使命 |
『人間は破滅へ向かうべきだ。なあ、そうは思わないか?』 そんな声が私の後ろから聞こえてきた。 声のするほうへ振り向くと2人の子供が仲良くしゃべりあっていた。 『なあ、―。やっぱ人間は生かしておけないよ。親父に頼んで根絶やしにしてもらおうぜ。』 『え・・・でも魔王様は人間をすごく気にかけてるじゃないか。』 そういう2人は魔族だった。 一人は少しおとなしげな感じで、まだ生えたてのだろう小さな一角の角が額から伸びている。髪は黒髪で短めに切ってあってすこしツンツンな感じだ。 もう一人は金色の角を両左右から生やし、緑の髪をした活発的な感じの少年だ。 私がそんな風に子供達を観察していると、子供達はまた喋りだした。 『魔族がなんで人間をかばうんだよ?やっぱおかしいよ、親父は。だって人間は自然を壊しまくってるんだぜ。親父もいってたよ。時空の歪みも人間が作ってる物だって。』 『でも―。それは何億年も昔の話だろ?今は修復されてるし、魔王様も人間が滅びると時空の歪みも、もっとひどくなるって言ってたじゃないか。』 私はそんなことを聞きながら、ふと思った。 (・・・・どこかで聞いたような会話だな。) どうやら子供達に私は見えていないようだ。 (・・・少し近づいてみるか。) 子供達とそう遠くない距離に近づくと あたりは荒野が広がった。 血のにおい、無数に散らばるヒトと魔族と天使の死体。 子供達は消えていた。 私はこの光景を知っている。 近くを見ると男が絶叫している。 神々しくも禍々しくも見える黒と白のローブを着込み金の角を両左右から生やし、誰か女を抱いている。 動かない、おびただしいほどの血を流す女を。 『なぜだ・・・・・なぜこんな事をする!こんなことが・・・・いったいいつまで続けるつもりだ!!!!』 男は叫ぶ。 『答えろ!―!!!』 男がそこまで言うと、私の周りの風景はまた変わった。 『どうしても、出て行くのか・・・。』 『ああ、もうここにもいれないしな。』 『考え直せ。魔王様に頼めばもっと他の方法もあるはずだ。』 よく見れば2人の男は最初の子供達だ。 口を開いたのは黒髪の男だ。 『いいのか?下手をすればもう魔界には戻れないんだぞ?』 『しつこいぞ。もう決めたことだ。それにヘマはしないさ。私は魔界の貴公子サタンだぞ。それに、これが私の使命だ。』 『そうか、そうだな!じゃあいってこい!絶対帰ってこいよ、サタン!!』 そういい、笑いあい、2人は別れた。 そこまで聞いて私はやっと理解した。 (そうか。これは、私の記憶―そして、私には使命が―) そこで、私の意識は飛んだ。 私が目を開けるとルルーが心配そうにこちらを見据えている。 辺りを見回すと、私のベッド、私の部屋が見える どうやら私の意識は元に戻ったようだ。 「ああ、気がつきましたのね。サタン様。」 「ん?・・・ああ、ルルーか?いったいどうした?」 「どうしたって・・・・私をデートに誘ってくれたと思った瞬間に突然倒れたんじゃあありませんか?」 「そうか、そうだったな・・・・」 私はまだもうろうとするアタマを何とか整理しようと少し歩いた。 「なあ、ルルー?」 「どうしました?」 「もし、私が消えたらお前はどうする??」 「そんなことさせませんわ。もし消えてしまったとしてもどこまでも追いかけますわ。」 ルルーはきっぱりと、にっこりとそういった。 (・・・・・少年時代に人間を滅ぼすなどといっていた私がな・・・・まさか人間を好きになるとは・・・・) 私は笑ってしまった。 するとルルーは少しむっとした顔で 「何がおかしいんですの?」 「いいや・・・お前らしい答えだ。」 私は笑った。ひとしきりに。 そうだ、私は使命を持って魔界を出たのだ。 もうあんな思いをするのはごめんだ。 守ろう。ヒトを。 この少女を。 それが、私の使命。 「ルルー」 「はい?」 「私はお前のそばにずっといるからな。」 「・・・・はい。」 |
リュウ
2004年12月24日(金) 21時05分04秒 公開 ■この作品の著作権はリュウさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 華車 荵 評価:100点 ■2004-12-26 03:18:32 ID:KBkoNExVYf. | |||||
うわぁ〜…サタン様切ないですっ!! もしや、これに続く物語が存在するのですか?リュウ様(様!? いやいや、そんな解り難くないですよv 何かこの小説の設定とかサタン様の過去とか凄く気になりますvv 次の小説も楽しみにしてますねv |
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総レス数 1 合計 100点 |
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