運命 

やわらかい日の光のなかで『アイツ』は笑った。

―いや微笑んだ、というほうが正しいだろう。
いつも俺が狙っていた『アルル・ナジャ』
ああ。思い出した。『アイツ』じゃない。
『アルル』だ。

どうして忘れていたんだろう。いつも名前を呼んでいたのにな。
アルルは俺の腕の中にいた。ヒーリングなんかじゃ足りない。
傷だらけで。
俺は泣いていた。声を押し殺して、静かに。
「キミらしく、ないよ。」
かすれた声でアルルが言う。
俺の涙がアルルの服に落ちる。
このとき本来ならありえないことが起こっていた。
俺が、闇の魔導師が、勝ってしまった。
『光に闇が勝つ』
身切れもない事実だった。

そして俺の涙がが落ちる。
アルルは微笑んでいた。
その笑顔がきれいだな、俺はそう思っていた。
素直に、きれいだとおもっていた。
どうして、俺は勝ってしまったんだろう。
どうして本来とは違うことが起こってしまったのだろう。
「どうしたの。早く魔導力を奪いなよ。」
すこし間が空いて、アルルはつぶやいた。
「後悔なんて、してないから、」
「ボクはキミと勝負ができて『幸せ』だったよ?」
ああ、分かっている。
そんなこと、最初からの目的だからな。
涙をぬぐい、俺は手を上げる。
アルルは目を閉じる。
―でも。
「でも俺は、お前に、いきていて、ほしい。」





ボクは
どうなってしまったんだろう。
今までのはすべて『ユメ』だったの?
起き上がる。
よく見る風景。ああ、ボクの部屋だ。
ベッドの横のテーブル。
なにか紙が・・・・メモがあった。
そこには、小さな字で、
『×××』と書いてあった。

―アリガトウ。
「ありがとう。シェゾ。」
泣いた。声を上げて、涙をポロポロこぼして。
ボクは、泣いた。
そしてボクにはまたいつもの日常が帰ってきた。
―でもただ1つ。
1つだけ足りなかった。
キミが、いなかった。
抜けるような青空にボクは言った。
「はやくボクを『奪いに』きてよね。」

メモに書かれていた、言葉。

『生きろ』


            〜END〜
桜流
2012年01月07日(土) 14時02分55秒 公開
■この作品の著作権は桜流さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
3回目の投稿です☆
タイトルきまりました(*^^*)
最終決戦でシェゾが勝った場合の小説という名の妄想です(←ぉぃ

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No.3  華車荵  評価:100点  ■2012-01-12 02:18  ID:Mv19S08AHTw
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 結局の所、アルルはシェゾを『殺さない』、シェゾはアルルを『殺せない』んだなと思いました(*^^*)
 最後の最後で本当に大切なものに気付いて良かったと思います。
 いつか再会してくれるといいな〜(^・^)
No.2  なむ  評価:100点  ■2012-01-08 14:08  ID:iBMtncLMUeM
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切ないですね・・・・。この二人には幸せになってほしいです・・・・。
No.1  銀杏  評価:--点  ■2012-01-07 17:11  ID:S1sAw2na0VY
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おぉwトリプルシェアルですな♪
シェゾが勝っちゃうシーンは初めて見ました…!
シェゾは去ってしまったんだな…。泣ける…。
総レス数 3  合計 200

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