魔女の処罰〜流星群(メテオ)〜 |
「いや、いや・・・いやだ!!」 この現実は今すぐ「闇」となるならそうなってほしい。 私の目の前にあるものは、深紅の海のなかにある数々の「死」 立っているのは、「光」だったはずの剣士。その雄姿は今は見当たらない。 冷酷な目。 血が変色した黒い血痕が鎧を包む。 その姿は私の愛した「光の剣士」とはほど遠い ー「闇」の剣士・・・− 「なぜ・・・なぜ、貴方は罪のない人々を消し去ろうとするのです!」 応答はない。 「ちょっと聞いているのですか! ちゃんと・・・ちゃんと答えっ!」 その言葉は剣士の刃によって途切れた。 刃は私の体の腹部を切り開き深紅の血を吐き出させた。 「ぐっ・・・ラグ、ナス・・・さん・・・」 体を支えていた力が一瞬にして吹き飛んだ。 私の体はぐにゃりと曲がってその場に伏せ倒れた。 私は手元にあった杖に手を伸ばす。 しかし、剣士はそれを許しはしなかった。 手の甲に剣士の脚が落ちる。 ぐりりっと鈍い音を上げて、私の手は泣いた。 「うっ・・・」 小さな私の泣き声。 剣士はその姿を「氷」の笑みで見つめ続ける。 なぜ、彼は変わってしまったのか。 ここまで冷酷に 非道に 彼は元には戻らないの? 私の「魔力(ちから)」では戻せないの? 自分の無力さが悔しく、悲しかった。 それでも、剣士は笑い続け そして、口を開いた。 「俺はウィッチだけがいればいい。 俺とウィッチだけの世界を作っているんだ。 邪魔をしないでくれ。」 !? 私とラグナスさんだけの世界?! そんな物を作るためにこんな虐殺を?なんて愚かな人なんでしょう。 「いや・・・です。」 涙を浮かべ、声を振り絞った。 「いや・・・だって?」 ぐりりりっ・・・ 手を踏む力が強くなる。 「なんで君はわかってくれないんだ。 君ならわかってくれると信じていたのに・・・。」 私の手を踏む脚の力は強さを増した。 「ラグナスさん・・・。 私は貴方の傍に居られることにとても幸せを感じます・・・。 でも、誰もいない世界では・・・ たとえ貴方と一緒でも、私には淋し過ぎます・・・。 死んだ皆さんは還ってはきませんが・・・今でも・・・遅くっ・・・」 その続きはまた虐殺の刃によって途切れた。 刃が私の胸部を貫き血液の潮が舞う。 息をするのが苦しい。 体の中の神経全体に激痛が走った。 剣士は息を切らしながら、私に言う。 「黙れ・・・黙れ・・・黙れっ! 解ったような口を叩くな! 君に、君にこの苦しみが解るとでも言うのか! どんな思いで、この行為を行った俺の心が解るものか!」 彼が語るこの行為の訳・・・。 「俺はシェゾの様に魔導は扱えない。 サタンのように、権力もない。 それでも・・・俺は君を守りたかった。 傍に居てほしかった。失いたくなかった・・・。 ・・・だから、こうするしか・・・道がなかったんだ。」 全てを消してまで、私を守ろうとするなんて・・・ なんて馬鹿な人なんでしょう。 「うっ・・・」 私は無事な左手で杖を掴み取る。 最後の「魔力」を振り絞って、私は叫んだ。 「流星群(メテオ)!!!」 「闇」の剣士の頭上には、無数の流星群が在った。 それはとんでもない速度で剣士に降り注ぎ、彼を痛めつけていった。 「ウ・・・ウィッチ・・・。」 彼の最後の言葉・・・。 私は流星群が消え去った後、激痛に耐えながらも立ち上がり、 彼に歩みよってしゃがみ、彼の手を握る。 「これで・・・お相子ですよ・・・ラグ・・・ナス・・・さっ」 魔女の処罰・・・流星群の刑・・・・。 私たちは地獄行き・・・。 〜Fin〜 |
*TERRA*
2007年08月06日(月) 11時59分30秒 公開 ■この作品の著作権は*TERRA*さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 桜流 評価:--点 ■2012-03-26 18:47 ID:c6IElaWz56I | |||||
わ・・・こういう死ネタはじめてみたんで感動しきりです。 ラグナスはウィッチをすごく愛していて・・・・ でもウィッチは・・・・ ウィッチの「お相子ですよ」にグッときました。 次も楽しみにしてます! |
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No.1 pp 評価:0点 ■2008-07-31 14:49 ID:FgWej4ff7k6 | |||||
ラグナスにいったい何があったんだ?(あ、初めまして御会いすることは 少ないと思いますが。) |
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総レス数 2 合計 0点 |
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