breeze from the sea



 海風のようにさって 海風のように還ってくる


晴れた空の下へ   


   



 アルルが、遠くへ行った日。
 俺の手の中を抜けて、何処か遠くへ。

――永遠なんてイラナイ。

 そういって、微笑んで何処かへ。
 遠く遠く。海風に乗って。



 晴れた空。白く流れる雲。
 あんなに輝いて見えた世界。

 アルルが居なくなって、どこか色あせた世界。


 一体どれだけの時間が経っただろうか。
 もう何年にもなるかも知れない。
もしくは、まだ1ヶ月も経っていないのかも知れない。


 別れた海で、かえりを待った。
 ただ、海を眺めて。

 忘れないでねと、瞳がいってた。
 涙も流さずに、アルルはいってしまった。
 たくさんの涙を目にためて、それでも微笑んで。


 あれから、毎日。  
 海でただ、かえりを待った。
 海風が吹くたびに、痛む心。

 今日も同じ。ただあいつのかえりを待つだけ。
 道ばたに咲いてた白い花を、片手に。



 別れたあの日によく似た空。
 蒼い青い、何処までも何処までも続く。
 
 海に眼を戻すと、同じ笑顔で笑うアルルが見えた。
 手を伸ばして、触れようと思った。
 だけど、やめた。
 後から近づく気配。懐かしい気配。
 



 気のせいだと、頭を抱えた。







「シェゾ」



「…ただいま」





 海風が吹いた。
 白の花びらが、宙に舞い上がる。





 懐かしい声がする。


 


「ねぇ、ただいまってば!!」



 同じようで、少し違う。
 大人びた声。
 なんで、こんなに胸が痛い…?



「還ってきたよ。キミの所に…。」




 後を振り向けば、きっとお前は笑ってるんだろう。
 泣いて、ないよな…?




 同じ、海。同じ、キミの気配。
 全て、何一つ変わらないまま。
  ただ、愛しい君の声がする。







「アルル……?」


 後を振り向いた。
 俺が積んだ白い花によく似た花を抱えて、
 あのときと同じ笑顔で、俺を見る金色の眼。


「……ただいま、シェゾ。」

 ――還ってきたよ。

 
 声に出さずに、口だけ伝えた。
 

「……アルル……っ」

 抱え込んだ、アルルの身体。
 前と同じ。細くて、温かくて。

 白い花は、海風にさらわれた。
 さらさらと、まるでミルクみたいに流れていった。


「ねぇ、聞かせてくれるんでしょ……?」


 別れ間際に、とどめられた言葉。
 やっと、言える。
 やっと、伝えられる。


 ずっと言いたかった、伝えたかった
 言葉 





「…今でも、変わらない。」

「うん。」

「まってるあいだ、ずっと伝えたかった。」

「うん。」

「還ってくると、信じてた。」

「うん。」





「…アルル……」

「…俺は、お前を…愛してる。」


 



 波打ち際。キラキラ輝く波。
 それよりも
 なによりも




 俺は、お前を愛してる。





「…シェゾ。」

 少し頬を赤らめて
 金色の眼に溢れそうなくらい涙を浮かべて
 自分を見るアルル
 優しく微笑んだ眼が、自分を映して。





「ボクも、キミを愛してるよ。」




「ずっと。離れてても。」



 


 優しく流れ続ける海風。
 蒼く澄んだ海。
 光り輝く、君。



「永遠なんて、いらない。」

「だけど。」

「それでも、俺はお前を永遠に愛してるから。」



 金色の眼から、一つ涙がこぼれ落ちた。
 


「ボク…だっ、て、そ…だよ。」


 
 やっとの思いでそう言ったんだろう。
 つっかえながら、微笑んだアルル。
 やっと、今涙が流れた。



「永……遠…なん、って、いらないよ。」




「で、もね…。」

「信じ…ること、でき…る…。」


 止めどなく流れる涙を、
 ぬぐおうともせずに。


「…でも、ね…シェゾ。信じる…のはっ…、永遠じゃなく…て、キミだよ…っ」




「シェゾ…っ…」





 ただ、俺を眼に映して、微笑み続ける。







 アルルを、遠くへ連れ去っていった
海風

 だけどまた、此処へ連れ戻してくれた
海風



 もし、また離れることがあっても
 きっとまた此処で出会う
 永遠なんていらないけど
 永遠を信じることはできる



 そして、大切なことを伝えてくれた
海風








「お帰り、アルル」




 遙か南の国で生まれた海風が、
 二人の回りを包み込んだ。





「ただいま、シェゾ。」


 




 遙か南の国で生まれた海風が
 運んできたのは
 笑顔  微笑み  愛おしいもの達






 




 キラキラ輝く波よりも、
 優しく頬を撫でるこの海風よりも


 そう、何よりも。永遠よりも。






―― わたしは貴方を愛してる。 ――



  ―― 貴方が私を信じる限り ――




  


―― そう きっと 永遠に…… ――
2004年12月30日(木) 14時01分11秒 公開
■この作品の著作権は空さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ

 アトガキ。(イイワケ。/コラ)

 これを読んでくれているかた、本当に本当にアリガトウゴザイマス。
 こんな、拙い言葉でしか伝えられませんでしたが、少しでも何か伝わっていたなら光栄です。
 
 「永遠なんていらない。」の、続編のつもりで書きました。
 ツバメサマ、リクエストにお答えできたでしょうか?アルルの旅で、ラグナロクを思ってくれた方々。アリガトウゴザイマスッスー。
 ラストに永遠を持ってきたのですが、普通みんなが使うような「楽しい時間が永遠に」とは少し意味の違うつもりで書いたッス〜。
 わかりにくい説明でスイマセン!!;;
 
 空は、じつはラグナロク、あまり知らないのですが(ォィ)それでも、寄せ集めた知識があったからこそ、この「永遠なんて〜」や、「 breeze〜… 」ができたような気もするッス。(ぇ
 何か考えて頂けるものや、色々思うところがあったとしたら、嬉しいのですが…。
 一応、軽いつもりでかいたのですが、結構空の中では考えた部分もあったんッス。(何ぉ
 
でわでわw本当にアリガトウッス!スペシャルサンクス!!
 これからも、何かリクエストあったら気軽にいってやってくださいw
 よろこんでお書きしますwでわでわ〜!!どうもありがとうございましたッス〜!  

この作品の感想をお寄せください。
No.4  空  評価:0点  ■2005-01-07 12:05:14  ID:ldB5jEfqq82
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なぁっ!?なんか、点数そのままにしちゃったよ〜!!;;
↓ゼロですゼロ!!(滝汗/爆
No.3  空  評価:50点  ■2005-01-07 12:03:52  ID:ldB5jEfqq82
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わわっ!?もう考えまで、言ってくれるんっすか!?
あわわ・・・本当に嬉しいです!!ありがとうっす〜!!(涙
要望通りだったッスか!?あぁー、喜んで頂けて嬉しいっす♪
やぱし、続けないとね♪(ェ何
ラグナロク、もっとちゃんと読んでみたいっすー。でも、ホンもなんにもない!(涙
ああぁーー;;(何
おぉ!?ツバメ様も考えてるんですか〜!!読んでみたいっす♪
リクエストしてくれるんですか!?ありがとうっす〜!!
了解〜!ちょっと、考えついたのがただ離れるだけ…じゃない物なのです。
死ぬわけではないのですが…それでも良かったらかきますです〜♪
書き直し言ってくれればするので、とりあえず今思いついたものを書かせてくださいっす〜!ちょっと、シリアス…あぁ、泣ける話しかけるんだろうか…(ォィ
とりあえず頑張ってみます!!わざわざ点数入れ直したりしてくれてありがとうっす〜!
No.2  ツバメ  評価:100点  ■2005-01-03 00:53:32  ID:0DsK8s8sMC6
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感想の点数間違えました!!
永遠の別れのテーマなのを希望しましたが、死にネタじゃなくて二人とも生きていて、別れるのを希望。
「さよなら」って言い合うのがいいです。
No.1  ツバメ  評価:70点  ■2005-01-03 00:32:47  ID:0DsK8s8sMC6
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おおおおおおお!!
まさか要望どおりに書いてくれるとは!!
うれしいです!!!
前のと同じように永遠がテーマですね。続き物で、自分がリクエストしたのでどうやって二人が再会するか、とても興味を持って読みました。
なるほど、空さんは永遠なんてないが、人の思いは(この場合アルルとシェゾの恋愛感情)は変わらない。と考えているんですか?
自分は、永遠なんて存在しない。しかし、人は永遠を求めている。変わらない思いや時間。存在しないがゆえに求めていると・・・
ラグナロクか・・・魔導物語にとって永遠の謎ですね。リリスが経験したラグナロクにしろ、アルルが経験するラグナロクにしろ・・・
まあ、どんな大戦だったかは人それぞれに考えているでしょう。自分も魔導物語のラグナロクをテーマにした小説を考えていますし・・・
リクエストですか・・・
永遠の別れがテーマなのを希望。泣ける物語がほしいですね。
つらいかも・・・
総レス数 4  合計 220

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