運命かもしれない。 |
見渡す限り緑の起伏に小さな花の群れ。 群れを成さない木々が点々と立っている野原の奥には茶色い荒れた一郭。 片手の平をヒサシにして、彼女は丘から遠くの荒れ地を眺めていた。 赤みの強い茶色の瞳には好奇心の色。近くで地面をつっついていた白い鳥が羽ばたいても微動だにしない。 「……面白いものなんぞ何も無いだろう」 沈黙に耐えられなかったらしい。彼が溜息と共に声を掛ける。 と、彼女はようやく腕を下ろして振り返った。 「あそこにあったんだろう? 君の遊園地」 「今は何も無い」 指をさした方角には土の地面が広がっているだけ。瓦礫すら残っていないそこを一瞥し、ドッペルシェゾは眉を寄せてドッペルアルルを見る。 「あんな所、長々と眺めて楽しいか?」 「ん〜、よくわからないけど、あそこにあったのかと思うと嬉しいような残念なような……そんな気持ちになるんだ」 「何だそれは」 「僕もわくぷよランド行ってみたかった」 願っても仕方の無いこと。 「……もう無いし、作ることもできんぞ」 「知ってる。だからずっと見ていたんだ。何か見えないかなって」 もう一度茶色の地面に目を向けるドッペルアルル。 「いくら俺達でも過去を見る事はできん。そもそも俺はあそこにそんな強い想いを残していない」 「…………」 「見えたとしても蜃気楼くらいだろう」 「いや、蜃気楼すら見えないよ。そんなに暑くもないし」 「…………」 肩を竦めて腰を下ろす彼。ドッペルアルルも合わせるように地べたに座る。 「残念だなぁ」 「随分食い下がる」 「残念だと言わずには居られないよ」 「何故」 空を見上げた彼女を横目に頬杖を突く。 「この辺りなんだ。選択を間違えた」 「何の話だ」 話が見えず訊ねると、琥珀の瞳がこちらへと向けられた。 少しだけ、嬉しそうに。 「同じ頃だと思う。僕、ここに居たんだ。ここの下。古い地下道」 ドッペルシェゾは、思わずドッペルアルルを凝視した。 |
華車 荵
2015年08月15日(土) 04時20分28秒 公開 ■この作品の著作権は華車 荵さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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