紅い月2
 「あ、シェゾー。珍しいね、その格好。懐かしいな。白服は白服でもこれはすっごい前に見ただけだから…」
煩い煩い、騒がしい。黙れ、俺は、俺は…。






 「…アレイアード・スペシャル」
「うわあ!……危ないじゃないか、いきなり!なんでよ!」
「…お前はよく覚えておいた方がいい、所詮お前は、俺の…獲物だ」
「何言っているんだよ! 今更! なんで怒ってるの?」
ああ、そうだ、そう。今更だ。今更…それだけコイツに溺れて、塗れていて、そういうことだ。
「次に会った時は、容赦なく、殺すぞ」
「え、待って、なんで、なんでよシェゾ! いきなり急にどうしたんだよシェゾぉ! ねえちょっと待ってって。いやだちょっと!」








 これでいい。もうこれでいいはずなのだ。違う。このままでは、俺もアルルも壊れてしまうだけだ。…そもそもだ、コイツと関わってから、人と慣れ合う時間が極端に増えた。しかし、馴れ合いの時間が多ければ多いほどに、それこそ闇の魔導士なんかではなくなる。違う、違う。それは自分の勝手な妄想であることに気がつきながら、自分を納得させるために言葉を紡いだ。ああ、もう黙れ、黙れ。休憩時間が長すぎたのだ、ただそれだけなのだ。


 もう疲れたのだ、これが手段だか目的なんだか原因なのか分からないまま獲物を追いかけ続けるのは。いや、違う、違う!違う。そうではないのは分かっている。ただのこれが甘えであることに。ただの感情論であることに。しかしそれを認めた瞬間に、俺は俺を保てないまま壊れていく気がしていた。


 そうだ、結局は何を今更、なのだ。何を今更、闇の魔導士としての自覚を忘れろというのだ? 何を今更、これまで俺は人に忌み嫌われて生きてきたのだ。内面こそ隠せずに生きてきたのだ。何を今更、好かれようとなど、愛されようとだの、バカげた道化師になろうとしているのだ。意味が分からない。何を今更。好かれよう?愛されよう?一体何処からそんな言葉が漏れだすのだ。俺は闇の魔導士、お前はその獲物だ。何処に愛しいなどという感情が何処に生まれたというのだ。


 それを自分が心の奥底で感じていることに気づいていながら。


 ああもう断ち切ってしまえばいいのだ。お前が離れるか、お前が俺に殺されるか。どちらにしても、俺はもうお前に会うことなどない。ないのだ。あと一つの解答は、自分の偽の望みを裏切るものだったから、無視をした。


 ああ、嫌いだ。この感覚は嫌いだ。いやだ、嫌だ。寝床に転がる。痛い、胸がまるで剣にでも突き刺されたように痛い。自分の最強の技を放った時に感じた痛みによく似ている。昔、何年も昔。初めて魔力を奪い取った時に感じた絶望感と胸の痛みにも、とてもよく。
「何故、こうなる…いっそのことひと思いに貫いてくれればよいものを」
呟き、頭で考えるうちに、眠気が襲ってくる。胸の痛みと共に。






「シェゾくん、んふふふふふふふ、貴方にもようやく咲いたようですね」

「ルーンロード、貴様、何しに来た」

「んふふふふふふ、可愛い我が後継者の闇の華を見に来たのですよ。ほら、よく見えるでしょう。貴方の、漆黒の、血に塗れた華が」

「…黙れ! 早く帰れ。目障りだ、さっさと失せろ! 俺は別に好きでなったわけでは…」

「でも、いつまでもそれにしがみつくでしょう? 永遠に? そうやって自分への言い訳をして、本当に惨め、ですねえ。神をも汚す華やかなるもの?」

「黙れ、黙れ、早く消えろと言っているだろう。消えろ、消えろ」

「それは無理な願いですねえ。だってこれは貴方の夢の中ですから。んふふふふふふふ、そう言えば、願いと言えば、キミの願いは…」

「それ以上何も言うな!消えろと言ってるだろう。もうどっかに行ってくれよ!」

「んふふふふふふふふ、この女を、こうして引き裂いて、壊して、ぐちゃぐちゃに…」

アルルがそこに…

「それ以上はもうやめろ! 止めろ! 止めてくれ! もう、もう!…」

「この溢れ出んばかりの魔力を限界まで、貪り続けるんですか? このキミとは、正反対の、光の魔導を。光を食いつぶすと。じゃあさっさとすればいいではないですか。貴方にはその能力が眠っているというのに。こうやって…練習台ならここにたくさん…」

「うわああああああああああああああああ!!!! 消えろ…消えろお!、消えろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」










 胸の痛みは最高潮でそれはもう死んでもおかしくないような痛みだった。ガンガンと鳴る頭と、目に焼き付いているアルルの鮮血。

 「うぐっ…はあ、はぁ、……ぐ、は、ああ、はぁ、はぁ……」

 これは完璧に精神的にくる。なぜこんな時にこんな夢が。尋常ではない吐き気に悶えながら、部屋を見渡す。頬に雫が付いている。どうやら泣いたらしい。もうなんだ、何だというのだ。いったい、何だというのだ。

 そして、そんな中、家のチャイムが鳴ったのである。

                         続く





りりりれり
2014年10月18日(土) 00時17分06秒 公開
■この作品の著作権はりりりれりさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ひたすらにグロ病み系ダークヘビーさんが出来上がりました。暫く放置していたくせに続きがこれ、という。シェゾさんがいろいろと病んでたりおかしいので、カッコウィグィィ御望みな方には多分不向き。
でもドッペルカッコウィグィィ好きならっ!
私の中ではディーシェ常識イケメンなので…。
あ、でもシェゾさんのほうが好きなんですよ…。意味わからんですね。それでは続きをお楽しみに(?)

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No.2  りりりれり  評価:--点  ■2014-10-19 21:46  ID:TvdnLK10luM
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 評価ありがとうございます。頑張ります!
病みの魔導士!それです、それ!
No.1  華車 荵  評価:30点  ■2014-10-18 02:37  ID:93R27tvt5go
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 続ききたー!!
 お疲れ様ですw 病みの魔導師シェゾ・ウィグィィですねw← ノイズだらけで自分すら見えてないのか……。ちょっと落ち着けwと言いたくなりますね。ルーンロードに付け入る隙を与えちゃってまぁ……。
 
 ディーシェさんは常識的イケメン、分かります。きっとシェゾさんとは格が違うんだと思います。←
 あ、でも私もシェゾさん好きですよ!
総レス数 2  合計 30

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