―天国からの想い |
シェゾ。笑って…? ―天国からの想い シェゾ、君は今日も来てくれた。 「お前がいなくなってから何年経ったんだろうな」 10年じゃない? シェゾってばボケが進行してるんじゃないの? 君は構わず話し続ける。 あ…。 ボクの声は君に届かない。 かれこれ10年にもなるのに、 君に声が届かない 君と会話ができない 君の話を聞くことしかできない この感覚にはなれない。 だけど、君がなにか話すならボクはそれを聞いてるから。 「今日は今までを振り返ってみるか」 なんで? あ、10年だからか 「結婚したのはお前が二十だったよな。」 そうそう。 「ずっと…一緒に入れると思ったのにな」 ボクだって、君と一緒にいたいよ! だけど、君には生きていて欲しいから。 笑って欲しいから。 なのに、君は笑わない。 ボクの前でも笑わない。 今も無表情。 泣いてもくれないし、怒ってもくれない。 感情が抜け落ちたような。 そんな君、嫌だよ… ボクに嫌味に笑ってた君は? 何かとボクに怒ってた君は? ボクがいなくなった時、泣いてくれていた君は…? 僕は不機嫌になって、風を起こしていた。 「うわっ…風強いな」 そりゃ、ボクが起こしてますから! シェゾが笑ってくれたらやめるよ〜 って、聞こえないんだった。 「まあいいか。今日はもう帰る」 ええ!?ちょっと待ってよ!? ボク相当もったいないことしたんじゃないの!? 行って欲しくない、そういう想いを込めて風を吹き荒らした。 「手紙が飛んで行きそうだ…あ、中にあれが入っているから大丈夫か」 あれって何!? 「今日の手紙は皮肉にも特別だ。」 特別!? 機嫌を良くしたボクは風を一瞬弱めたが、シェゾが行ってしまいそうな気がしてまた強めた。 「またな、」 愛してる。 君はそう言ってくれた。 ボクってば、風でかき消しちゃったよ… でも、なんとなくわかったんだ。 君はこういう時めんどくさがってそれで済ませてたから。 そのあと、笑ってくれたから… 「…ははっ」 君は、笑った。 とても久しぶりに見た。 そして、一筋の涙が君の頬をつたった。 感情を出してくれた。 それがとても嬉しかった。 もう君が行っても大丈夫。 笑ってくれた、それだけでとても安心した。 あ、手紙忘れてた… 「今日で10年…だよな? 皮肉なことに、今日はお前との結婚記念日だ。 こんな日に限って…運のないやつだな。」 結婚記念日…忘れてた。 ボクも案外ボケているのかもしれない。 「というわけで、今日はプレゼントがある。 左手の薬指、まだなにもついてないはずだからな。 忘れてて悪かった。」 手紙には、指輪が入っていた。 綺麗な銀色。 アクセントに、サファイア。 まるで君みたい。 ―大事に左手にはめとくね。 「シェゾ、どうしたのだ。その指輪。」 「ちょっと…な」 俺の指には、白銀にアクアマリン。 アルルの色だ。 二人の左薬指にはそれぞれの蒼が光る。 〜end〜 |
みえ
2013年04月02日(火) 20時50分14秒 公開 ■この作品の著作権はみえさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
感想記事の投稿は現在ありません。 |
E-Mail(任意) | |
メッセージ | |
評価(必須) | 削除用パス(必須) Cookie |