愛しくて

 すれ違い、すれ違い。
   ただ、何度も何度も。


 本当は  愛しくて溜まらないのに。




「………はぁ…。」

 自称魔界のプリンスことサタンは今日何度目かの盛大な溜息をついた。
 原因は、碧髪の髪の少女。

(決して、嫌いではないのだ……)

(ただ、応えてやれぬだけで…。)



「……ふぅ……。」

 広い広いお屋敷の台所で、今出来上がったばかりのクッキーを眺めながら、碧髪の少女、ルルーは溜息をついた。
 原因は深緑の髪の魔界の貴公子。

(わたしは、そばにいてもいいのかしら…?)

(…ただ、怖くて聞けないけれど…。)



 すれ違い、すれ違い。本当は、愛しくて溜まらないのに。
 それでも、素直になれなくて。どうしても、想いを伝えられない。
 自分が返事をしてやれば、それに引き替えとても大きな苦しみが彼女襲うことが目に見えているから。嫌という程分かるから。
 同じ場所にいても、どこか違う世界の人間なのだから。
 だから、どうしても返事ができない。

 もし、彼女が離れていくとしても受け止めると覚悟しているけれど、それすらも逃げたい自分がいて。


 苦しめたくない、苦しめたくない?本当は、自分が傷つくのを恐れてるだけで。
 ただ愛しいあの人から、無惨な言葉を聞きたくなくて。
 少しでも、彼の悲しみが癒えるならなんでもしたかった。
 だから、どうか側に置いて。例え叶わない恋でも、ずっと見守っていたいから。

 もし、このままの状態があの人に少しでも近いなら、どうかもう少しこのままで居させて。例え、それが苦しくてもいいから。



 すれ違い、すれ違い。どうしても、素直になれなくて。いつも一方通行ばかり。
 心はこんなに近いのに、二人の距離はこんなに遠い。
 側にいるみたいで、本当は遠くて。遠く思えて近い。まるで、「青い鳥」みたい。
もう少し、素直になれたなら。きっと思いは通じるはずなのに。幸せはいつも側にあるのに。
 
 ただ、相手のこと自分のこと 傷つくのを恐れて。
  ただ、臆病で動けないまま。愛しい貴方に嫌われたくないから。




 遠い空を見つめる。届きそうもない空は、どこか碧髪の少女に似ていて。
本当に愛しくて溜まらないのに。置いていかれるの、本当は恐れているのに。

「静かだな……。」

 彼女のいない部屋は、本当に静かで。
 
「こんなに静かだったんだな……。」


『ルルーがいつもそばにいますわ、サタン様!!』

 彼女の声がこれ以上ないくらい、鮮明に思い出される。明るい笑顔と共に…。
今すぐにも聞こえてきそうなのに、彼女はこの部屋には居なくて。



 カサカサと、包装紙の音がする。面白いくらいに、綺麗に包まれていく焼き菓子。
 昔はこんな事、できなかった。無力だった自分の手を見つめた。

「…きっと、サタン様に会わなかったらこんな事できなかったわ…。」

 会ってなかったら、今だって一人お屋敷の中。

「…すぐ、いきますから……。」


『いつも、すまないな…?感謝してるぞ。』

 あの人の微笑みが、今の私の力になってる。
今すぐにでも、走っていって微笑んで欲しかった。名前を呼んで貰いたかった。




 カチャ、と音をてて、二つカップが置かれる。
 テーブルの上には彼女の髪と同じ碧い花が清楚な花瓶に添えられていた。

(来ないかも、しれないのにな。)

 彼女が来るだなんて、決まってないのに。それでも、二人分のお茶の準備をする自分がいて。
 彼女と飲むお茶が、美味しくて楽しくて溜まらなくて。
 そんな自分に少し、笑えた。
 
 そして、いつまでも返事を返してやれない自分を、少し恨んだ。


 
 地面を走る、自分の足音が聞こえる。
 手には、先ほどラッピングされた焼き菓子がしっかりと抱かれていて。

(…速く!!もっと、速く!)

 早く彼の笑顔が見たくて。少しでも、微笑んで欲しくて。
 彼のために作った料理を、早く食べて、いつもみたいに微笑んで欲しくて。
 努力なんて、惜しまないから。

 そんな自分に、自然と微笑みがこぼれた。



 お互いのこと、本当は分かりすぎるくらい分かってるのに、
       その事にすら気付かない。
   ただ、相手を思いすぎるあまりに。
     ただ、相手が愛しくて仕方なくて。





「っサタン様!!!」

「おぉ、ルルーではないか!丁度良いところに来たな。今ちょうどお茶をいれたところなのだ!」

「あら、そうでしたの?あっ、丁度良いですわ!!私、焼き菓子を焼いてまいりましたの!」

「本当か!?ルルーの焼き菓子は美味しいからなぁ。」

「あら…嫌ですわ、サタン様ったら!!!」

「や、やめるのだルルー!!いいい、痛いのだー!!」


 

 どれだけ幸せな笑みを浮かべていても、
   どれだけ喜びに満ちていても。
 それでも何故か考える。
       『いつか離れたら。』

 そんな日、来るはずもないのに。
  お互い、もう離れることなんて出来ないのに。




「愛してますわ、サタン様!!」

「…なっ…あ、ありがとう…。」



 愛しい貴方の微笑む顔が、今は何よりも一番愛しい。
  いつまでも、ずっと一緒にいられますように。
    
2004年12月10日(金) 12時29分00秒 公開
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■作者からのメッセージ
ふへへ・・wちょっと、サタルルお題にうわき〜♪(コラコラコラ
 初、サタルル小説ー!!(ォィ
・・・短いッスね…?;;す、すいません!!
 ……。なんだか今ひとつ、納得いかないのですが…許してくださいませ…(涙
なんだか違うなぁ…と。てか、空のルルー姉さんは性格変わりすぎだっ!!(涙
 サタルルファンの方々サマ!!本当にごめんなさい!!
 いつか、再チャレンジ!!……するかもです…。(殴

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No.4  空  評価:0点  ■2004-12-29 15:13:56  ID:RnwPq7N.zV.
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コメント、ありがとうです〜〜!!

 シノw
そうです!!サタルル(のつもり)でッス〜!!(ォィ
いえいえ〜、なんだかなぁ〜って感じなので、微妙…(涙/ォィ
あははw最近は甘甘だったり、ハッピーエンドを目指してるのでッスww(笑
いえいえ…もう言葉の寄せ集めッスよ!!<詩
本当にいつもコメントありがとうッス〜!!

 リュウサマw
いえいえ!!リュウ様の文章も素敵ですよ!!
空の文章の方が劣ってるんッスよ☆
あぁ、ありがとうです〜!!!<ええデキ
これからも修行を積んで頑張るッス♪
リュウサマ
No.3  リュウ  評価:100点  ■2004-12-10 07:03:54  ID:tjAemY01kIY
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わたしのとは偉い違いだ・・・・見習わなければ。
おんなじ内容書こうと思うても何でこうも差がでるんでしょうね?
ええデキですよ。
No.2  華車 荵  評価:100点  ■2004-12-10 03:58:30  ID:BH4G.dZ0sJM
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にゃぁっ!?評価つけるのわすれてましたw(滅
あと言い忘れ…今回も詩が凄く良かったですvv
一体何処からあんな素敵な詩が…w(笑
素敵文章書ける君が羨ましいデスvv
No.1  華車 荵  評価:50点  ■2004-12-10 03:55:35  ID:BH4G.dZ0sJM
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おぉぉぉ!?クゥ的サタルル!!(笑
秤ス!?コレで納得行ってないとな!?そんな贅沢な…
あぁ…何か切ないですvv短い??そんな事無いってvv
なんだかんだ言ってラブラブな二人がものすごくいいですvv
やっぱりこの二人お似合いだわvv
総レス数 4  合計 250

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