安らぎの時間


 見上げ慣れた景色に、吐息が一つ。



「あまり溜息ばかり吐いていますと、幸せが逃げるって言いますわ」
 椅子に深く腰をかけ、茶色い天井をぼんやりと見上げているとふわりとした金色の声が鼓膜をくすぐる。
 指摘を受けて初めて気付いた。
「溜息、吐いてた?」
「ええ、それはもう深々と」
 背にもたれながら視線を向ける。視線の先には、声に似合った金糸の髪。
 グラスを手に振り返る。白い肌、青い瞳。
「お疲れですの? ラグナスさん」
「疲れてるように見えた?」
「だって先ほどから溜息ばかり」
「べつにそういうわけじゃないんだけど」
 コトンと、肘掛けにグラスの底をあてて、金色の魔女はふくれ面。
 手が触れるのも構わず受け取った彼は、言いながら一気に中身の液体を煽る。
「うわっ、苦っ」
「今日はちょっとオマケしておきましたわ」
 溜息ばかりなので。と付け加えられる。
 何か誤解されているのだろう。不満だったらしい低い声の不機嫌な目を向けられ、彼は苦く笑った。
「確かに……今日のスタミナドリンクは強烈だ」
「…………」
「ほんと、疲れてるとか何か不満があるわけじゃないんだよ、ウィッチ。あと、溜息吐いたからって幸せも逃げない」
「あら、どうしてですの?」
 納得していない顔で問うてくる。
 ラグナスは言い淀んでウィッチを見る。
 気怠いわけじゃない。退屈なわけじゃない。むしろその逆で、

――ただこの時間が、純粋に幸せだから。

 ラグナスはにっこりと笑う。
「内緒」
「まあ! 意地の悪い勇者様ですこと」
「理想と違っていて幻滅したかい?」
「……意地悪」
 白い頬が紅く色づくのがなんだか嬉しい。
「俺はこの世界の勇者じゃないからね」
 頬杖をついて目を細める。
「そうですわね、ラグナスさんはラグナスさんですわ」
 この世界では普通の、年頃の少年でいてもいい。そう教えてくれたのは君なんだ。
 なんて言ったら、どんな顔をするのだろう。
「ねぇ、ウィッチ」
「はい?」
 この安らぎの時間がずっと続けばいい。
 そう思った。
「ウィッチってさ、なんだか面白いよね」



 ぷんすか怒る彼女を宥めた後で、ちゃんと教えてあげようかな。
華車 荵
2014年09月27日(土) 03時11分51秒 公開
■この作品の著作権は華車 荵さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 Twitterで書いたものを添削して上げてみました。
 ウィッチ視点書きたくなったなぁ。

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No.2  華車 荵  評価:--点  ■2014-09-28 17:53  ID:xhjJGwmtVG.
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 ラグウィ可愛いですよ! ほんわか勇者とツンデレ魔女!!
 性質が正反対(聖と魔)であることと生まれた世界が違うからちょっと切ない部分もあったり大好きですv

 感想ありがとうございます! ウィッチ視点頑張ります!
No.1  りりりれり  評価:30点  ■2014-09-28 12:39  ID:TvdnLK10luM
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ラグウィってこんなに可愛かったんだ!知りませんでした。
ぜひぜひウィッチ視点を見たいです。
総レス数 2  合計 30

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