ちょっとした物語6 |
〜第五章〜 知られざる真実 アルル・ナジャ、彼女はサタンの塔に向かっていった。 「カー君、今日こそシェゾ見つかるよね」 アルルの肩に乗っている魔法生物カーバンクルに問いかけた。するとカー君はこくりとうなずいた。 「おい、お前」 後ろから聞きなれた声が聞こえた。 「はいぃぃぃ?って、ししし、し、シェゾ!」 シェゾはいぶかしげな顔をした。 「お前、なぜ俺の名を知っている・・・」 「へ?何言ってるの、いまさら。それより傷!大丈夫なの?」 「何のことだ!いったい」 「へっ?」 アルルは何がなんだか分からないという顔で答えた。シェゾは相変わらずいぶかしげな顔をしていた。アルルはシェゾの解答を気にしないことにし、シェゾの手を握った。 「ねぇ、サタンの塔に行こう。皆シェゾを探してくれてたんだよ」 「何分けわからんことを言っているんだ、お前」 シェゾは真顔で訊いてきた。頭には?が浮かんでいる。アルルはいぶかしげに思った。 「ねぇ、ばかばかしい質問かもしれないけど・・・僕の名前分かるよね・・」 「お前あほか・・・」 その言葉を聴いた瞬間安心した。だが次の言葉を聴いた瞬間悲しみが一気に押し寄せてきた。 「初対面の名前なんか分かるはずないだろ」 「はは、そうだよね・・・・」 アルルの目には涙が浮かんでいた。だがアルルは涙が流れないように必死にこらえた。そしてシェゾに気づかれないように涙を服でふき取り気おとりなおしていった。 「何でもいいからサタンの塔に行くよ、シェゾ」 「却下、人に用事がある」 「誰に?」 「お前が知る必要はない」 シェゾは愛想なく答える。だがアルルも負けじと質問する。 「教えてってば!」 「うるさい!俺にかまうな」 「いいじゃん別に」 そして根負けしたのはシェゾだった。だがそれは交換条件だった。 「分かった、教える。その代わり、お前の名前も教えろ」 「いいよ、僕の名前はアルル・ナジャ。肩に乗っているのはカー君」 「ぐー」 声は明るかったが心の中では悲しみがこみ上げてきた。だが、シェゾは知るはずがなく、しゃべり始める。 「特徴は、緑色の髪で長髪。瞳は赤。角が生えており魔族だ。そして魔王だそうだ」 「・・・・・その人知ってるよ、僕」 とアルルはいやそうな顔をしながらいった、肩に乗っている魔法生物カー君は、もっといやそうな顔をしていた。 (どんな魔王だ・・・) とシェゾは思った。 「どこにいるか分かるか?」 「うん、サタンの塔にいるよ」 始めからシェゾはサタンの塔に行く運命だったのだ。そしてシェゾとアルルはサタンの塔に向かった。 「やっほー。サタン」 「おお、アルルか」 サタンは倉庫にいた。そしていかにも昔の書物と思えるものを持っていた。 「何それ?」 アルルはサタンが持っていた物に興味を示し尋ねた。 「ああ、これは闇の魔導師に関してのものだ。何か書いてあるかも知れんと思ってな。アルルこそなんか用か?」 「あっ、そうそう。あのね、シェ・・・・」 「おいアルル、何でこいつら全員俺の名前を知っているんだ?」 「あ」 シェゾは、訳分からんという顔で尋ねた。サタンは、目を見開いて驚きのあまりに口をパクパクさしている。シェゾはサタンに気付いた。 「お前か、サタ・・・」 「シェゾ!!」 シェゾの科白をサタンの声がかき消した。 「アルル、なぜシェゾが・・・」 「それがね、たまたま合ったの。もう声かけられたた時にはドッキドキしちゃった、ハハハ」 「お前か、サタンと言うやつは」 今まで無視され続けられたシェゾ割り込んできた。 サタンはシェゾの言葉を聞いて「はぁ?」と言う表情をした。アルルはサタンに気付いた。そして独り言のようにつぶやいた。 「シェゾはね、記憶喪失なんだ・・・・」 それだけ言うと無理やり微笑んだ。 「まぁ、それはおいときシェゾが戻ったということを盛大に知らせようではないか!」 サタンの言葉にアルルはうなずいた。シェゾはいやそうな顔をしたが有無の言わせぬ間にアルルが引きずっていった。 シェゾ、アルル、サタン、ルルーの四人は町に出た。町でシェゾを向い入れたのはラグナスとウイッチ。二人は驚きの表情やら喜びの表情などごちゃ混ぜの表情をした。 「シェゾ傷は大丈夫なのか?」 「そうですわ。こーんな大きい傷を負わされたそうじゃないですか!」 ウイッチは手を広げ大きさを表す。当の本人、シェゾは頭に手を当て、うつむいていた。 (何がなんだか分からん・・・・俺は・・・・俺は何だ?なぜここにいるんだ?・・・・・・・・) 「どうしたの、シェゾ?気分悪いの?」 うつむいたままのシェゾにアルルが声をかけた。 (・・・ウルサイ・・キエロ・・・・・・ダレモオレニカマウナ・・・・・ヤメロ・・ヤメロ!!) シェゾは何かをつぶやいた。だがそれは誰にも聞き取れなかった。シェゾはどんどん声のボリュームを大きくしながらゆっくりとつぶやいた。 「・・・・・・・・・さ・・・・い・・・」 かすかに聞こえた。シェゾの声がその場にいた人を黙らせた。シェゾは急な沈黙にもかかわらず淡々としゃべり続ける・・・・何かにとらわれたように・・・・・ 「・・るさい・・・・五月蝿い・・・俺にかまうな!!ヤメロ!!」 悲鳴のように叫んだ。 「シェゾ!?」 アルルが駆け寄りシェゾに触ろうとしたときシェゾはアルルの手をおもいっきし振り払った。その反動でしりもちをついた。ルルーが急いでアルルに駆け寄りシェゾに言葉を投げつけた。 「あんた!なにするのよ」 「うるさい!俺にかまうな・・・俺は・・・俺は」 それだけ言うとシェゾは頭を両手で抱えながらしゃがんだ。 「今日は少し休もう、そうすればお前も少しは落ち着くだろう」 カチャ・・・・ 「「「!」」」 その場にいた全員が凍りついた。サタンは意外な行動をするシェゾを見た。シェゾはさっきまでの混乱したシェゾはなく、無表情な顔になって相変わらず闇の剣をサタンの首元に突きつけていた。 「なんのつもりだ」 「欲しい物がある」 「何が望みだ」 「・・・・時空の鍵・・」 「それで何をする」 「お前には関係ない」 「もし断ったら?」 「・・・・・そうだな・・・・」 シェゾは口元に冷酷な笑みを浮かべた。 「ここにいるやつ全員殺すっていうのはどうだ?」 (今のあいつならやる・・・・くっ、今は渡しとくしか方法はないか・・・時空の鍵・・・・悪用される可能性が高いと思うから自分の手もとに置いときたかったが・・・) 「・・・・・・分かった。行くぞ・・・」 シェゾは微笑みサタンとともに消えた。 「なんだったの・・・」 ルルーはつぶやいた。ここにいた全員がまだ何があったのか理解しがたいのだ。 「そんなことはどうでもいい!まずシェゾとサタンが行きそうなところを片端から探そう」 誰もアルルの意見に逆らわず、全員がまずサタンの塔に向かった。 「ほぉう、これが時空の鍵・・・」 シェゾは自分の手元にある鍵を見た。その鍵はきれいな細工が施され、とても強い魔導力が封じられていた。 「俺の用は済んだ。じゃぁな」 シェゾが移転の呪文を唱えた。だが発動しない。シェゾは何回かやったが結果は同じく不発。シェゾは鬼のような顔でサタンを睨んだ。 「そう簡単に私がお前を逃がすと思うか?」 「ちっ、甘く見すぎていたようだ・・・・・・だが」 そこで言葉が途切れた。急にドアが思いっきり開いた。開いたドアの前にはアルルたちがいた。 「アルル・・どうしてここに・・・・」 「まずサタンの塔に行ってね、急いで執事さんに聞いたの。そしたら塔の最上階にいる て言ったの、だから」 アルルはいっきにしゃべった。シェゾはその光景を見、 「お仲間登場か・・・・・もう少し早かったらよかったなサタン、タイムオーバーだ」 「どうゆうこ・・・」 サタンが聞き返そうと話していた隙にシェゾの後ろに時空のひずみができていた。そのひずみはものすごいスピードで大きくなりそこから一人漆黒の翼が生えた青年が現れた。 「遅れてごめん、シェゾ」 「「レイズ!!」」 レイズが誤ると同時にラグナスとアルルが声を合わせて叫んだ。 「遅い、それより早く背中の封印解け!」 「はいはい」 二人は何がなんだか分からない会話を始めた。そんな中ラグナスはレイズに言った。 「俺の光の剣を返せ!」 「ん・・・・あぁ、いいよ」 レイズはラグナスに剣をすんなり返した。それと同時にシェゾの背中の封印が解けた。それと同時にシェゾは漆黒の羽に包まれた。羽の中から現れたシェゾには漆黒の美しい翼が生えていた。 「・・・・堕天使の羽・・・・・」 ウイッチは抜け落ちた漆黒の羽根をつかみ震える声で独り言のようにつぶやいた。 「えっ」 アルルが聞き返した。だが、ウイッチはもう答えなかった。誰もがシェゾの漆黒の翼に見惚れ、そして恐怖を抱いていた。堕天使・・・・天使と異なる存在・・・・・ 「シェゾ、何?その羽・・・」 アルルは聞いた。シェゾが口を開こうとしたがレイズのほうがいち早く答えた。 「堕天使の翼だよ。そんでもって僕らはあるべき場所へ帰るんだ、この鍵を使い」 「ま、そうゆうことだ、レイズが言うには俺も堕天使みたいな・・」 「それは違う!シェゾは人間だよ・・・・闇の魔導師なんだよ・・・」 シェゾの言葉をさえぎりアルルが叫んだ。 「何で・・・何で・・レイズのことばかり信じるの・・・」 「・・・・・・」 アルルの問にシェゾは迷った。 (俺は・・・俺は・・・・・そうだ・・あいつしか頭の中に残ってなかった、だからあいつを信じた・・・) 「・・・・・あいつのことしか思い出せなかったから、だから・・・だから・・・・くっ」 シェゾ頭に鋭い頭痛が走った。レイズは駆け寄った。 「少し調整が必要だね」 レイズはシェゾの頭に手を置き短い呪文を唱えた。呪文が終わるとシェゾは何か吹っ切れたように立ち上がった。 「君は、また僕の邪魔をするの?でも無駄だよ・・・・シェゾは君たちのこと覚えてないんだもん・・・後、僕たちはお空の上の上にいきまーす。じゃあね、フラッシュ」 まばゆい光がアルルたちを襲った。 「シェ・・ゾ?」 だがそこにはもうシェゾはいなかった。 残っているのは漆黒の羽根だけ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・アルルたちはなすべきことなく、ただ見とくしか方法はなかった・・・・・・ |
青桜緑空
2004年10月30日(土) 09時20分06秒 公開 ■この作品の著作権は青桜緑空さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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