湖 DシェDアル編 |
湖が月の光でキラキラと反射する。 夜の湖は幻想的で、ココに人気があまり無いのが不思議な位であった。 だが、湖にいるただ一人の人間― ―Dアルルには、どうでも良かった。 「Dアルル」 刹那、自分の名前を呼ぶ人が現れた。自分の真後ろにいるらしい。 「・・・・・・」 だが、彼女はそんな事を聞えていないかのように無視している。 「“Dシェゾの事なんて考えていない”とでも考えているのか?」 ちゃっかり隣に座るDシェゾ。彼女は、少し嫌がって距離を置いた。 彼の視線が刺々しく突き刺さる。 「・・・・・・」 「何、していたんだ?」 「・・・関係、無いでしょ。君には」 初めて口を開くDアルル。 「ウソだろ」 彼の低い声に、びくっ、と体が震えた。彼は構わず続ける。 「お前は自分で考え、行動するタイプだろ?だったら、ココに来たのにも理由があるハズ」 無言で、ただ心をドキドキさせながら話を聞く。 「“関係無い”とか言うなよな。お前は何ていうかさー・・・笑っていても、心は開いていないから・・・だから―もうちょっと、心を開けよな」 彼女はドキン、と心が揺れるのを感じた気がした。 彼は、自分の周りに居てくれる人達とは違って、自分に近づかない人間だった。いや、自分から避けているという感じだった。 そんな彼が今、こんなに近くに居る。 こんな、近くに。 「・・・どこか、行って頂戴」 そんな彼の態度が、なぜか自分にとって惨めだった。 「どっか、行って・・・、行って!」 ついに、語気が荒くなる。だがDシェゾは無言で月を見ていた。 「行って・・・行って、よぉ・・・!」 ウソだろ。 先程の、彼の言葉が突き刺さる。 「行って・・・!」 違う。本当は言いたい言葉はコレじゃない。 本当は― 本当に、言って欲しい言葉は― 「助けてよぉ・・・Dシェゾ・・・」 暖かい。 気がつくと、自分の両手が握り締められていた。 ―彼の、両手に。 「やっと本音言ったな」 にっ、と勝ち誇った顔で言う。Dアルルは赤くなりながら言った。 「・・・最初っからコレが目当てだったの?」 「いや、お前ってさー・・・やっぱ、不器用だろ?」 「不器用・・・って、何が?」 「心を開く事」 きっぱり。 擬音が付くほどの勢いで答える。Dアルルは思わず噴出してしまった。 「笑ったな」 ぎゅう・・・、と手を握る力が強くなる。 「・・・意地っ張り」 言う。 「お前こそ。意地っ張り」 返ってくる。 そのやりとりで充分だった。 しばらく、二人で月を見ていた。 しばらくして。 「ねぇ・・・“Dシェゾ”って名前は変だよ。何か名前、考えよう?自分達が自分達として生きる為の・・・証として」 「ああ・・・いい、な。自分達として生きる為の、証・・・か」 そう言って、下を向いて考え始める。両手を握ったまま。 そして。 「そうだな・・・じゃあ、 ディーア」 どき、と体がまた跳ねた。 初めて聞いた気がするのに、今まででも聞いた気がする。 「あ―・・・う、うん。良いと思う」 なんとか、震える心臓を押さえてそれだけ言う。 「いいだろ?なっ」 にこっ、と笑って自慢げに言う。 ディーアは彼の笑顔に顔を赤くした。 「じゃ・・・じゃあ。僕も考えるよ・・・そう、僕と同じように・・・ ディーシェ」 ・・・ありがとな。ディーシェはそれだけ呟いて、横を向いた。耳まで赤くなっている。 「あのね・・・」 ディーアは、自分の気持ちを彼に伝える事にした。 「僕、正直言って・・・嬉しい。この気持ちはいくら言っても足りない位だ。本当にありがとう。僕は・・・君が、ココにいてくれるだけで・・・」 嬉しい。 そういい終える前に、彼女の唇は彼のソレと重ねられていた。 「ディ・・・シェッ」 離れる。するとディーシェは、ぺろ、と唇をなめて、 「オレはまだ満足じゃないぜ」 そして。 その後、自分達を独特の名前で呼び、よく一緒にいる― ―いわば、“カップル”というやつになったとか。 |
おりじなる
2009年05月22日(金) 22時39分07秒 公開 ■この作品の著作権はおりじなるさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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