ボクが死んだら君は |
バスが揺れる。 ふと、後ろを向くと彼が、 シェゾがいる。 ボクの存在にも気付かずに、窓を見つめている…。 ボクの気持ちに、気付かないの? やっぱりもうこんな世界、捨ててやる…、 もう死んでやる…! バスが、停まる音がした…… 「……っ!」 今のは…夢? カーテンの隙間から光が差していることが、朝になったことを示している。 「……っっ…」 夢の中とはいえ、自分はなんてことを考えて…。 衝動に逆らわずに、家を飛び出した。 「はあ、はあ…、多分ここに…?」 息を荒らげ、草原に駆け込んだ。 先程彼の住居である洞窟を訪ねたが彼はいなかったので、魔力が少しずつ涌き出るこの草原にいると踏んだのだ。 その予想は的中し、彼の無愛想な声が聞こえてきた。 「どうした、こんなところに来るのに走る必要なんてあんのか」 彼…シェゾはボクを見つけるやいなやすぐ立ち上がろうとしてきた。 「いいよ、そのままで。話したいだけだし」 「何言ってんだ、俺はおまえがほしいんだっ!」 「…そのまんますぎ」 つんっと彼の鼻をつつく。その動きがぎこちなかったことは、彼に伝わっていた…… 「…何かあったんだな、話してみろ…」 「!…うん…」 ボクはシェゾに全てを話した、漠然と「死にたい」と夢の中で思っていたこと、夢の中にシェゾがいたこと、 …そして、そのままバスが停まり、その夢が一瞬に終わったこと・・・。 「…そうか…。」 「…ボクはそんなつもりないんだけど、どういうことなのかな?」 気が付くと、涙が目いっぱいにたまっていた…瞬きをすると、涙がこぼれおちる。 罪悪感なのか、悲壮感なのか…何が何だかわからない…。 「……………か?」 「…何」 「お前にその気が無いのは本当か?」 それは、本当。なぜ、それを疑うの? 「うん」 「本当、だな」 「…本当だよっ!」 「…………………」 「…………………」 そこまで言われ、すこし自分を疑ってしまう。しかし、 ……ボクに、本当に、そんな気はない…。 沈黙が、辺りを支配する…………。 不思議と、ボクの口が先に言葉を紡ぐ。 「ボクが、もし死んじゃったら……シェゾはどう思う?」 心のどこかで、考えていた疑問なのだろう。 「どう……って、どういうことだ?」 「悲しい?」 また、辺りを静寂が包み込む…… 「……許さん」 「えっ………?」 「……おまえをいただくまえに、死ぬことは許さん」 全く……。 でも、なぜ? …彼の表情が暗く、辺りを睨んでいるように見える。 「じゃあ、……もしもだよ?」 「……もしも、……君がボクの魔力を奪った後に、…ボクが死んでしまったら?」 彼がボクから蒼い眼をそらす。 一呼吸おき、もう一度。 「…………悲しい?」 また、空間が固まった。 沈黙に耐えきれず、そっぽを向いている彼の瞳をのぞきこんだ。 ……眼が、潤んでる? 「………悲しいんだ〜〜」 「っっっっ!……うるせえっっ!」 あいかわらず素直じゃないな…… まあ、いい。今のが答えのようなものだ。 でも、ボクはどうしてあんな夢を………? ……もう、どうでもいっか、そんなこと。 どんな夢をみようと、それは夢でしかない。 それに、ここにはボクを必要としてくれてる人がいる。 あの夢は、夢でしかない……。 「……ねえ、シェゾ。」 「…なんだ?」 ボクはずっと…ここにいる。 「大好きだよ」 |
スズラン
2013年01月19日(土) 14時37分44秒 公開 ■この作品の著作権はスズランさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 舞風 評価:--点 ■2013-11-02 16:34 ID:BQAkycmOfIM | |||||
シェアルううぅ!(°д°)↑↑ | |||||
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