湖 シェアル編 |
「ねぇ、ほら、シェゾ!早くしてよ〜」 アルルは、呆れるシェゾのマントを引っ張り、湖の縁へと招いた。ソコには敷物とお弁当が、すでに器用にひいてあった。 セリリがいる湖は、何故か、沢山のカップルが成立する―“デート・スポット”と成り始めた。 昼間には、今はいくつものカップルが訪れる事で列までも出来る人気。 だが― 夜には、湖がより一層綺麗に見えるのに、誰も訪れないのを知っているのは、今の所、アルルとシェゾだけ。というよりシェゾの方は、アルルと四六時中一緒に居る(アルルによる強制)から、知っただけなのだが。 「・・・で、アルル、今日は誰か告白すんのを見に来たのか?」 半分あざ笑うようなシェゾの言葉に、何故かアルルは身を震わした。だが、しばらくするとそんな事はしていない、とでも言う様に余裕を持った顔でシートに座る。 「う・・・ううん、今日は、ただのお花見」 ホラ!と、アルルは自分の真上に咲き誇る花を、指差す。幻想的な、桃色の花を。 「・・・・・・ふぅん。でも、お前ならいろんな人と花見をするだろ?」 「お花見は、年に一回しかやっちゃいけない、なんて法律、無いよ?今日は、二人でお花見。ねっ?」 「っていうか、何でソコでオレ?」 基本的に、シェゾはこういう系には不器用で、うとい。 「・・・えーと・・・君って暇そうだから!」 「お・ま・え・なぁぁ・・・!!人が魔導書読んでいるのに、お前が連れてきたんだろーがー!!」 「怒らない怒らない♪気丈に構えて生きましょう♪」 ・・・はぁ。シェゾが溜息をつき、そこで喋りが消える。 アルルは考えていた。 ―そもそも、シェゾって色々な人に人気なんだよねー・・・とにかく美形でしょ、背が高いでしょ、魔法すごいでしょ、魔導に通じているでしょ・・・。なんだか、ボク、悲しくなってきたなぁ・・・。・・・考えるの、やめよぉ!誰がシェゾを好きだって、別にいい!ボクはシェゾがすき!その事実だけ! ・・・湖の静けさと打って変わって、茶髪の少女の頭の中は、騒がしかった。 「・・・・・・。そーいえばさ」 空を見上げながら、シェゾが呟いた。アルルはソレに敏感に反応し、 「あ、うん、えーと・・・何でしょうか?」 「何でソコでいきなし敬語になるんだよ・・・で、な。・・・その・・・」 後半部分が、言葉がにごって、聞えない。 アルルはよく聞えるようにと彼に近づいた。 「・・・で・・・」 「?何?聞えないよ?」 実際、彼はいつもならこんな事はしない。こんな風に言葉をにごらせる姿など、見た事無かった。 「・・・・・・・・・。何でも、無い」 結局、帰ってきた答えは―コレ。 「えぇぇえっ!?こんな答え!?ありえなーっ!シェゾ、他にも言う事あるでしょ!?ねっ!?」 「いや・・・別に」 「別にじゃなくて!別にじゃなくてもっといい答え!」 夜の湖はアルルの叫びに支配される。 「あ〜、もぉ、君が“やり易い”ように場所を選んだのに・・・!」 「“やり易い”?」 不審そうに眉をひそめるシェゾ。アルルはそれに気づかずに、 「だから、つまり、君が場のフインキに押されてボクの事「好き」っていうの。そしたらボクは心の奥にためてた好きな思いを―「前から、ボクも好きでした・・・!」って・・・ ・・・・・・あ。」 先程と、また打って変わって、静かになる湖。アルルは顔を赤らめ、シェゾは横を向いている。 「あ―・・・その、だな」 しばらくして、シェゾは口を開いた。 「その・・・オレは、お前のそーいう所は、まぁ、・・・好き、だな」 刹那、ふぉん、とシェゾの体が掻き消えた。空間転移をしたのだ。 「あぁっ!ちょっと待って!シェゾ!シェゾ・ウィグィィ!・・・・・・あん、もう」 誰も居ない湖に、アルルは精一杯叫んだ後、がっくりと肩を落とした。 「・・・ふぅ。告白した二人、ソコで一緒に誓いのキスを・・・!!なぁんて展開には、ならない、かぁ」 「大丈夫。次の機会がありますよ」 「そうそう!そうだよね!・・・って、アレ?」 声のした方―湖を見る、アルル。ソコには何故か、うろこさかなびと・セリリの姿が。 「こんにちわーというよりこんばんわー、アルルさん。声は大きくしないでくださいねー?騒音妨害ですよ?今まで五月蝿くて眠れなかったんですからぁ。んじゃ、そーいう事で。今度から控えてくださいねー」 言いたい事だけ言った後、セリリの体は湖の中へと消えていってしまった。 ・・・・・・と、いうより。つまり。つまりはコレ。 「き・・・聞かれていた・・・!?」 がっくり。 アルルは、次は膝を冷たい芝生につける。漫画特有のポーズだ。 「・・・って、よく考えたら・・・!」 だが、また顔を上げる。希望に満ちた眼だった。一体彼女の脳内でどんな事が起きているのか。 「彼は“好き”と言ってくれた。自分は彼の事が好きだ。・・・それって、つまり・・・今度、会った時は自分達の思いを知っていて、でも、自分から“付き合って?”とはいえないシェゾ。あぁ、どうしよう・・・!な時にボクが颯爽と現れ、“ボク達・・・付き合わない?”と手を差し出す!あぁ、良い!良いねその展開!!」 アルルは妄想世界へと旅立ち始めていた。 ☆ 「・・・っはぁ・・・何だか、虚しい二人ですわよねー・・・」 「違うよ。オレ的にはさ、何か、こう、不器用っていうの?“愛する”より“愛される”を好むからさ、あの二人」 「僕はあの二人、人の事を応援やらどうやらしておいて、自分の事は勇気が出ない、とかだと思うな」 「そうだな。オリジナルも、もう少し素直になればいいものを・・・」 「ま。変態変態言われているから“いざっ!”って時に駄目なのよ」 「あぁぁあ〜〜♪可哀想なアルル♪真っ赤なアルル♪あぁぁぁ〜〜可愛いぞアルル〜♪妄想アルルー何でワタシにはその姿見せてくれないんだぁぁ〜」 かつて、アルルとシェゾが告白現場を覗いていた所に、彼等のおかげで出来たカップルが、勢ぞろいしていた。 ☆ そして、そんな彼女達はまた、“運命”の中を生きながら、事件を起こし、魔導世界を生きていくのだが・・・ それは、また、 別のお話。 |
おりじなる
2009年06月10日(水) 21時42分43秒 公開 ■この作品の著作権はおりじなるさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 おりじなる 評価:--点 ■2009-06-14 17:53 ID:1r8bSIostTo | |||||
星華様、感想ありがとうございますっ!!ちょっと本気で踊っちゃいましたよ!心の中で!(オィ 妄想アルルっていうのは、実は私の考えるアルルじゃ無いんです。何か普通の“アルル”だったら話が盛り上がらないしなー・・・とか思ってて。だったらいっその事“湖だけ”のアルルを作っちゃおうぜ!と(ぇ)よし「恋する乙女は暴走する★」で行こう!(爆 やっぱり、そんな勢いまかせの話+キャラだったからドン引きされるかなー・・・って思っていたんですけど、良かったー。星華さん、気に入っていただけて何よりですvvvv本気で嬉しいですvvv これからも、魔導ファンでいましょうね!! |
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No.1 星華 評価:--点 ■2009-06-11 21:42 ID:Si0aypvWFSM | |||||
こんばんは。初めまして^^湖シリーズお疲れ様でした! 妄想アルルが可愛いと思います。 ルルー化しちゃってますねーww 個人的には一番最後のカップル勢揃いの場面が何気に一番好きです(笑 私もシェアル、サタルルラグウィDシェDアr(以下略 みんな好きなので悠久魔導都市様を発見したときの感動は大きかったです。 やっぱり好みの合う方がいるってのは嬉しいですよね。 初感想故下手な文章ですみません; これからの小説も楽しみにしています^^ |
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