悪夢の対処法 |
バンっと大きな音がして、次に小さな衝撃がきた。 「…どうしたディーア?」 仕事で必要な資料を読まなければならず、ならば邪魔になるだろうし、少し眠たいから部屋で昼寝をすると言って隣の自室へ見送った愛しい少女が焦ったような顔でドアを叩きつけるように開け、こちらを見てほっとした後抱きついてきたのだった。 常ではありえない行動に目を見張り、だんだん強くなる腕の拘束に、とりあえず手に持っていた本を置いてから、落ち着くよう背中をポンポンと叩いてやればポツリと声をこぼした。 「…とても、とても怖い夢を見たんだ。」 こんなことなら昼寝をしなければ良かった。と、気持ちを紛らわせるように冗談っぽく、しかし震えた声で縋るディーアを、無言で優しく抱きしめた。少し落ち着いたのか、夢の内容を語り出す。 「…君だけがいない夢だった。」 「…そうか。」 声を優しくかける。今度は頭をなでた。 「最初は、とてもいい夢だったんだ…、アルルと、皆と、クリスマスのプレゼントを探して、選んで、買うんだ。で、君に似合いそうな、普段使い出来そうな物を選んで買おうとするの。」 「あぁ」 「でも、そこでね、みんなが不思議な顔をするんだ。そしてその後続く言葉は、『それは誰にあげるの?』って。」 「うん」 「それで、ディーシェにあげるんだと言うと誰?それ。ディーアの彼氏?って聞かれるの。冗談だと思って「何を言ってるの?ディーシェと僕はここに来てから、ずっと二人暮らしじゃないか」っていうとね」 ディーアの腕が強く己を抱きしめた。先程落ち着いた震えが戻ってきているようで抱きしめる手からかすかな振動を感じる。こちらからも抱きしめる力を少し強くしてここにいることを伝えれば、心の準備ができたようでもう一度口を開いた。 「『そっちこそ、何を言ってるの?君はここに来てからずっと1人で暮らしてるじゃないか。』っていうの。それを聞いてね、怖くなってね、夢の中の僕らの家に…いや、僕の家に行くとね、君の部屋は無くて、食器もすべて一人分。間取りからしても…とても君と暮らしてる気配はなかったよ。それで、その時ようやく、いつものペンダントを夢の僕がしてないことにも気がついた…。そこで目が覚めたんだ。」 そこまで伝えるといつの間にかじわりと浮かんでいた涙がディーアの目からこぼれ落ちた。 「…なるほどな。」 涙を拭ってやりながら強く抱きしめた。涙がたまらなく愛おしかった。 「いいことが聞けたな。…いかにお前が俺のことを好きなのかがよく伝わる。」 少し笑って額にキスを落とした。不思議そうに、けれど何を言っているのだとむっとした目を見て 「夢の中とはいえ、アルルとの買い物よりも俺を探すのを優先させた、更に俺と寝ていない時にそんな悪夢を見る…ということだからな、どれだけ大切にされていて、頼りにされているかわかる。」 笑って指摘すると察したようで顔が赤くなったディーアを見て持ち直したことが見て取れた。 「とはいえ、不安にさせて、悪かった。…今年のクリスマスは是が非でも休みを取って一緒に過ごすぞ。不安にならないようにデートといこう。あとは…そうだな、今から、ここにいる証明でもするか?」 額ではなく唇にキスをして、そこから少し下がって首筋にもキスを贈れば《証明》の内容を理解したのかカッと顔を赤くしたディーアは小さな声で 「君の仕事に支障が出ないなら…僕に、《証明》して。」 と、仕事の心配をしつつ、大人しくベッドに押し倒されたのだった。 |
宮池
2015年12月16日(水) 23時34分55秒 公開 ■この作品の著作権は宮池さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 華車荵 評価:50点 ■2015-12-17 10:21 ID:2SGYQVvrRsM | |||||
くっ!!ドッペルズ可愛い!! ディーアさんを優しく包み込んであげるディーシェさんめっちゃ格好良い!! イケメン!! ディーアさん、悪夢凄く怖かっただろうね( ;∀;)ディーシェさんポジティブでそこが良い。ディーアさんの不安をいとも簡単に浄化しちゃう変態水晶さん最高です← ディーアさんもあっさり流されちゃうしぃぃぃぃっ!!うんでももうこれは落ちるしかないよね!!ディーアさん可愛い!! これから存分に幸せを噛みしめたあとで 「あれ、ディーシェ……そういえばお仕事の資料は?」 「あ……。……まぁいい。明日やる」 ってなるのかなw |
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総レス数 1 合計 50点 |
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