悪夢


―また、あの夢だ。

とてつもなく大きな闇につぶされかけている俺。
闇は全てを飲み込んで消していく。
俺は一人残され見えない闇におびえている―。
しかしそれを、俺は『見ていた』。
体感するのではなく、夢の中の俺を『見ている』のだ。
俺はそいつに声をかけてやることも、闇を倒すこともできない。
なんて惨めなのだろうか。
そんな夢を俺は最近良く見るようになった。
かといって、夢の影響はなく、起きると忘れていることが多い。
それでも、また夢をみるとおもいだしてしまう。
『―またあの夢だ』と。


俺が闇の魔導師になってから何年経っただろうか。
『悪の華』
かつての魔導師がいったコトバだ。
それは俺であり、その魔導師でもあった。
魔導師は枯れ、俺が咲いた。

かつての俺はそのことを受け入れなかった。
『誰が好き好んで悪者になりたがるかよ』
いま思い返すと、それはただの反抗ではなかったのか。
そう思った。
―いや、それは違う。
『アノユメハカツテノオレデハナイノカ』
そう、『カツテノオレ』
あの夢はかつての俺だった。

今は闇の魔導師として誇りをもっている。
けれどあのときの俺は―
闇の魔導師になることを、拒んでいたのではない。
―そう、怖かったのだ。
自分が闇に染まってしまうことが。
自分が闇として生きていくことが。

さぁ、どうしようか。
道は開けた。
自分の前にある壁をのりこえるだと?
そんなまねしない。
そんな壁ぶち壊してやる。
『悪の華を咲かせましょう』
ああ、先代よ。そうしてやろうじゃないか。
立派に『アクノハナ』とかいうやつを咲かしてやるよ。
夢のとおりなんかにはさせない。
させるものか。
もっともあの夢は予知夢でもなんでもないとは思うが。


「夢ぐらいでこんなに悩むなんてな。」
笑えてくる。
この俺がこんなに悩むとはな。
―しかしあの夢にはそんなチカラがあった。

「いわゆる―・・・・・」
悪夢ってヤツだな―・・・
最後はかき消された。
アイツの手によって。
「やっほー!シェゾぉーー!あそびにきたよぉー!」
騒音に近い声でアイツが叫ぶ。
「うるさいっ!待ってろ、いま開けてやるから!」
「まだ・・・ねて・?・・」
「オマエが・・・・・・」
「・・・・」
「・・」
「」

もうあの夢はアタマから消え去った。
でももう思い出すことはないだろう。
所詮ただの・・・・・・・・・

―悪夢―

桜流
2012年01月16日(月) 23時15分37秒 公開
■この作品の著作権は桜流さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
できました♪
今月中にできるか心配だったんですがww
今回はシェゾの話です。『闇の魔導師』としての誇りとか、そーゆう・・・・・・ね!(おい)読んでくださってありがとうございます!コメント下さるとうれしいです☆
※小説の言葉などは角川版魔道物語寄りです

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No.2  華車 荵  評価:100点  ■2012-02-27 05:25  ID:mZKFQCuMneg
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 おおー、公式っぽい!!
 運命を受け入れてるシェゾって感じですね。じっくり読んでいろいろ考えてました。
 私的見解で申し訳ないのですが、シェゾが悪夢を見たのにはアルルが関係しているのかな、と思いました。光は、その存在だけで闇を濃く浮かび上がらせ、同時に払い除けるもの。シェゾにとってアルルは、運命を思い出させると同時に忘れさせてくれる(一時的な安らぎをくれる)存在なのかな、と。
 そしていつかは乗り越えなければならないもの?
 それが良い方向へか悪い方向へか、いずれにせよ二人の関係は変わっていくだろう事を予感してるのかもしれませんね。
 一魔導キャラファンとしては、良い方向へ行って欲しいものですが。

 『闇』そのものが『悪』というわけではない。という思いも勿論ありますが、闇=悪とする世界的(社会的?)理を破壊する『悪』というのもアリだと思います。
(『壁をぶち壊す』のくだりはこういう事であって欲しいな、と密かに)

 悪意とは飽くまで人が作りだした物。光は闇を消さないし、闇も光を消さない。
 彼は彼なりの『悪』で、歪められた理に縛られまくった先代に一泡吹かせてやればいいのだ、と思いますww
No.1  銀杏  評価:--点  ■2012-01-18 02:00  ID:S1sAw2na0VY
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おぉ…!悪夢…!!
この悪夢を見ておびえず、立ち向かっていくところが流石シェゾさんですね!


総レス数 2  合計 100

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