箱庭少女 |
「・・・ねぇ、シェゾ、嬉しくないよ」 「大丈夫、・・・皆、喜んでいる筈だから」 「そんなの・・・そんな、ボクが生まれたから・・・だから。こんなことになった・・・」 7月22日。 時空の狭間にて。 ラスト・ラグナロクが終戦した― 「ボクは、皆の世界を壊したんだよ?・・・違う・・・?」 「違う!お前は守る為に、世界を守る為に、戦ったんだろう!?創造主と!」 血塗れのアルル。必死な形相のシェゾ。 どちらにも、笑顔は、輝きは、生まれていない。 「創造主ね・・・倒したとき、にぃっ、って笑ったの・・・それが・・・こんな意味だったなんて・・・!」 アルルが視線を向けた方向には、―ボロボロとなった世界。 箱庭だった、それでも、美しかった世界。 「創造主を倒すと・・・世界も同時に滅びるなんて・・・!」 「アルルは悪くない!アルルは、悪くない!」 繰り返す。確かめるように、信じるように、何度でも。 それでも、アルルは狂ったように泣き叫ぶ。 「違うっ!!!ボクは皆を殺した!“光”なんて嘘だ!嘘だ!ボクは堕天使なんだーっ!!!」 『アルル・・・そして、シェゾ・・・聞こえるか?』 刹那。アルルとシェゾの眼前に、一人の魔王の映像が・・・否、スクリーンが映し出される。 『聞こえている・・・か?』 「サタンッ!」 『時間が無い・・・』 ばちっ、バヂヂッ、とノイズを起こしたり映像がよく乱れる所から、本当に時間が無い事が分かる。 『皆は平気だ・・・私が、もう一つの“箱庭”を作った。今はそこにおる。・・・だが。創造主が無くなったことで、時、そして空間のバランスが乱れておる。・・・これを安定させるには・・・』 「新しい、“創造主”が必要だ・・・ってか」 真剣な顔で、シェゾの言葉に頷くサタン。 『私は・・・“箱庭”を安定させるので、空間の管理者となってしまい・・・“創造主”になれない・・・そこで・・・』 言葉をにごらせる。 皆、彼の言いたい事は分かっていた。 ―唯一人輪廻から外れた少女、アルル=ナジャを創造主にさせろ。 ・・・と。 だが、もう、創造主を倒すという辛い役目をした上に、創造主にさせるなんて・・・まだ幼い少女なのに・・・ 誰も、そう、言い出せずにいる。沈黙の時が続く。 そして―――沈黙を破ったのは、 「・・・ボク、創造主、やる」 『っ!?』 「アルル!」 二人の言葉も聞かずに、魔導少女と呼ばれた少女は続ける。 「やるよ。ボクがやらなきゃ、誰がやるの?誰も出来ないでしょ?だから、ボクがやる」 ―だが― それは、決心からの物では無かった。 “運命”からの、人々からの、命令。 アルルには「断る」という選択肢は無かったのだ。 その事実を知っていた魔王は、ただ、 『・・・アルル』 と言う事しか出来なかった。 「・・・ッ、そんな事、させない!」 と。 そう言って立ち上がった人物が居た。 ―シェゾ=ウィグィィ。神を汚す華やかなる者。 「アルルにこれ以上っ・・・これ以上荷を負わせてたまるか!オレがやる!オレが創造主だかラグナロクだか何でもいいからっ・・・やるからっ・・・」 だんだん語気が弱くなっていく。 そして、そのまま、 「・・・アル、ル・・・」 崩れ落ちる。 アルルは、自らの手から出していたスリープの魔法を解除する。 『アルル・・・』 「サタン、ありがと。ボクやっぱり行くよ。ごめんね・・・迷惑かけて。大好き」 そう言って、足元に崩れ落ちたシェゾをしゃがんで、抱きかかえる。 そして、自らの願いと共に呟く。 「次に会った時は・・・幸せでいたいね。敵なんかじゃなくて・・・もっと、君と、笑いあって・・・」 銀の髪を持つ、闇の少年は何も言わずに眠りについている。 アルルは、彼と唇を重ねた後、そっと、呟いた。 「・・・大好き、シェゾ。ごめんね、こんな形でしか言えなくて・・・」 『アルル、もう、時間が・・・』 悲痛な顔で呟くサタンに、アルルはこくりと頷いた。そして、体から手を離す。 「きっと、いつか・・・いつか、君と笑い会える日が来るよね・・・?」 そう言って、魔導少女と呼ばれた少女は立つ。自らの決意と共に。 「皆、大好きだよ」 そして、誰も居なくなった“箱庭”。 ただ水晶を通して世界を見ていた魔王は、呟く。 『アルル・・・』 ―と。今までの揺れなどが一気に収まった。サタンは直感する。新しい“創造主”が誕生したのだ・・・と。 『お前は・・・・・・生きて悪い存在などではない。生きてくれて、ありがとう・・・』 『お誕生日、おめでとう。アルル』 そして。 7月22日。 本当の意味でのラグナロクが、終戦した―――・・・ 世界に、光がさす。 |
白銀
2009年07月22日(水) 23時19分12秒 公開 ■この作品の著作権は白銀さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
No.2 白銀 評価:--点 ■2012-02-12 21:34 ID:1r8bSIostTo | |||||
(こんな所でいうのもどうかというか不躾だとは思っているのですが)、久しぶりに伺わせて頂きました際に、作品の方を少々削除させて頂きました! 回覧くださった方、文焦力構成力表現力全てにおいて稚拙でお見苦しい作品でした失礼しました… あんな作品でも当時の私なりには精一杯頑張って萌えを自分なりに表現してたんです(笑) >もんぶらんさん 返事が遅くなりまして;嬉しい言葉有り難う御座います……! 連続ものは、考えてる自分も凄く楽しんでかいてた覚えがあるので嬉しいです♡ 感動して頂けたとの言葉も至極光栄です。当時、書くのはほのぼの(というかギャグ?)の方が得意だなぁと自負していましたので、シリアスを書くのは楽しくても読む側はどうかなぁと思っていました。う、嬉しすぎる……(笑) 今後悠久魔導都市様への投稿予定はありませんが、(こっそりストーカー予定はまだまだありますが←) どこかで同名or別名での、魔導の二次創作活動はしていますのでもしお見かけした際にでもお声掛け下されば嬉しいですw うん、好きカップリングも変わってないです。シェアルすきだーーーーー>< 魔導がこんな長い間好きになれるとは思わなかった。というか、まだまだ枯れる気がしません。好きだ… 感想有り難う御座いました!作品を作って感想貰えるのがやっぱり一番嬉しいですね…! |
|||||
No.1 もんぶらん 評価:--点 ■2011-12-15 17:23 ID:S1sAw2na0VY | |||||
白銀さん(おりじなるさん)の作品全部見ました! 特に連続ものの関連性が面白かったですっ!! こういうシリアスな小説も好きです。感動しました…。 次の作品楽しみです!頑張ってください!!! |
|||||
総レス数 2 合計 0点 |
E-Mail(任意) | |
メッセージ | |
評価(必須) | 削除用パス(必須) Cookie |