不 思 議 な 力
  

                   ・・・・・・それは突然やってくるの


 不 思 議 な 力  



いつも通りの横顔も、ふてくされたみたいなあまり可愛いとは言えない(そもそも可愛いの?)不機嫌そうな顔も、
何処を見ているのか分からない少年の面影を帯びた目も。


 「シェゾー」


 「あ?」



 君の名前も、その声も、めんどくさそうに振り返るその顔も、何もかも全部。



 「…大好き!」


 全部全部大好きだと思う日がたまにあるの。
 ああ、この人でよかったなぁって。
 僕の心の中、日だまりでいっぱいになって、
 それが全部全部君を好きだっていう言葉に、気持ちに、想いに変わって。

 体中で伝えたい。こんなに君に会えて嬉しいんだって事を。


 「……っ!!な、何抱き付いてやがんだ、いきなり!!」


 驚いて、僅かに頬をそめた大好きな人の身体を、世界一の宝物みたいにぎゅっと抱き締めた。


 ふわりと漂う彼の匂いに、また胸がいっぱいになるの。
 愛おしいという感情が、また僕の中で色付いていくの。








 「ねぇ、ウィッチ…。そのクスリ何だい?」


 引きつった笑みを浮かべて、あきらかに私の手元の
 紫と黒のだんだら薬から逃げだそうと後ずさりしながら、
 それでも微笑んで聞いてくれる貴方が。


 「新薬のホレ薬ですわっ!ふふ、ルルーさんに売るんですの」


 「へ、へぇ…。そう…。」



 「だけどまだ誰にも試していませんから、ちゃんときくかどうかわからないんですの…」


 わざとらしく溜息をつくと、ヒッ、と息をのむ声が聞えた。

 あえて無視して、出来る限りの微笑みをうかべて笑ってみせた。
 つられて笑っているけれど、ラグナスさんやっぱり微笑みが引きつってますわよ?




 「とゆうわけで。 よ・ろ・し・く★ですわっ!!」



 やっぱり〜っ!!と、顔を覆って座り込んだラグナスさん。
 …この前、虐めすぎたかしら?

 そっと近くによって、しゃがみこんで顔を覗き込んだ。
 ああ、なんででしょう、どうしようもなく微笑みが浮かぶのは。


 「ねぇ、ラグナスさん。 大好きだから、信じてるから、ですのよ?」


 目を上げたあなたは、やっぱりクスリをみて一瞬たじろいだけれど、そのクスリもろとも私を抱き締めた。
 そっと抱き締め返したら、それだけで、貴方は私の永遠の惚れ薬になるんですの。



 ねぇ、気付いてらした??


 微笑みさえ、最高の麻薬。貴方の声だけで、もう何もいらなくなりますの。
 あなたがいるだけで、今日も私の心に日が差すの。








 「ねぇ、サタン様、私は貴方が世界一大好きですわ!愛してますわ!」


 相変わらず目の前で嬉しそうな、
 本当に思わず見惚れてしまうような笑顔を惜しむことなく自分に向けてくれる、
 どこか少女の衣をまっとったままの大切な人。

 テラスに差し込む木漏れ日が、いっそう彼女を綺麗に引き立てて見えるのは、私の思い違いなのだろうか。

 らしくもなく、緩んだ頬も彼女の力なのだろうか。



 「今朝ちょっと出かけてたんですけど、そこで見つけた木苺をもってきたんですの!
  よりすぐって選んだから、きっと美味しいと思いますわ!」


 丁寧に優しい色合いのハンカチを、小さな籠にしいた上に鮮やかな苺の赤色が輝いている。
 その光がまるで、明るい彼女のようだと思った。


 「ルルーが選んだのなら、間違いなかろう! どれ、一つ貰おうかな」


 小さな赤色の粒を口に含むと、甘酸っぱく新鮮な味が口の中いっぱいに広がった。

 久しぶりに食べたということもあるけれど、
 彼女が自分のために一生懸命選んで摘んできてくれたというその事実だけで、
 人が幸せだと呼ぶその感情で胸がいっぱいになった。

 

「美味しい」


 たった一言、思わず口にでたその言葉を聞いて、
 ルルーはまるで朝日のように、木苺のように私をじっと見て笑った。


 護りたいという気持ち。一緒にいたいという気持ち。
 私を狂わせてしまう、その恐怖すら伴う思いが、とても大切だと気付く時。
 必ず笑って私に言う。「愛している」と、その言葉を。









 何処か遠くで鳥の声がする。
 静かに澄んだ空気が、体中に染み渡っていくようで大きく息を吐いた。
 気持ちが軽くなる、そんな気がした。


 膝の上で眠る人は、さっき眠りについてしまって、目覚める気配はない。
 だけど別に起こそうなどとは思わない。
 彼女の回りの空気が、そのまま自分を包み込むようなそんな錯覚。
 心地良い、と、素直に思った。


 「Dアルル…」


 さら、と、髪に指を通しながら、無意識のうち名前を呼んだ。
 髪を撫でられるのが気持ちいいのか、なんだか表情が優しくなったような気がする。


 いつもお前はどれだけの事に苦しんでいるのだろうか、と、時に思うことがある。
 何も出来ない自分が歯痒くて、
 ただ奥歯を噛み締めてお前を抱き締めることしかできなかったこともあった。

 だけど、その度にお前は大丈夫と笑うから。
 君が居るから、大丈夫と微笑んでくれるから。


 柔らかな風が頬をかすめていった。

 ふと視線を空にあげると、雲一つ無い透明にはるかに近い空。
 


 「…今日は、天気が良いみたいだから、」


 そっと、彼女の額に口付けを落して、彼女がそうしてくれるみたいに微笑んで。
 きゅ、と、小さな手が俺の手を握った。
 体温だけじゃなくて、言葉にならないものが広がって。



 お前が目覚めたら、今日はもっと遠くにいこう。
 今日は天気がいいみたいだから。 どうしようもなく、愛しいと…。

 …静かな寝息を立てる大事なこの存在を、起こしてしまわないようそっと抱き直した。



 時折不安になる度、お前の姿を探す俺の目に、
 必ず映るところでお前は俺を待っている。
 お前が俺を捜して振り向くたびに、俺はお前の見える位置にいよう。

 だけど、もっと近くにいたいから。

 振り向かなくとも分かるよう、そっと手を繋いだ晴れた午後。

 






 あなたを喜ばせるためじゃない。
 
 決して、言葉に縛られる訳じゃない。

 束縛の言葉なんていらない。


 ただ、大好きや好き、愛していると言う言葉しか知らないから、
 だから、この溢れる思いを精一杯の気持ちをこめてあなたと一緒にいさせてほしい。



 あたりまえのその中で、あなたと一緒にいられることが、あたりまえだとはいえないから、だから。
 

 どうしようもない、この胸を温める想いを受け止めて、不思議な力。

 あなたがくれた、世界で一等きれいな力。





 あなたがくれた、私の世界に一つ強く光を放つ 不思議な力





2007年03月26日(月) 03時12分43秒 公開
■この作品の著作権は空さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ

本当にお久しぶりです。空でゴザイマス。
なかなかこれないままで、すいませんでした><。
全然姿をみせないままだったんですけれど、
覚えていてくださっていますか??
この場を借りて、少し挨拶させていただきました(^^*

久しぶりに小説を掘り出す時間があったので、
さっそく掘り出して修正を加えて投稿させて頂きました。
いかがでしたでしょうか…?
シェアル熱も、Dズ熱も、ラグウィ熱も、サタルル熱も何一つ冷めておりません!
例え、文章力がおちていようとも!!(笑)

ただ、人が愛しくてたまらない時、そんな時があなたにはありませんか?
そんな気持ちを、こめたショートストーリーです。

読んで下さってありがとうございました☆


また、出てこれる時は出てきますので(すいません;)
私の小説を楽しんでいけたらな…vと思っていますv

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No.1  華車 荵  評価:100点  ■2007-03-27 02:26:53  ID:4.bsxnRyjIY
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 をぉwwクゥの小説だ〜〜〜ww
 この短編集からメールが届いてて(投稿・修正があったら自動的にメールが届く仕組みになってるのですww最近からだけど;)、もしや!?と思って見て見たら……やっぱりクゥの小説だ〜〜〜Vv(喜)
 ほのぼのな感じに本当に癒されましたww
 いつもながら詩的で、すんなりと心に染み渡っていくような感じが心地良いですw
 しかも四カプ勢ぞろいだよ〜〜〜っ!!(*/∇\*)
 すっきりした短編調がまた良くて、サタルルでは珍しくサタン様視点なのが妙にツボにヒットしてしまいました!
 シェアルもラグウィもドッペルズも、みんなみんな可愛くて切なくて……っ!
 もう、空節大爆発ですねww
 気が向いたらまた投下していってくださいd(>_< )
 待ってるよ〜〜〜vv
総レス数 1  合計 100

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