夢現
その夢は嫌に現実的だった。
まず、ボクは仰向けに寝かされていた。
下が柔らかいということは、寝台か何かに寝かされているらしい。
天井はただ白い。
汚れ一つなく、まさに純白。
周りを見ようと身体を動かそうにも、指一本、首すらも動かせない。
金縛りだ。
とりあえず目だけで見渡すも、
ただ天井が広がっているだけだった。
試しに声を上げてみようとした。
だが、唇は動けども声は出なかった。
これでは何も出来ないと、溜め息をつく。
ふと、近くで物音がした。
音は徐々に大きくなってきて、やがて人影が視界に映る。

Dシェゾだ。

「キミは…」
と言ったつもりだが、やはり声は出ない。
Dシェゾは、ボクの横に立つとただボクを眺めていた。
何を見ているんだと思いきや、
スッ…とボクの髪に手を差し入れてきた。
さらりと髪を梳かれ、ひたっと頬に手を当てた。
冷たい手の感触に、一度驚いた。
夢だというのに、その冷たさも感触も生々しかった。
ゆっくりと、頬を撫でられた。
そして、そっとボクの頭に手をそえると、徐々に顔を近づけさせてきた。
「まっ……」
声にならない声を上げ、ボクは動かない身体を必死に動かそうとした。
しかし、やはりそれも無駄な抵抗だった。
どんどんDシェゾとの距離は近づいていく。
ああ…もうどうにでもなれと思っていた時、
不意にDシェゾの唇が動いた。
何を呟いていると思った時にはもう遅く、
彼との距離は唇と唇が触れ合うところだった。




そして――――





「目が醒めたというわけか」
「そう、最高に目覚めの悪い夢だったよ」
お気に入りの東方の扇子を扇ぎながら、Dアルルは言った。
ちなみに服装もいつものTシャツとタンクトップ、スカートというのから、
紅の‘浴衣’という東方の服を纏っている。
「まあ、夢でよかったけど…どうしてキミが出てきて、あんな風だったのか知りたかったね」
「そんなこと言われても、どうにも答えられないがな」
「フフフ…そうだね」
強い日差しを避けるために木陰で涼みながらも、
優雅に扇子を扇ぎながら、Dアルルは青空を見上げる。
夢といえど、あんなに鮮明に覚えられるものだと感心しながら、
ふと、あることに気づく。
「…でも、あの時言葉は…」
「ん?」
「嫌、なんでもないよ。気にしないで」
「おい」
ふわりと立ち上がると、着物の裾もそれに合わせて浮かんだ。
「ねえ、夢の中のキミはボクに何て言っていたと思う?」
「はあ?」
「クスクス…」
踊るようにくるりと回って、妖艶な笑みをDシェゾに向けた。
「当たったらすごいよ。感心しちゃうくらい」
「だから、訳がわからんぞ!!」
そして、まるで舞うようにDアルルはその場を後にした。
かなり意地の悪い問題を出したが、
あくまでも当たるわけがないと考えている。
何故なら…
「…ボクが彼にあんな感情を抱いていたとはね」
夢は自分が強く思っていることを元に見るものらしい。
だから、夢の中の彼があんなことを言ったのかと思うと、
自分にそんな感情があったのかと逆に不思議とも面白くとも思えた。
自分のことすら客観的に見てしまう故に、
何時、どこからあんな感情を持つようになったのか。
とても興味を持った。


「…ちょっと楽しくなってきたよ」


それは自分の変化に気づいた、とある昼下がりの午後―

橘夕月
http://fleudanslecamp.blog43.fc2.com/
2007年06月30日(土) 07時33分44秒 公開
■この作品の著作権は橘夕月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久しぶりの投稿とはいえ、
かなりぐだぐだになってしまいましたorz
絶賛スランプ中な故、多めに見てくれると嬉しいです…

いろいろぼかしすぎて不透明かもしれませんが、
あれこれ妄想(ぇ)してくださるといいかもしれません(マテ)

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No.2  華車 荵  評価:100点  ■2007-07-06 02:19:32  ID:BH4G.dZ0sJM
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 こんばんは、橘さん。お久しぶりです(*^^*)
 スランプって辛いですよね〜。なんて、万年スランプな私が言うことではない気がしますが……。

 魔導小説の執筆も久しぶりでしょうか?
 その割にはキャラの特徴、忘れてなさそうですね(笑)
 あのちょっと突っ張ったように堅っ苦しい喋り方とか、何かすっごい余裕な所とか、あ、Dアルルだ……。なんて思ってしまいました。
 相変わらず和装がお好きなようで。
 Dアルル、着物似合いそうですよね。

 自分の事すら客観的に。
 起こりうる事の全てを受け入れられる橘さんのDアルルは、なんだか強いな〜と思いました。
 出来れば、橘さん的ドッペルズの出会いのシーンが見てみたい気がします。
 執筆、これからも頑張ってくださいm(__)m

 ……不透明というか、明かさない美徳ってのも有りかなぁ〜なんて思っちゃ駄目ですか?(笑)
No.1  藤宮  評価:100点  ■2007-06-30 17:03:42  ID:bBJII2354Zg
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 すみません、冒頭の文章がアルルかDアルルか判んなかったので混乱しちゃいました(笑) 彼女の瞳の色とか、目の動きだけでも見えたかもしれない胸元のシャツの色とか書いててくださると嬉しかったかも。
 不透明と言われれば、そうかもしれません。ちょっとドキっとするようなヒトコトがあったら……なんて思ってしまいます。
総レス数 2  合計 200

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