幸せ U  〜予兆〜
少女は激怒しt呆れた。

心地よい風が吹き抜け、昼寝でもできそうである。
この馬鹿でかくおどろおどろしい城さえなければ。
ただし、今はこんなことをしている暇はない。

この地に再び、巨大化した太陽が現れたのだから。

城の中に入り込み、相手のいるであろう部屋の扉を乱暴に開け放ち、叫ぶ。

「サタン!話は見たよ!どうせまたキミがやったんでしょ!早くもとに戻して!」

「………」

「サタン?聞いてる?」

ピクリとも動かないその背中。まさか死んでるんじゃないかという不安を少し持ちつつ、その後姿にそっと近づく。

「ねえサタン?とりあえずじゅげむは無しにしてあげるからさ。」

アルルがサタンの背中に触れた瞬間。



「……え?」

身動きが取れなくなる。魔法で拘束されたようだ。

魔王が立ち上がる。

「…すまないな。アルル…」

少女の額に手をかざすと、彼女を光が包み込んだ。

「さあ、アルル。こっちへおいで。これからのことを話し合おうじゃないか。」

少女は光を失った目で、魔王の元へ歩み寄る。

「うん……、幸せになろうね、ボクの愛しているサタン。」

目を細め、言う。

「ああ。幸せにしてやる。世界一の、な。」



少女はすでに、あのときの少女、『アルル・ナジャ』ではなくなっていた。
少女の心は、魔王の操り人形と化していた。
**********************************************************************
カランカラン…

ウイッチの店のドアのベルが鳴る。

「いらっしゃいませ…、あら、シェゾさんとラグナスさん。お二人一緒なんて珍しいですね。」

「ああ。光と闇両方の敵が出てくるダンジョンだったんでな。ちょうどよかったんだ。」

「うん。結構難しいダンジョンで、手に入れたアイテムをウイッチの店で買い取ってもらおうかなって思ったんだけど…」

とたん、目が輝いた人物が一人。
「そうなんですのっ!?さあさあ、品物をこちらへ!」


「「………」」

「な、なんなんですの、二人して。」

「いや、その実は…」


ごにょごにょと蚊の鳴くような声がしたと思いきや。




「…クリアできなかったっですって…?」

怒りに震える魔女。

「いや、だから、超難しいダンジョンで、命からがら帰ってきたんだってばっ!」

続けてもう一人。
「そうだそうだ!マジでこいつなんて魔物の腹ん中入って俺が闇の剣でそいつの腹切り裂いて出さなかったらこいつ今頃消化されてたぞ!?」

ぜえはあと息切れしながらこいつ、と哀れな勇者を指差す。

「はい?!そんなもの一回死んで戦闘前のデータをロードすればいいでしょう!そもそも魔導水晶は持っていきませんでしたの?それにラグナスさんだって腹の中から光の剣で斬って脱出ということだってできたはず!あなたそれでも勇者ですの?!」

「おいなんだその「ロード」とやらは!」

「確かに光の剣を使えばよかったな!」

「突っ込むのはそこじゃねえだろこの馬鹿!」

心にぐさぐさ突き刺さるセリフをマシンガントークでいいながらほうきを掲げて二人を追いかけている魔女とおかしい突っ込みを入れつつ逃げている二人にストップがかかった。
ちょいちょいとウイッチの服のすそを何者かが引っ張る。

「ももも、お取り込み中悪いけど、これウイッチさんあての速達なの、それじゃあ、渡したから帰るの〜」

カランカラン…静けさを能天気な音が破った。

「速達ぅ?いったいなんですの、こんな時……」

ウイッチが固まる。肩が震え始める。
明らかに様子のおかしいウイッチに、覗き込んだ二人も凍りつく。
たっぷり3分は沈黙の時間が流れただろう。

「こ、これは……どっちのなんだ?」

「あ、あのロリコン…」

「名前も書いていませんね…」

ウイッチの手からはらりと手紙が落ちる。
速達の中身は。


『このたび結婚することになりました
 急ですが式を挙げることになったので来て下さい   
  日時 3日後大安  PM8;00 披露宴  サタン様より
 
 PSこの追伸が手紙に書かれていたものは準備のため明日集合』




結婚式の招待状…
アクア
2012年09月09日(日) 22時11分42秒 公開
■この作品の著作権はアクアさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
…謝ります。

前半すいませんでしたっ!

誤字、脱字などあったら気づいたときに修正します。
まだまだ続きますが、読める気力のある方のみ次をお待ちください…(え

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