其の歌は、誰のために… |
静かな森の中に美しい湖があった。 その湖は澄み渡っており、見るものの心を惹きつけた。しかし、美しすぎるがゆえに、人を寄せ付けなかった。 その湖に、青い髪の少女が水面に浮かんでいた。 少女は遊んでいるわけではなかった。かといって、溺れているわけではない、その証拠に、少女は呼吸をしていた。 少女の名はセリリ、この湖にただ一人で暮らすうろこさかなとびとの少女だった。 うろこさかなびと…、それは真水に存在する上半身は人間の娘、下半身は魚のものという魔物の一種であった。しかし、その少女は魔物というにはか弱すぎた。その細い手首を少しでも力を入れすぎれば、百合を摘むかのようにたやすく折れてしまいそうだった。 彼女は寂しかった。広い湖でたった一人で暮らしていただけではない。彼女が人間と同じ心を持つが故であった。 彼女の心が魔物のそれであったならば、彼女はこうも悲しむこともなかっただろう。 この湖はめったに人が訪れることがないのだが、彼女の寂しさを紛らわすために、彼女が彼女のために歌う歌に誘われて、旅人がやってくるのだった。 しかし、彼女はその姿を人前に見せることはなかった。 傷つくのが怖かったからであった。 昔、彼女が最初に人間と出会ったときのことであった。 彼女は嬉しかった。しかし、初めて自分以外の人に出会ったので、なんて声をかければいいのか分からなかった。 彼女がなんて挨拶しようと考えていると、その人間はあろうことか少女にファーヤーの呪文を放ったのだった。 そして、人間の放った炎は少女に当たることはなかったから、少女はその体を傷つけることはなかったのだったが、しかし、少女は心に傷を負ったのだった。 「どうして…」 少女は何もしていなかった。ただ、人間とお話したいだけだった。 それから、少女は人間が怖くなった。苛められる、ひどいことされる…、少女はただなくだけだった、悲しくて、つらくて…、そして、お友達が欲しくて泣くのだった。 彼女はただ純粋すぎるだけだった。 しかし、その純粋すぎる心のために、彼女は悲しかったのだった。 |
千里
2007年07月01日(日) 07時03分10秒 公開 ■この作品の著作権は千里さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 華車 荵 評価:100点 ■2007-07-06 02:34:22 ID:BH4G.dZ0sJM | |||||
こんばんは、初めまして千里さん。 華車荵というこのサイトのネギ……じゃなくて、このサイトの駄目駄目管理人です(´ー`) 以後お見知りおきをm(__)m セリリの過去ですか。 なるほど、こんな過去なら彼女の人間不振(?)も頷けますね。 淡々とした語りが物哀しさを引き立ててます。 物語を読んでいるというよりは、お話を聞いているという感覚の方が近い気がしますね。 語り手が誰なのか気になったりw まぁ、そんなバックグラウンド的な事は置いておいて、セリリって良いコだよな〜って思ってしまうお話でした。 読みにくいということは全然ありませんでしたので、ご心配なく(^-^) これからも執筆頑張ってくださいねノシ |
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No.1 藤宮 評価:100点 ■2007-06-30 16:56:04 ID:bBJII2354Zg | |||||
淡々とした文章がかえってセリリの哀しさをよく表してて、雰囲気でているなと。 所どころ間違いはありますが、全体的にさらっとしているから「読みにくい」なんてコトはないと思います。 これからも頑張ってください。 |
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総レス数 2 合計 200点 |
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