世界の鍵 |
0.プロローグ 始まりは既に過ぎていた 「ん?来客か?今月は千客万来だな」 此処は異次元とも言うべき場所。 普通の存在であるものは到底やって来れないような時限に存在する部屋である。 そんな部屋のドアがノックされたのは今月で2回目である。 因みに1回目のノックでドアを開けた時はゆったりとしたローブに身を包む男が殴りこみにやってきて、それを返り討ちにして元着た道に放り投げてから1週間後の事であった。 「やれやれ、今度は何方かな?」 クスリと笑うと男は椅子から立ち上がりドアを開けた。 しかしそこには誰の姿も見えない。 「ふむ…ここまでは入って来れないか?」 男は一人呟くとドアを閉めようとする。 だが締め切る前にそのドアを掴む手が一つ寸前の所で伸び邪魔をする。 「…………を……の力で…」 荒く息を吐きながら精一杯であろう…その力でドアを開けたその手の持ち主は男に向かって言葉を投げ掛ける。 見た目から推測するとしてどうやら女のようだ。 長い銀髪が目立つ彼女は再び言葉を投げ掛ける。 「…………を貴方の力で……」 呟くような声で投げ掛け続けるがそこで倒れ込んでしまう。 全身が見えた頃には誰が診ても判るほどの酷い怪我である事は確かであった。 「はぁ…仕方ないな…死なれても困るし…話だけでも聞くとしようか」 男はため息を付きながら、胸元にある銀色の鍵を手に取り言葉を紡ぐ。 「癒しの鍵よ…今我が手にて開け」 鍵を何も無い空間に差し込むと、そこから光があふれ出し彼女の傷を癒し始めた。 その間も彼女は言葉を投げ掛ける。 「……魔導世界を…貴方の……力で……助けて…」 1.晩御飯はカレーだよ♪ (君はボクに似てるね) 買い物を済ませ家に帰る途中であったアルルは人込みの中そう聞こえた気がした。 振り返るが混雑している夕暮れ前の街中では誰の科白か判らない。 確かに姿形の見分けが付かない存在も居る。 アルルのドッペルゲンガーがそれである。だが普段人目に付く場所には出ない上今更判り切った事を言う様な性格ではないであろう。 「カー君。今何か聞こえなかった?」 アルルのパートナー的存在で、何時も一緒に居る不思議生命体のカーバンクルに話しかける。 だが問いかけられた本人は『ぐ〜?』と首を捻るだけであまり興味が無いようだ。 暫く考え込んでいたアルルであったが、空耳だろうと言う事で帰宅を急いだ。 帰宅を急いだ理由は二つある。 一つはカーバンクルがお腹を空かせてしまうと手当たり次第食べ物もそうでない物も我慢出来ずに食べてしまうから。今は晩御飯前だから特に注意が必要である。 もう一つは今日はアルルの家に来客の予定があって晩御飯を一緒に食べるからだ。 アルルの家には普段から色々な人やまものが遊びに来るが、今日はウィッチのお祖母さんであるあの有名な魔女ウィッシュがやってくるとあって楽しみにしていたのだ。 家に帰り着くとアルルは早速晩御飯を作り始める。 「はい、カー君には先に林檎をあげるね」 カーバンクルには先に余分に買っておいた林檎を食べさせて置いたのでもう暫くは大人しいであろう… 「ぐ〜!」 と思ったら林檎だけでは足りないらしく隣に置いてあったクッキーも丸呑みしてしまった。 「もうカー君ったら…後はご飯までお預けだよ?」 アルルは念を押すと再び晩御飯の作業に戻る。 そして何時ものように手際よくカレーを作り上げるとウィッシュの到着をカーバンクルと一緒に待った。 だが…約束の時間になっても一向にベルは鳴らない。 少し遅れてるだけかもと思い更に待つが現れる気配は一向に無い。 「何かあったのかなぁ…?」 流石に1時間を過ぎた頃から心配になって落ち着きがなくなって来た頃… ピンポーン とベルの音が鳴った。 「はーい、直ぐ開けます〜」 アルルはさっきまでと変わって明るい声で返事をするとドアを開けた。 「アルルさん!お祖母様来ておりません?」 しかしドアを開けると同時に話し掛けて来たのは、来る予定であったウィッシュではなく見習い魔女のウィッチであった。 アルルは不意を付かれ驚くが、直ぐに整えると取り合えずとばかりにウィッチを中に案内した。 「ウィッシュさん今日来るはずだったんだけどまだ来てないんだ」 アルルは今日晩御飯を一緒に食べる予定だった事をウィッチに話す。 ウィッチもそれを知っていたからアルルの元にやってきたと言ってこれまでの経緯を話し出した。 「お祖母様は…1ヶ月前に出掛けてから姿が見えません。最近は長く離れる時は連絡をくれたのですがそれも…ですのでちょっと心配になってアルルさんの家までやって来てしまいましたわ」 そう言ってため息を一つ。 結局今日は夜も遅いという事でウィッチはアルルの家に泊まり、明日皆にも声を掛けてみようと言うことになった。 ウィッシュは有名人である…『何か手がかりになる様な事も聞けるだろう』 と判断したのだ。 それに伝説級の魔女である。 そうそう下手な事をする筈は無いと言う何処とも無い根拠も後押ししていたのであろう。 かくしてウィッシュ捜索の幕が開けるのであった。 |
燐
2006年12月13日(水) 05時14分49秒 公開 ■この作品の著作権は燐さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 華車 荵 評価:70点 ■2006-12-18 16:28:52 ID:/uEF9hGoIJQ | |||||
初めまして燐さん。取り合えず管理人をさせていただいてます、華車荵です。 以後お見知りおきをw おぉ! ウィッシュ登場の長編ですか! どんなストーリーになるのか、とても楽しみです。 続き、頑張ってくださいね〜(^^)ノシ |
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総レス数 1 合計 70点 |
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