闇の魔導師

ある所に、一人の少年がいました。そして、彼は“闇”に染まっていきました。それは、誰が望んだのでしょうか・・・?

     ★

彼は、“闇の魔導師”でした。
闇の魔導師―全てを闇に染め、混沌へと人々を回帰させる。
そして、いつか、自らも使命を果たして、混沌へと回帰する―
それが、“闇の魔導師”の使命でした。
彼は、“闇”という名の運命に捕らわれながら、
間違う事なく、狂う事なく、―それが当たり前のように生きてきました。それはきっと、これからも。
そしていつか。
自らも混沌へと回帰する―それが自分の使命―
・・・・・・な、ハズでした。

ある日、“闇の魔導師”は“女神様”に呼び出されました。
“闇の魔導師”は仕方なく“女神様”の元へと行きました。だって、それが運命だから。
女神様は、言います。神々しい顔を、哀しげに曇らせて。
「貴方は人を殺しすぎたわ。信じないでいたわ。心を閉じていたわ。・・・・・・貴方は、もう、昔の貴方じゃないのね・・・?」
「ハンッ!オレはオレだ。“昔”とか“未来”とか、そんなオレはいないのさ!」
その言葉が手痛くて、“女神様”は哀しくなりました。
「じゃあ、貴方が貴方を取り戻すまで、待ちましょう」
「人を信じればいいのか?フン、まずあっちが信じていないからな」
「時は、待ちます。きっと、これからもずっと」
「意味わかんないぜ、“女神様”」
“女神様”は、“闇の魔導師”の言葉を聞かずに、持っていた杖を一振りします。
―と、同時に“闇の魔導師”の体が光に包まれました。
「なっ・・・!?何しやがる!オイ、聞いているのか!?」
「貴方が貴方になるまで、歳を取りません。永遠の時を生き続けるのです」
永遠の時。歳を取らない。
ソレは、“闇の魔導師”にとって、嬉しい限りでした。夢が叶ったのと同じような物です。
もう、自身を包む光の存在をも忘れながら、興奮して言います。
「ほぅ・・・!お前は、ソレが“闇の魔導師”にとってどういうモノなのだか、知っているのか?」
「ええ。とても。・・・でも、きっと、貴方は世界で一番の魔導師になる事はないでしょう」
そう“女神様”は言った後、もう一度、繰り返すように言います。
「貴方が貴方に戻るまで、時は待ち続けます。・・・その事を、忘れずに」

そして、現在。
“闇の魔導師”は一人の少女と出会います。運命が成すまま。

そして彼の中で、時が動き始めました。

「お前がっ・・・!」

     ★

それでも―――時は、世界は、変わらず動き続けるのです。
そして、

おりじなる
2009年06月25日(木) 20時41分25秒 公開
■この作品の著作権はおりじなるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
絵本のように書いてみましたおりじなるです。
そういえば、私、ずっと前に一つのサイトだったかな―に出会ったんですよね。
そこは、ただ、作品が置いてあるだけのサイトでした。何にも、作者のコメントも無く、ただ作品だけがあったんです。
でも、作品には「見て欲しい」という願いが、ありました。実際そう書いたわけじゃないのに。
だから私も・・・―お願いです。
貴方が、今見ている貴方が、この作品をどう思ったのか、何て問いません。
でも・・・でも。
貴方には、ただ、見ていて欲しいんです。
私が、この作品を作った事を・・・それを、知っていて欲しいんです。私がいる事を、ただ見ていて欲しいんです。それが何よりの、私がいる証になるから。
・・・なんてね♪
それでは。
また、私の空想にお付き合い願えたらと思います。

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