ここにいる。








「お前がいてくれてよかった」







サタン様がそう呟いたのは、アルルの家から帰り立ち寄った城で、私の手料理を振舞っている時だった。
いつもなら飛び上がるほど嬉しい言葉も、今回ばかりは意味が違うと悟り薄く微笑むに留める。




今日は朝からアルルの調子が悪いことをディーアから聞いた。
だから、ライバルとは言え親友だからこそほっとけなくて、看病しに行ったのだ。
もちろん、サタン様もアルルを見舞いに行こうとしていた。
でも、風邪がうつるのと、弱っているところは基本誰にも見られたくないものだと察した私とディーアはそれを止めた。
しぶしぶながら見舞いは諦めてくれたけれど…きっと気が気じゃなかったと思う。



だからこそ、「アルルを診てくれてありがとう」ということだと思う。
ずきりと痛む心を静めて、私は空になったお皿を取る手をとめる。







「…ルルー? どうした」
「……いえ。…アルルなら大丈夫ですわ。ディーアが今診ていますもの」
「そうか。元気になったら城に呼んで晩餐会でもしたいな」
「…そうですわね」




私はサタン様が好きだ。だからこそ、アルルの話をされるのは、正直言うと、嫌だと思ってる。
でも、アルルは恋敵ではあるけれど妹のように慕っている親友でもあるからこそ、複雑な気分になってしまう。

気を紛らわせるために、お皿を手にしてカートに乗せた。




「お口に合いまして? サタン様」
「あぁ。美味かったよ。城のものが作るのも美味いが、ルルーのは格別だな」
「そんな…お世辞がすぎますわ」
「いやいや、そんな事はないさ。次の晩餐会のときも是非お願いしたいところだ」
「…えぇ。頑張りますわ」
「よろしく頼むな」




眩しい笑顔を向けられて、それを否定することは私には出来ない。そして、その笑顔を作れるのはあの娘しかいないというのはわかってる。
泣きたくなる気持ちをこらえて、笑顔を向けた。




「アルルもきっと喜びますね」



頼られている、必要とされているということが嬉しかった。
サタン様のために、何かが出来るということが。これ以上何を求められるだろう。
サタン様の傍にいることは、私の努力で成し遂げてみせる。傍にいれることが幸せ。
だからこそ…今だって幸せなはずなのに。







「……ねぇ、サタン様」





紅い瞳が私の姿を映し出す。
何を考えていらっしゃるのか私にはわからない。

でも、思い切って聞いてみたかった。





「……。…私がいて、よかったですか?」





きょとん、とした表情を向けられて、この少しの間がちょっとだけ怖かった。
でも、サタン様は小さく笑ってくれて。






「当たり前だろう? 私にはお前が必要だ」





それを聞いた途端、私は思わず両腕を伸ばして抱きしめていた。
そしてそれを拒まないでいてくれるサタン様が愛しかった。





「泣き虫だなぁ、ルルーは」
「…サタンさまぁ……ルルーはどこまでもあなたについていきますー…! …ひくっ…」
「よしよし。ありがとうな、ルルー」




ぎゅっと、抱きしめ返してくれる暖かさが、全てが、やっぱり好きで。
それからもう一度、優しい声で呟いてくれた。







「私には、ルルーが必要だ」








ここにいる。


(あなたがいるから、私は幸せ。)










久唖(くあ)
2011年08月28日(日) 10時13分48秒 公開
■この作品の著作権は久唖(くあ)さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えっと、えっと。…あれ? サタルルに……なってる…かな?(滅)
サタンがアルルの話をするのが気に入らないルルー。そんな彼女の嫉妬が可愛くて好きなだけなんです、私は。←
けど、アルルの存在がでかすぎた。あぁぁごめんよ、ルルー。
一応私の中ではアルルが好きな気持ちはサタンもルルーと同じような気持ち(妹みたいな)だと思ってる。
らぶなサタルルも大好きだよっ!

サタルル強化月間ありがとうございます。かなりショートSSになっちゃった:;
お粗末さまでした。

この作品の感想をお寄せください。
No.2  久唖(くあ)  評価:--点  ■2011-08-29 22:29  ID:rcVgYgy9O0w
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うあ。早速コメントありがとうですv
ちゃんとサタルルだと言ってくれてよかったです。
サタンもルルーも共に一方通行な空回り良いよねーw シェアルと違った雰囲気を楽しめるサタルルは大好きv
本当ありがとうございます☆★☆
No.1  華車 荵  評価:200点  ■2011-08-28 14:30  ID:ssc2G6noD1.
PASS 編集 削除
(´;ω;`)ぶわっ
 冒頭から泣けました!ルルーの想いが切なすぎる……。
 サタンさまも好き、でもアルルも大切。愛情と嫉妬との板挟みで苦しんでるのがひしひしと伝わって来ました。今の関係が壊れること、ルルーにとっては一番の恐怖なんでしょうね……。
 知ってか知らずか、サタンさま優しいし……。サタンさま、罪な男やww
 しかしデレがイマイチ伝わってないサタンさまも、ある意味可哀想ですね。普段が普段なので仕方ないっちゃ仕方ないですが。ルルーさんが邪推してしまう気持ち、私もわかりますし(笑)

 サタンさま、ルルー共に一方通行ですね。だがそこが良い(>▽<)b
 ラブラブも好きですし、早くくっつけ!!と思いつつもそういう焦れったい関係って大好きです。

 ルルーさん、料理、サタンさまのために練習したんだろうな〜。サタンさまもルルーさんのそういう成長を嬉しく思ってるのかも知れませんねv
 ルルーを理想の妃に育て上げる!とか(殴)

 切ない中にもほんのりと甘い、サタルルありがとうございました!
 サタルルですよ!ちゃんとサタルルですよ!!
総レス数 2  合計 200

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