音人 |
「ここなら、わかんないだろうな……?」 澄んだ森の奥深く。Dシェゾはそっとここまで来た。 彼女…Dアルルにバレないように。 「…バレたら……ちょっとなぁ…。」 マントの中から、黒い包みを取り出す。 大事に持つそれは、内緒のもの。 ………… つい先日のこと。 いつものように、Dアルルの家で、Dシェゾはギターを弾いていた。 「…上手くなったねぇ、君は。」 優しげに微笑んでくれる彼女。 いつか離れるかもしれない。そんなことばかり言っていたら、ある日急にギターを教えてあげると言われた。 別にいいといったのに、どうしてもというから教わりだした。 「お前が、うまく教えてくれるからだろ…?」 「ふふ、そうかなぁ…?」 少し照れたように笑って、自分もギターに手を伸ばす。 自分とは大違い。本当に絹のように流れ出すメロディー。 何故、自分にもギターを教えようと思ったのかと聞いたら、「繋がっていられるから。」と、それだけ。 「ねぇ、僕にもフルート教えてよ…?」 「………………。」 返事はできなかった。 実際自分にも、音楽はあった。Dシェゾもフルートが吹けたから。 知らないうちに、音楽に手を伸ばし始めて吹いたのがフルートだった。 だけど。 人に聞かせたり、教えたりするのなんか到底恥ずかしくてできなかった。 だから、あえて返事をしなかった。Dアルルもそれ以上何も言ってこなく、話はそこで終わった。 ……………… 森を抜ける風が、自分の頬をかすめていった。 そっと黒い包みに手をかけた。開いていくと、銀に輝くフルート。 静かに光を宿すそれは、久しぶりに外の空気に触れた。 「…音……か。」 「繋がっていられるから。」彼女の言った一言が、頭をかすめた。 何のことだか分からなかった。 自分も音を持っていて、それが彼女とどう繋がるのか…? 考えていても始まらないな…。 そう思って、フルートを手にとった。 すぅ…… 大きく息を吸って、奏で始めるメロディー。 悲しげに響く音 それに揺れる空気 森の中 音が響く 音が奏でられる 目を閉じれば、ギターを弾く彼女の姿が見えた。 彼女の弾くギターの音まで、細かな弦をはじく音さえも聞こえた。 そっと寂しさが通り過ぎた。 「…ほら、繋がってるでしょ…?」 静かに、優しげに広がる声。 「なん……で……。」 目を開けた世界に、彼女が座っていた。 腕に抱えられたギター。静かに微笑んだDアルル。 「……何処にいても、何をしてても、どんな状態でも……」 ギターを、そっと地におろしゆっくりと彼女はDシェゾに近づいた。 地を踏みしめるその度に、草が音を立てた。 「…僕は君を見つけられるよ……音が僕たちを繋いでるから…。 必ず、側へ来れるよ…。君の音が、僕を呼んでくれるから…」 そっと抱きしめられた。 そのぬくもりに、安心した。何故か分からないけど、熱いものがこみ上げた。 頬を何かが伝っていくのが分かった。 「僕も、君ももう一人なんかじゃないよ……音が、繋いでるもの。僕たちを…。」 抱きしめるその腕を放さずに、Dアルルは言ってくれた。 いつでも、言ってくれた。自分が繰り返した言葉の返事。 「…ずっと、一緒だよ……ね…?」 微笑んでくれた彼女の目にも、うっすらと涙がにじんでいた。 それをみて、自分の頬に流れているものが涙なんだと分かった。 「……あぁ、そうだな…。」 彼女の声が、自分を抱きしめてくれた。 いつでも、そうだったのに、今気づけた。 初めて、救われた。 『孤独』 から。 「ねぇ、Dシェゾ。例え離れても、僕たち繋がってるんだよ。」 同じ場所に腰を下ろして、しばらくただ森を見ていた。 少したってから、彼女は優しげに微笑みながら口を開いた。 変わらず彼女の口から発せられる音。ふわりと、広がる音。 「音はね、人を繋ぐんだ。例え、どれだけ離れてても…。」 「だから、僕は音を奏でてるんだよ。」 高い高い空を見上げて、笑った。 どこか寂しそうに。そして、幸せそうに。 じゃぁ、自分はなんの為に音を奏でてるんだろう。 ふと、Dシェゾの頭の中をよぎった不安。 「誰かと繋がってたかったんだ。」 急に声がかけられて、彼女の方を見ると、彼女も自分を見て微笑んでいた。 「ひとりぼっちは寂しいでしょ……?」 あぁ、そうか。 誰かを探してたんだ。ずっと。 だけど、もう見つけられた。かけがえのない人を。 「だが、もう一人じゃない…。」 Dアルルは驚いたように、Dシェゾを見た。 「もう、一人じゃない…。俺には、お前が居るんだから。」 そういったら、微かに頷いて、本当に幸せそうに微笑んだ。 「ねぇ、Dシェゾ?」 そっとギターを構え直して同じように微笑んで言った。 「フルート、聞かせて…?一緒に、弾こうよ。ねっ…?」 どこか楽しそうに、ギターを弾き始めた。 「あぁ…そうだな…。 もうどうせ、きかれちまったしな…。」 隠していたかったのに、今となったらバレたことが何故か嬉しかった。 自分も、彼女に聞かせたかったんだから。 「君が僕から逃げられるわけないでしょ…?」 クスクスと笑いながら、Dアルルはそう言った。 いつか、離れるときが来たとしても、もう孤独なんか感じないと、そう思えた。 「……そうだな…。…だが、それはお前も一緒だろう…?」 「きっとね……。」 そういった二人。微笑んだ顔は、何よりも光って見えた。 やがて 静かな森に、流れ始めたメロディ 重なり合うその音は 森中に響き渡った。 それぞれの音が もうひとつの音を探し求める どれだけ離れていたって きっと見つける ずっとそこにいるから 孤独な日は音を奏でて きっと受け止めてくれる人が いつか必ず現れるから…… 『やっと、会えたね………』 …FIN… |
空
2004年12月18日(土) 22時03分57秒 公開 ■この作品の著作権は空さんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
No.2 空 評価:0点 ■2004-12-29 14:48:03 ID:RnwPq7N.zV. | |||||
そうそう〜wなりちゃネタww ふふふ〜、うちのDズは音人さんなのですw(何ぇ り、理想ッスか!?はわわわわ・・・!!(ォィ マジですか!?うわ〜、それは良かったッス〜♪ いえいえ、こちらこそ読んで頂けて嬉しいっすww |
|||||
No.1 華車 荵 評価:100点 ■2004-12-19 04:19:36 ID:KBkoNExVYf. | |||||
おぉ!?何時ぞやのなりチャネタ!?(微違 フルート吹きなDシェさん素敵です〜vv Dアさんの言葉一つ一つに説得力があって凄いと思ったw なんというか…理想ですwこの小説w 私が考えるDシェDアルにぴったり合ってるv Dシェさんを包み込むDアさんが素敵ですvv 素敵な物語を読ませて頂きました☆ありがとうvv(笑 |
|||||
総レス数 2 合計 100点 |
E-Mail(任意) | |
メッセージ | |
評価(必須) | 削除用パス(必須) Cookie |