」
口では何とでも言える。だが、ラグナスは動いた。
ウィッチを、探しに。

それから、数時間。アルルの家からは、アルルの悲鳴が聞こえる。いや、歓声か?
とにかく、ウィッチが関わっていたことは一目瞭然だった。
だが、アルルの家へ行く気はしなかった。
「じゃあね、アルル」
アルルの悲鳴が聞こえる。
「や・め・て・このヘンタイ!」

ウィッチがいた。森のほとりで。
「あ、ウィッチ!」
「え!ラグナスさんですの!」
「え、ちょっと。その反応は、ショック・・」
ウィッチは、ラグナスに驚いていた。
「休んでなかったの」
「う!」
「・・・キミ、まさか、オレに恋してる?」
有ったらいいな。ということを、口に出した。
「え!?」
ウィッチの、あの数時間は、何だったのだろう。最初からいえば良かった。
「いや、当てずっぽう!オレに、そんな能力ナシ!あったら、ウィッチのして欲しいこと、やってるし!」
「じゃあ、付き合ってくださいます?」
ラグナスは、嘘かと思った。なぜ、こうなったのか。
だが、良かった。それでも。
「いいよ。やってやる」
ラグナスは、笑みを浮かべて、こう答えた。
そして、いまでも、たまに、家からは、悲鳴があがったりするらしい。
2012年05月03日(木) 14時54分53秒 公開
■この作品の著作権は梅さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ウィッチ目線のストーリーの、ラグナスは、居ない間になにをしてるのかがかかれています。
ウィッチ目線の会話と若干違います。何故。
ヘタッピ小説を読んでくださった方、ありがとうございます!

この作品の感想をお寄せください。
No.2  梅  評価:--点  ■2012-05-04 19:41  ID:VjaA/pyFtyY
PASS 編集 削除
華車荵さん、感想ありがとうございます(*^◯^*)
アルルは、ただたんに、シェゾともう付き合っていて、ラグナスはそれを知らなくて、ほぼ、偽り(?)の恋をして、ウィッチの真の可愛さ(?)に気がついて、ウィッチと恋しあった。のような感じです。
No.1  華車 荵  評価:100点  ■2012-05-04 02:01  ID:/g6aVqqyrDA
PASS 編集 削除
 惚れっぽくてでも恋が叶わない勇者様っていうのはなんだか真魔導のラグナスを髣髴とさせますねw(と言っても真魔をじっくり読んだことがないのでイメージですがw)
 結局アルルを好きだと思ってたのは勘違いだったんでしょうか? それともフられたからあっさり諦めた? ……男心って良く分りませんね(^^;)(そういう問題かw)
 すみません、読解力なくてorz

 もしかして、ウィッチに好意の虐めを受けている内に優しく励ましてくれるアルルに目が行ってしまったのかな?(多分違う)
 と、桜さんのラグナス&ウィッチ設定を知らないままに私は妄想しています。
総レス数 2  合計 100

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(任意) 点       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除