永遠なんていらない

ボクの目に映る。


キラキラ光るのは海で、決してキミのものじゃない
光り輝くのはキミの髪で、決してこの海なんかじゃない




 
「シェゾ」

 叫んだ名前の持ち主は、一呼吸おいてからボクに答えた。
  キラキラ光る、波打ち際で。

「…なんだよ?」

 ぶっきらぼうで、無愛想で変態のキミは、波打ち際でただ海を見てる。
  
 急に海が見たくなって、ボクは君を呼びに行った。
 半分は無理矢理、キミを連れてきて。ただなんっにもしないで、海を見る。

「…オイ。なんだってきいてんだよ。」


 鬱陶しそうにこっちへ来るキミには、わざと目を合わせないようにする。
 何でか分かんないけど、なんとなく……ただそれだけで、ボクはキミを見ない。

 そう。ここに来てからボクはキミを見てない。
 

「……アルル、聞いてんのかっ!?」

「うるさいなぁ……。」

 
 次第に怒り口調になるキミに、たださらり、といってのける。

 ……ボクは何がしたいんだろう。なんで海が見たかったんだろ……。
     なんで、キミと海に来たかったんだろう……。

「…てんめぇ……いい加減にしろよっ!!忙しいのに、付いてきてやったんだ。
 名前よんどいて、無視すんじゃねぇよっ!」

「…シェゾ。」

「……っなんだよ?」

「じゅげむ。」


「…は?……!!!!」


 …ボクは本当に何がしたいんだろーね。


「アルル、お前なぁ〜〜〜っ!!」

 平然と、怒鳴ってくるキミの声に思わず笑みがこぼれた。


 相変わらず丈夫なんだね、キミって。
 わずか十秒弱。吹っ飛んだはずなのに、帰ってきた。
   そう……


「帰ってきてくれたんだね。」

 声に出したら、何故か急に寂しくなって。 

 海に目を向けたまま、視線は合わせないまんま。
 キラキラ輝く水面は、来たときと変わらないまま。

「…あ…?何いってんだ?」

 ただキミの声だけ聞こえるように、キミのいう形を忘れて。
 居なくなっても、大丈夫だと言えるように。強がりでもいい、泣かないために。

「帰ってきてくれるんだね、きっと。」

 あぁ、そうか。
 ボクは、覚悟を決めたかったんだ。

「アルル……?」

 ボクの名を呼ぶこの声の持ち主が、もう二度と見えなくなっても、
 それでも平気なように。泣かないために。

「いつだってそうだ。帰ってくるんだ。」
 
きっとボクは。
 大丈夫だって思いたかったんだ。
 今だけでも良いから、安心が欲しかったんだ。

「お前、何言ってるんだよ……ヘンだぞ?」


「シェゾ」

 くるっと振り向いた先には、キラキラ光る水面を背中に受けて、
 真っ直ぐこっちを向いて立つ、キミの姿があった。

「シェゾ……ボク、もうすぐ行かなきゃダメなんだ。」

 真っ直ぐ見つめる。キミという存在を。

 何か言いたそうな、複雑な顔をしている、
 ただボクを見つめるあの蒼い瞳を忘れないように。

「……永遠なんて、手に入らないんだよ。」

 視界が、波だった。 波打ち際のキミが、なんだかぼやけて見えた。
 ボクは、行かなきゃならない。いつか、もうすぐ行かなきゃならない。


 こんな気持ちの時、一瞬だけ迷う心があって。「永遠」を迷うことがあって。
  
 誰もが皆、永遠を望むとは限らない。
 永遠を望む人は沢山いるけど、だけど…やっぱり、ボクは……

 
「永遠なんて、いらない。」

 永遠なんていらない。永遠なんていらない。

「今が、あればそれで良い。」

 キミと居る今があれば、それだけで良い。

「シェゾ。」

 ボクは、永遠なんていらない。


こっちを見る蒼い瞳が、そっと微笑んだをみた。
キラキラ光る水面が一層光り輝いた。海が、一緒に微笑った。

「行ってこい。オレは、此処にいるから。

 お前が、帰ってこい…。」

 優しい言葉だった。 今までもらった沢山の言葉のどれよりも……。

 キミは理解してくれるんだ。
 ボクのこんな足りない言葉でも、すぐに分かってくれるんだ。
 ボクが旅立つ事、ただこれだけで分かってくれるんだ。
そして……そして…――

「此処にいるから。」

「ずっとずっと、ここに居てやるから。
お前が帰ってこい、たまには、お前が帰ってこい。」

 ――そして、また新しい言葉をくれるんだ。いつも、いつも……


 眩しくて、立ってられなくなった。嬉しくて、何も見えなかった。
 ふわりと包み込んだ風が、暖かくて、悲しくて、愛しくて。

 優しい海が、優しい言葉が。
 優しいキミに、いつか逢えなくなっても。
 もうすぐ逢えなくなっても。

 それでも、やっぱり永遠はいらない。


「アルル、オレはお前を……愛し…。」

 抱き締められたそのうでの持ち主の、言葉を紡ぐ唇に
 そっと、人差し指をあてて。ちょっとだけ、笑って見せて

「ボクが……帰ってきたら…ね?」

 必ず帰ってくるから、その時にこの海で。
  

もう一度…。



 ちっちゃな約束を、口に出さずに伝えてみる。
 クスリと、笑ったキミにもう一度、逢いたいから。
 だから、僕は帰ってくる。

「…わかった…。」

 微笑みを崩さずに、ボクの手を取って。
 キュ、と握りしめる君の手が、嬉しくて嬉しくて。


「永遠なんていらない。」
「あぁ…」
「キミといれる今があれば、それで良い。」
「あぁ……。」


『永遠なんて、いらない。』









  キミが、ボクを覚えていてくれるなら。ボクは、また還ってくるよ。キミの所へ
 あの言葉の続き。聞くために還ってくるよ。  
シェゾ。

−ボクも、…………−

 続き言うために還ってくるよ。
忘れないでね。ボクのこと。 忘れないから。キミのこと。


泣かないよ。
また逢えるもの。


シェゾ
ボクも、キミのこと……

2004年12月23日(木) 13時49分01秒 公開
■この作品の著作権は空さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
さぁて。別れネタ。
あるるんはこれから長い旅に出るという設定で書きました。(ォィ
しんみりしすぎない別れかた。空のなかのシェアル象です。(ぇ
にしても…最近どうも調子が悪い……;
言葉って難しいのね……(何
よんでくれているかた〜!!どうもありがとうッス〜!!感謝感謝ー!!
もしもなんかリクエストあったら、言って下さいな♪プレゼントしまっす〜♪(イラン
でわwこんなはちゃめちゃな空をこれからも宜しくッス〜!

この作品の感想をお寄せください。
No.4  空  評価:0点  ■2004-12-29 06:09:59  ID:RnwPq7N.zV.
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あぁ!!こんなにもコメントがっ!!(感涙
アリガトウゴザイマスッス〜!!!

 ツバメサマw
あはは;;そうでしたか〜;;空のなかのアルルは、結構想い二を持った少女なのです。いろいろあるんでしょう…きっと。(コラ
ツバメサマの考えるアルル…wそれもなんだか、良い感じッスね〜!
そうなのです。空のなかでも永遠はありえないんッスよ。
永遠がないから、今が嬉しい。幸せ。だとそう思ってるんッスー。
リクエスト、アリガトウゴザイマス!!!
遅くなりましたが、書かせて頂きました。どうぞ、よろしければ目をお通し下さいませw
本当にアリガトウございましたッス〜!

 リュウサマw
あぁ!!やっぱりそうッスか〜!
空も何となく、そのイメージはあったんッスよ!!(輝
でも、ラグナロク詳しいことは分からないので、なんだか微妙な感じッスよね〜?;;
あぁ、確かに空もそう思う時はあるッスよwでも、「今」だけだからこそ、「楽しい」のではないかと思ったりもw
あ、否定するきは全くありません!!実際、楽しい時間に永遠を望むのは、空も一緒ッスからw(何ぉ
あはは〜w空もそんな人に出会いた……(殴
ホントーにサンクスッス〜☆

 シノw
良いですか!?やったぁ〜っww(笑
ふふ、少し白雨の中にラグナロクありましたからw(よく知らないのに。/ォィ
いえいえ〜、それはきっと誰だって一度は望むことだと思うっす〜。
空もしょっちゅう望んでるッスからw(ォィ
そうなのです。変化無しだと、楽しいも無くなってしまう。それが伝わったのなら本当に嬉しいっす!
あぁ、そこまで深読みして頂けて、本当に嬉しいっすよー!
訳分からなく無いです!!空が最初に伝えたかったことを、わかりやすく纏めて頂いていて…。
素敵な感想をアリガトウございました!!!

本当に、感想アリガトウッスー!!
どうかどうか、これからもよろしくッス〜(ぺこぺこ
No.3  華車 荵  評価:100点  ■2004-12-26 03:07:07  ID:KBkoNExVYf.
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旅に出るあるるんとソレを見送るせぞさん…良いですねvv
私もリュウさんと同じようにラグナロクを想像してましたv(笑
私も「永遠などありえない」と思いながらも永遠を望んでしまう輩ですな(苦笑
でも、「永遠」=「変化の無い」という事にも繋がるのでソレもまた微妙かなとか思ったり…(ぇ
やはり人は出逢いと別れを繰り返すべきなのかもしれません。
それが有るからこそ、「今」を大切にするのでしょう。
なにやら訳のわからない感想でごめんなさい(汗
No.2  リュウ  評価:100点  ■2004-12-23 20:43:29  ID:tjAemY01kIY
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なぜかラグナロクを想像してしまいました。
永遠、ですか。俺は『この楽しい時間が永遠だったらなー』と思うときがしばしば。
俺とは少し考え方が違いますね。
いや、にしてもシェゾとアルルの微妙な位置関係(?)がいいです。
心でつながってるんですねーこの2人は。
俺もそんな人に出会いt(強制終了
No.1  ツバメ  評価:70点  ■2004-12-23 15:02:15  ID:lkpXPMopOFQ
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アルルが旅に行くか・・・少し想像できない。
魔導学校で、勉強に大忙し、追試に大忙しっという感じしかしないんですが。
永遠なんてありえない。でも今がほしいか・・・
少しうらやましいな・・・
リクエストがあったらですか?じゃ、この続きみたいなもので、アルルが帰って、シェゾと再会して、「ただいま、シェゾ」「お帰り、アルル」とかいうのを希望します。
総レス数 4  合計 270

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