―愛しいお前への手紙。 |
アルル、お前はどこにいるんだ…? ―愛しいお前への手紙 お前がいなくなってから、何年経ったのだろうか。 俺は今、255歳。 お前がいなくなったのは245の時だったかな… そうか、ちょうど10年か… お前に惚れたのはいつだったかな。 180ぐらいだったか? あの時はお前もまだ若くって、俺はいつも幸せで… あの時の知人はサタンぐらいになってしまった。 結婚したのはいつだったかな? そうだ、お前の二十のプレゼントと称してプロポーズしたんだっけな。 いつも通り、「お前が欲しい!」 と言ったら、いつも通り「シェゾのヘンタイ!」 と言われてしまったから、仕方なく最後まで言ったんだっけな お前の鈍さにはいつもいつも驚かされたな… お前はいつまでも若々しかったな。 俺のような不気味な若々しさではなく、天使のように輝く若々しさ。 いつも元気だったから、お前がいなくなることなんて想像できなかった。 いつも笑っていたから。 いつも俺を照らしてくれたから… だけど、お前はいなくなった。 「ありがとう」という言葉を残して。 「シェゾ、今までありがとう」 「おい!やめろよ!これからも生きるんだろ?笑うんだろ?」 「ボクはもういいよ…君といれて幸せだった。」 「ふざけるなよ!俺は…俺は…」 「シェゾ…ありがとう。バイバイ」 「おい!アルル!死ぬな!死んじゃダメだ!」 「ダメだ…」 だが、アルルは死んだ。 俺は泣いた。ものすごい泣いた。 プライドなんか知るか。 蘇生呪文も唱えた。 だけど、いくら唱えてもアルルは生き返らなかった。 「ははは…」 俺からこぼれたのは、乾いた笑み。 自嘲気味の笑みだった。 独りきり。 闇の魔導師である俺にふさわしい。 俺は、人と馴れ合うべきではなかった。 いずれ、誰もが俺を置いていってしまうから。 お前がいなくなって、今日で10年。 毎日渡す、愛しいお前への手紙。 戻ってきてくれよ… なあ、どこにいるんだ? 可愛く笑うお前はどこにいる? 楽しげに話すお前はどこにいる? 俺を照らしてくれたお前はどこにいる? わかってるさ、わかってる。そんなこと。 お前が、もう俺の手の届かない所にいることぐらい。 不老不死の俺にとって、行けない場所にいることぐらい。 だけど、認めたくない。 今日も持ってきた。 ―皮肉にもいつもより特別な、愛しいお前への手紙。 「―――――。」 愛してる。と発した声は、「わかってる」と言わんばかりの風でかき消された。 俺の顔からこぼれたのは、久しぶりの笑顔と、一筋の涙だった。 お前の墓へ落ちる。 俺は墓を去っていった。 |
みえ
2013年03月21日(木) 20時25分04秒 公開 ■この作品の著作権はみえさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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