大嘘つきのオマエへ送るさようなら。 |
冷たいオマエの隣に俺はいた。 ーナニモシャベラナイオマエー 体に触れても温もりは無い。 ーイシノヨウニツメタイオマエー 唇を近つけても吐息はない。 ーキエタオマエ・・・− 俺は光をなくした。大切な大切な「オマエ」という光を・・・。 俺はオマエの亡骸をぐっと強く抱きしめた。 帰ってくる訳もないのに、ずっとずっと抱きしめた。 オマエの体から、流れる真紅の血だけが温もりを残していた。 ー何処か行くのか?− ーうん。ちょっと ー ー・・・− ー大丈夫。すぐ帰ってくるからー ー必ずー ーうん。必ず。・・・じゃ少し出かけてくるね。− ーあぁ。ー ー必ず帰るから!− それがオマエとの最後の会話。 「帰って・・・ねぇじゃんかよ。」 雫はオマエの頬を蔦って、真紅の地面に消えた。 その消え方は人間の命のように儚く、そして脆い。 魔導師の俺でも、どうする事も出来なかった。 ー大丈夫。すぐ帰ってくるからー カエッテコナイオマエ。 カミノモトヘトキエタオマエ。 なぁ、神様とやら。 お前は本当は『神』の皮を被った悪魔じゃないのか? 「俺からあいつを奪うなら、神でも悪魔だ」 地面にオマエの亡骸を置くと黒い空から一筋の光がオマエを包む。 その光はしだいに強さを増した。 気がつけば・・・オマエの体はなかった。 「亡骸さえも俺には残してくれないのか?」 何もないこの場所で、俺はオマエの幻を見たかのように、一筋の光を掴む。 心が寒い・・・。 吹き抜ける風が心にも染みて痛かった。 ー神よ。もし願いが叶うなら。一つだけ聞いてくれ。 愛しきアイツにさよならを言わせてくれ。 この哀しみが癒えるように・・・。 二度とこの哀しみが帰ってこないように。− 誰も俺のような運命を歩かないでくれ。 ただただ、そう祈るだけだった。 俺はとっさに腰から闇の剣を取り出して、 グサリ、グサリと太ももを刺し続けた。 闇の剣はやめろ・・・やめてくれと言い続けた。 だか、俺はもう自分自身をどうすることもできなくなった。 心の行き場をなくした。 あの笑顔はもどってこない。 優しい声も、 温もりあふれる体も・・・。 俺は自分を傷つける腕を止めた。 俺がしている行為。 『現実逃避』の言葉が痛いほど似合ってしまう。 そう思うと止まった涙がまたやってきた。 「うっ・・・ううっ・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」 もう我武者羅だった。 叫んだとこでも何も起きないのはわかっていた。 でも、ほんの少しだけアイツが帰ってくるようだった。 「泣くなんてあわない」って笑ってくれよ。 「何処にも行かない」って抱きしめてくれよ。 「大好きだよ」ってもう一度だけ・・・。 俺はあの言葉が忘れられない。 そうアイツが死んでから何年もたった今日でも・・・。 ー必ず、帰って来るから・・・− 「嘘つき・・・。オマエは大嘘つきだ・・・。」 ーカナラズ・・・カエルカラ・・・− 「じゃあな。」 俺はオマエの墓を後にした。 ーオオウソツキノオマエヘオクル、サヨウナラー *Fin* |
*TERRA*
2007年07月23日(月) 21時26分56秒 公開 ■この作品の著作権は*TERRA*さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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