湖 サタルル編 |
綺麗な湖だな、とサタンは呟いた。 そもそも何故、二人―サタンとルルー―がこんな所へきているのか、というと、今日、ルルーが“夜の散歩でも・・・?”と称して湖へとつれてきたのだ。 勿論、最終目的は―告白。 ルルーはこうやってサタンに告白されやすいように(自分から告白、というのは嫌らしい)色々な場所へ連れて行っているのだが・・・一向に成果は上がらない。 「そうでございましょう?サタン様。あたくしのお気に入りの場所でございますの」 「でも、意外だな」 「?」 怪訝そうな顔をする、ルルー。そんな彼女の表情を見てサタンは、ふっ・・・と微笑んだ。魔王の微笑みではなかった。ソレとは違う、微笑み。 「お前なら、好きな場所に必ず別荘でも建てるだろうに・・・ココには、お前の別荘が建てられていない」 「もう、サタン様ったら〜♪」 調子に乗ってルルーは、横にいたサタンの背中をたたく。何故かソコで“ばんっ!”“ぐふっ・・・!”などという音がしたのだが・・・気のせいだろう。多分。 「あら?サタン様、そこにうずくまって・・・気分でも悪くされましたか?」 あくまで純粋なルルーは、己の怪力に気付かない。うずくまったサタンの背中をさすっている。そんな彼女の優しさにサタンは、無理強いな微笑みをつくり、 「あ・・・ああ、多分平気だ・・・いつも受けているから、な・・・」 「え!?いつも!?もしかして、サタン様、アルルの仕業ですの!?・・・アルル、今度会った時が最後だと思いなさい・・・!!」 絶対に自分のせいにはしないルルー。っていうか人のせいにしてばっかりのルルー。 怒りというか使命感に燃えていたが、やがて、 「・・・っと、ああ、嫌だ。サタン様にこんな熱苦しい所をお見せするなんて・・・あぁ、でも、サタン様・・・♪あたくし、まだ・・・」 「・・・・・・・・・。ルルー」 何故かいつのまにか自分の世界へと旅立ち始めたルルーに、サタンは、いつにもない瞳でルルーを見上げた。ルルーは“コレはもしかして・・・何度も夢見た告白シーンでは!?”と心を熱くさせながら、 「あ・・・ハイ、サタン様!」 と、練習した“カッコいい返事の仕方”で返す。ソレにサタンは先程と変わらぬ瞳で・・・ 「頼むから、私の顔を立ててアルルを殺さないでくれっ!!!」 ひしっ!とルルーの腕にしがみつく!というより絡みつく! 「!?え!?サタン様言うのはそっち!?」 がーん!と妄想の中のカッコいいサタンが崩れ落ちる! 「・・・アルル、です・・・か」 ・・・静かな湖の音と共に、ルルーは一つの考えを頭に浮かべかけていた。 ―サタンがアルルを好きだから、自分にはそのキモチが回ってこない・・・ という、一つの答えを―現実を。 いつか、振り向いてくれないか?と待っているのだが、一向にそんな気配は無い。 だったら、もう、いっその事・・・!! 「・・・サタン、様!」 意思を決して、ルルーは自分の腕にしがみつくサタンを振り払い、距離をとった。 「え?」 サタンも、コレには予想外だったらしく眼をぱちぱちしている。 「・・・ゴメンナサイ。あたくしは・・・もう、待つ事なんて出来ません」 そう言って、ルルーは踵を返した。 ―が。 「待てっ、ルルー!」 力強い、サタンの声。 自分はソレに従いたい。でも、それじゃあ、何も変わらない・・・ 「・・・・・・ごめん、なさい・・・・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・!!」 歩調を緩めず、ただ、ソレを呟き、連呼しながら歩いていく。 ・・・彼女は、すこし、期待していた。サタンが自分の所まで走って、止めてくれるのを。 でも。サタンは動かない。いや、動けない。 「ルルー・・・っ、」 一方、サタンの方も一生懸命呼び止めようとする。が、声が出なかった。 何故だろう。ルルーにどつかれた時にあばら骨でも折ってしまったのだろうか?いや、そんなモンじゃない。コレは、この、ココロから来る痛みは―・・・ 私は、こんな大事な時に動けないのか?そこまで・・・馬鹿なのか?私は。 ・・・動こう。動ける。 そうとも、動けるさ。 大事な人のためなら。 す、とサタンは立ち上がった。そのまま、一つの目標へと向かって走り出す。 そして、その目標の人の肩をつかみ、名前を、呼んだ。 「・・・サタン様」 ルルーは生気が無い、といった表現が適切な顔だった。だけど、かまわない。 かまわない。 「・・・・・・本当はなぁ、本当はな、アルルは確かに魔力があっていい子だったけど、でも、でも・・・なぁ、魔王な事を優先したらアルルをとるけど・・・けどなぁ、個人的には・・・」 す、と息を吸い込みながら、肩に置いた手にチカラを入れる。 「お前が、好きなんだよっ、ルルー!!」 まさか、そういわれると予想もしていなかったルルーは、ただ、彼を呆然と見つめているしか出来なかった。 「・・・あ・・・えーと・・・ま、そーいう事だ!そういう事なのだ!」 真っ赤になったサタンは肩に置いた手を“ぱっ”と離し、空間転移で何処かへ去っていてしまった。 そこに残されたのは、ルルーただ一人。 「・・・あ。」 ルルーは、今になって気がつく。 そういえば、あたくし達・・・これで両思い、よね? |
おりじなる
2009年05月30日(土) 21時42分08秒 公開 ■この作品の著作権はおりじなるさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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