冬の夜にココアは溶けて


その日は、寒かった。
山岳地帯は吹雪いており、平地も雪が降っていた。
こんな日には部屋で暖かくするのが良いだろう。
しかしそんなコトお構いナシに山道を歩いているものがいた。
名はラグナス。ラグナス・ビシャシ。
かなり有名な、名の知れた勇者だった。
「今日は本当についていないな、ハハハ。」
その声は静かな雪に虚しく溶けていった。

勇者は一般的に『依頼』と呼ばれるものをこなす。
モンスター退治から尾行と大小さまざま。
勇者がたとえ異世界のものでも同じだ。
ラグナスも、その一人。
今回はたいして難しくないダンジョンの攻略だった。
最近見つかったばかりの洞窟。依頼者は小さな町の町長。
中の作りは簡単で、モンスターなど数えるほどしかいない。
しかし、吹雪は止まなかった。
「これじゃ、帰れそうにないな。」
勇者は一人呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ったく、エラい吹雪ですわね、もう。」
もう、歩きにくいったらありゃしませんわ。
なんなんですの、この雪は!!
いいかげんにしてくださいまし!
・・・まぁそんなコトを言ってもしょうがないのですが。
こんな日はあま〜いココアが飲みたいですわ・・・
おばあちゃんの研究所にあるといいのですけど。
あぁ、そうでしたわ。
私、ウィッチは今おばあちゃんの研究所に向かっているのですね。
何日か前、アルルさんから頼まれた材料を探していたら―
『ああ、あったあった。』
とかなんとか言って私の薬草を横取りしたんですのよ!
あのヘンタイ魔導師、帰ったらタダじゃおきませんわ!
縛り上げてモルモット〔実験体〕に・・・・ウフフ・・・・

ガクンッ

「きゃあ!?」
いきなり地面がグラついて、私はしりもちをつきました。
「いててだよぉ〜」
し、しかも抜けない!!だれか〜!!!
「大丈夫?」
私の体がフワリと浮いて、立ち上がった。
目の前にはキレイな顔立ちのラグナスさん。
「こ、これくらい大丈夫ですわ。」
そっぽを向く私。
スナオに言いたいのに、言えない、言いたかった『ありがとう』・・・。
「ケガ、してない?」
あぁもう、放って置いてくださらない?
キンチョーして、真っ赤になる私。こんなの・・・・私じゃないですわ・・・
「別になんともありませんわ。」
『好きなんだ、この人のこと。・・・ライバル、なんだけど。』
前にアルルさんが笑顔で話してくれた人のこと。
そんな感情が私にもあった。
それが―
「よかった。・・・ところでどうしたの?こんなところで。」
この人―
「おばあちゃんの研究所に、薬草をとりにきたんですの。」
「―アルルさんのクスリのために。」
言いたくなかったことまで付け足した。
「アルル。病気なのか?」
眼のいろが変わった。
この人は、この人が好きなのはきっと・・・・
「いいえ。たしか予防用とダンジョン用です。」
ニッコリとわらおうとして、
失敗。
うつむいて下を向く。
吹雪は止んでいた。雪にしずくが落ちる。
「ウィッチ・・・」


「!?」
ハッと気がついて目を開ける。
ラグナスさんはいなかった。
かわりに、私の横に彼はいた。
抱きしめれて、いた。
「大丈夫・・・・?」
まるで子に問いかけるように聞く。
「はい・・だいじょう・・・ぶです。」
涙を拭う。
聞かなかった。私が泣いたのはどうしてか。
「ココアご馳走します。」
彼が離れる。
「研究所はすぐそこですから。」
やっと、笑えた。

コトン。
「どうぞ」
比較的小さなテーブルにココアを置く。
「ありがとう。」
彼が微笑む。
幸せってこういうことを言うのでしょうか、おばあちゃん。
のみおわって、かたずけて。
夕方になって、吹雪いてきた。
ソファに座っている彼は、
「・・・」
たしか呪いだったかしら。
小さな少年になって、すやすやと寝ていた。
毛布をとってきて、掛けてあげる。
「ウィッチ。」
「なんです・・・・」
最後の言葉を飲み込む。
寝言・・・・ですわね。
隣に座って、彼をだきしめる。
「今だけ」
「こうさせてください・・・・・・・」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日は寒かった。
吹雪は一向に止まず、勢いを増していった。
こんな日は甘い飲み物が飲みたい。


たとえば。
とろけるような、ココアなんか・・・・ね。



end



桜流
2012年02月14日(火) 21時34分35秒 公開
■この作品の著作権は桜流さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
管理人さんのブログにあったネタをつかわせていただきました〜♪
初めてのラグウィです・・・!
みてくださって、ありがとうございました!

この作品の感想をお寄せください。
No.4  Riz  評価:200点  ■2013-04-14 01:16  ID:/OPFohzmWlY
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はじめまして、ラグウィ小説、hshsしながら読ませていただきました(^^)
私得のラグウィだったので、すごく嬉しかったです! ラグウィ小説は数少ないですが、今まで見た小説の中で、この小説が一番萌えました////
No.3  華車 荵  評価:150点  ■2012-02-18 03:28  ID:mZKFQCuMneg
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 ツンデレウィッチとちっちゃいラグナスに萌えるスレはここですか?|д゚)ドキドキ(違
 感想遅くなってごめんなさい。ネタ使ってくれてありがとう!!まさかラグウィで来るとは思ってなかったのでビックリでしたwwあの妄想からよくこんな物語を構築できたな〜と感心感激!

 えーっと何から書けば良いのか……
 綺麗なラグナス見てええええぇぇぇぇぇぇ!!o( ゚Д゚)o
 恥ずかしさのあまりにつっけんどんな態度とっちゃうウィッチかわええのぅ(*´д`*)
 ちょ、ラグそこ代わr(ry
 永遠にやってろ私が許す(・∀・)
 とかとか読みながらいろいろ考えてました←

 好きでもない相手を抱きしめるなんて普通できませんよねvウィッチ、気付いて〜〜〜〜><。
 ラグナスはウィッチの気持ちに気付いてるのかな。知らないけど、抱きしめたくなったのかな。いろいろ考えられてドキドキしますね!彼の心情がちょっと知りたいです。

 さりげなくシェアルも入ってたり、ラグナスがしっかり子供化してくれたり、楽しませていただきました。

 最後の『今日は寒かった。〜』の科白はラグナス視点なのかウィッチ視点なのか。とにもかくにも、二人にとってお互いが寒い日のココアみたいな『温もり』であり『命の源』なんだろうな〜と捉えましたw
(極寒の地では高カロリーな{甘い}ものがないと死んじゃうもんねw)
No.2  銀杏  評価:--点  ■2012-02-17 15:36  ID:S1sAw2na0VY
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おぉ!桜流のラグウィ!!
ウィッチの心情、切ないですね…。「ウィッチらしくて(やはりツンデレ!?)それでいいっ」って言ってあげたいですw
ラグナスは…やっぱ純粋にかっこいいネv優しいネvウィッチのこともちゃんとわかってるんだろうなぁ…。
これは幸せな気分になれますた☆
No.1  瑠菜  評価:--点  ■2012-02-15 16:03  ID:3Pj9WlKq1Zo
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ラグウィもいいなぁ…
ツンデレ(っていうのかな?)ウイッチさんも可愛いです〜
総レス数 4  合計 350

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